手紙を待つ
1016
ある日、
「この舞台が終わったら、手紙書こうと思ってるから、住所を教えてほしい」
というLINEが届いた。
親友が、手紙を送ってくれるらしい。
ほんとに送ってくれるのかなあ。
気持ちが変わらないといいなあ。
私は住所を添えて、「手紙届くの待ってるね」と返した。
私の親友は、とても照れ屋なので、
手紙を書くのにも相当時間のかかるタイプの人なのだ。
「あーやっぱり恥ずかしいからやめた」となりそうで、こわい。
「手紙、待ってるね」ほど不安で切実な響きってない気がする。
いつでもLINEしてねー!は、ちょっと響きがちがう。
LINEだと、本当にいつでも、気楽に連絡できるからこそ、
別に連絡しなくても平気でいられたりする。
そういえば、便りがないのは元気の証拠、みたいな言葉があるけれど、
なんてやっかいな励ましのことばだろう。
やっかいなのかな。なんていうか、あまりにも強すぎる。
期待や確信を捨てまいとする意志が、強すぎる。
こんな強い意志を育ててしまうのも、また「待つ」の為せる業というか。
そんなことを考えながら、
私は相も変わらず彼女の手紙を待っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?