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もっと調べる技術

 小林昌樹さんから新刊『もっと調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2』(皓星社)をいただいた。

 2022年に出版された前著『調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』は8刷3万部のベストセラーになったそうである(うらやましい)。小林さんのことは、荒木優太さんの『在野研究ビギナーズ』(2019年)で、国会図書館の内実や使い方を語る人として知った。その後、『調べる技術』が発売され、私ももちろん買った。同書では、とくに第6講「明治期からの新聞記事を「合理的に」ざっと調べる方法」が良かった。朝日新聞クロスサーチ、ヨミダス歴史館、毎索という全国紙検索システムの特徴を細かに説明してくれていて、『地方史のつむぎ方』を書くにも参考になった。
ところが、その後の2年間で、国会図書館デジタルコレクションが劇的に使いやすくなった。公開される書籍が増加し、全文検索機能も付いた。今回の『もっと調べる技術』は、「帝国図書館が自宅の隣に建ったんですよ」と表現する。小林さんの自宅の隣にも、私の自宅の隣にも、あなたの自宅の隣にも建ったのである。私もこの図書館を大いに利用させてもらっている。だが、どうしてこんな図書館が建ったのか。デジタル化の流れだからかな、程度に考えていたが、小林さんはその理由を本書で説明する。もともとのデジタル化構想にコロナ禍が重なってのことだったという。コロナも悪いことばかりではなかったのだ。

 国会図書館デジタルコレクション大幅リニューアルのうち、何がもっともよかったか。247万点もの出版物の中身を検索できるようになったことだ。小林さんはそう主張しているし、私も同感である。「(日本の人文社会系)学問が全部書き換わっちゃう」という小林さんの恩師の言葉が引かれている。小林さんはファミリーヒストリーの調査を例に出されているが、その他の調べ物にももちろん使える。私の場合、このところ、北海道にいながら、長崎原爆投下日の天気の証言を調べている。

 ほかにも、「ネット上で確からしい人物情報を探すワザ」「アイドルを調べる」「「ナウい」言葉が死語になる時」「言葉の来歴を調べる方法」など、いつ役に立つか分からないが、知っておいて損にならない調べ方が並んでいる。

 ところで、国会図書館デジタルコレクションのもともとの構想では、利用者から電車賃程度を集めて著作権処理に使うはずだったらしい。いま、まったくの無料で使えていて、ありがたいのだが、電車賃程度なら喜んで支払います。たとえば、電車賃程度を毎月支払う人には、現在、国会図書館内限定となっている図書を全部読めるように開放するなんてどうでしょう?

 なお、本書の内容は、皓星社ウェブサイト上の連載でも一部を読める。
 
  『もっと調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス2』(皓星社)。2024年6月29日初版発行。216ページ。税込み2200円。

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