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高校生は数学で何を学ぶのか #2

共通テストの問題を眺めながら、数学の勉強はどうすればいいのか考えてみたいと思います。共通テストで高い点をとるにはどうすればよいのか、あるいは共通テストの対策を書くわけではありません。ですが、センター試験に比べれば、普段からちゃんとした勉強をしている人が共通テストの点数は取りやすいと感じています。反対に、知識・技能を追い込みで詰め込もうとするだけでは取りにくくなっていると感じています。
そこで、2024年度共通テストの問題から逆算して、数学のちゃんとした学びを考えてみたいと思います。問題等はどこかで手に入れてください。

高校でも 図形 を対象に見方を深めます。今回は、三角比についてとりあげます。電柱の高さ、その影の長さ、太陽高度の関係を調べます。ただし、電柱の影の先端は坂の斜面にあるようです。問題や調べたいことがあって、数学をどう活用するかという学びを普段からしたいですね。
問題文に、…ということにする とか、…のことである のように 定義 がちりばめられています。数学は定義を大切にします。数学の根幹の一つです。問題を解くときには、数学的読解力が必要になります。そして、答案や発表などで自分の考えを述べるときには、こういう意味でこの言葉を使っていますという定義を明確にして聞き手と共有する必要があります。表現力の一つです。それが自然になっているといいですね。
坂には傾斜を表す道路標識があって 7% と表示されています。問題文にこの表示の定義が書いてあって、三角比の定義と照合します。αを坂の傾斜角 角DCP とします。 $${\tan\alpha=0.07}$$ ということになるので、三角比の表より傾斜角はおよそ 4度であることがわかります。

電柱の高さを AE と EB に分けます。直角三角形 DCF に注目します。
角CDF の大きさは α ですから、三角比の定義によって、
$${{\rm CF}={\rm CD}\sin\alpha}$$, $${{\rm DF}={\rm CD}\cos\alpha}$$ です。
BC, CD の長さを与えると、
$${{\rm BE}=4\sin\alpha}$$, $${{\rm DE}=7+4\cos\alpha}$$ となります。

さらに、β を 太陽高度 角APB とします。直角三角形 ADE に注目します。
$${{\rm AE}={\rm DE}\tan\beta}$$
したがって、電柱の高さは
$${{\rm AB}=4\sin\alpha+(7+4\cos\alpha)\tan\beta}$$…① と表されます。
α は 4度、βは 45度とすると、三角比の表から AB の長さを計算することができます。4度くらいだと 正接と正弦はほぼ等しく、余弦はほぼ1 としてもだいたいの値は出ます。

関係式が見つかればシミュレーションすることができます。
βが変わったとき、CDの長さを求めてみましょう。
CD の長さを x と置くと、関係式①は、
$${{\rm AB}=x\sin\alpha+(7+x\cos\alpha)\tan\beta}$$
x について解くと(数学的な処理)、
$${x={\rm CD}=\dfrac{{\rm AB}-7\tan\beta}{\sin\alpha+\cos\alpha\tan\beta}}$$ を得ます。

状況から構造をとらえ、変数を上手に定め、関係式を見つけます。このことを 数学化する というようです。数理モデル化です。
今回は、正弦定理や余弦定理は使いませんでした。では勉強しなくていいのか。そんなことはないですね。違う問題では、推論するときや処理をするときに必要になる知識かもしれません。
そして、三角比はとても美しい理論です。定義から出発して、頭の中だけで理論を構築できるというのも数学の魅力の一つです。

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