手紙を待つ

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ある日、

「この舞台が終わったら、手紙書こうと思ってるから、住所を教えてほしい」

というLINEが届いた。

親友が、手紙を送ってくれるらしい。

ほんとに送ってくれるのかなあ。

気持ちが変わらないといいなあ。

私は住所を添えて、「手紙届くの待ってるね」と返した。


私の親友は、とても照れ屋なので、

手紙を書くのにも相当時間のかかるタイプの人なのだ。

「あーやっぱり恥ずかしいからやめた」となりそうで、こわい。


「手紙、待ってるね」ほど不安で切実な響きってない気がする。

いつでもLINEしてねー!は、ちょっと響きがちがう。

LINEだと、本当にいつでも、気楽に連絡できるからこそ、

別に連絡しなくても平気でいられたりする。


そういえば、便りがないのは元気の証拠、みたいな言葉があるけれど、

なんてやっかいな励ましのことばだろう。

やっかいなのかな。なんていうか、あまりにも強すぎる。

期待や確信を捨てまいとする意志が、強すぎる。

こんな強い意志を育ててしまうのも、また「待つ」の為せる業というか。


そんなことを考えながら、

私は相も変わらず彼女の手紙を待っている。

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