2024.4.5日記
2020年の「おちょやん」以降、せっせと朝ドラを見続けているのだが、この4月から始まった「虎に翼」かなり面白い。
どの朝ドラも一週目は毎回気合いが入ってることが多いが、虎と翼は特に完成度が高かったと思う。物語は日本初の女性弁護士・三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんがモデルで、三淵さんはのちに裁判官に転じ、女性初の裁判所所長までになる人である。
フェミニズムのテーマがはっきりと打ち出されており、描きたいことが明確。一つ一つのカットが構図も色彩もキマっている。よかったシーンはたくさんあるが、寅子が親友の結婚式に出るシーンは印象的だった。寅子は酔った父親に無茶振りされ、結婚式で歌わされる。「モン・パパ」は妻が強くて夫が弱いという曲だが、女は座ったまま苦笑い、男たちは酔っ払って踊る。それに対して怒りの増した寅子の熱唱がさらに男たちを狂乱させていき、なかなかの地獄絵図になっていく様はグロテスクでよかった。他にも寅子の担任の女性教師の雰囲気や、エキストラのすれ違う女性たちもいつも俯いて暗い表情をしていたりと、抑圧された女性の表現が随所にあり、こだわりが感じられる。
第一週は、寅子の法学部進学に反対し、家父長主義的に見えた母親が、娘の志を否定する男性権威に争い、娘の味方になる。法曹界への第一歩を踏み始めた寅子だが、ナレーションでは「地獄への切符を手に入れた」ということである。敬愛するDr.ハインリッヒのトークライブで「かつてのフェミニストたちが歩んだ道のりは“上がりのない双六”」と言っていたことを思い出した。勝ち目のない戦に挑んでくれた先人たちの上に、今の私たちは立っている。寅子の道行はさながら地獄めぐりだと思われるが、その先の私たちにつながる希望の道でもあるだろう。来週からも楽しみである。
ちなみに、三淵さんと同じ明治大学専門部女子部法科に通っていた昭和10年生まれの方と最近お知り合いになったのだが、この前NHKで三淵さんの70代くらい?の映像を見ると、話し方がそっくりであった。当時のスーパーインテリ女性の喋り方はかくなるものや、と思った。