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その文字の役目が分かるといいです 231109

複雑な問題になると式の中に文字が3つ、4つと出てきます。それぞれの役目が分かると、どう処理すればよいか分かって、問題が解決できます。

xy平面において、3次関数 $${y=x^3-x}$$ のグラフをC、
不等式$${x^3-x\gt y\gt -x}$$ の表す領域をD とします。
P を D の点とします。P を通り C に接する直線は必ず3本 あるそうです。本当ですか? (2015 東北大)

領域D について、
$${(x^3-x)-(-x)}$$ は $${x^3}$$ ですから、D は y 軸より左には存在しません。 …①

P を通り C に接する直線はどのように表現すればいいでしょうか。
C 上の点 T $${(t, t^3-t)}$$ における接線が P を通る とすればよい、ということは経験しているところでしょう。
T における接線の方程式 $${l:~ y=(3t^2-1)x-2t^3}$$ です。
P $${(a, b)}$$ として、$${l}$$ がP を通るということは $${(3t^2-1)a-2t^3=b}$$ …②
また、P は D の点なので、$${a^3-a\gt b \gt -a }$$…③
t, a, b についての関係式が見つかりましたが、条件を満たす直線の本数は どう表されるのでしたか。②を t についての3次方程式 とみて、異なる実数解の個数としてよいでしょうか。これは、$${g(t)=(3t^2-1)a-2t^3}$$ とおいて、曲線$${y=g(t)}$$  と 直線$${y=b}$$ の異なる共有点の個数でよいでしょうか。

いま、a, b を定数として、t についての3次関数 $${g(t)}$$ に注目しています。値の変化を調べてみましょう。
導関数は$${g^\prime(t)=-6t^2+6at=-6t(t-a)}$$ です。①より a は 正の数です。
導関数の正負を調べると、$${g(t)}$$ は $${0\leqq t\leqq a}$$ で増加、$${t\leqq 0}$$ または $${t\geqq a}$$ で減少することが分かります。
したがって、極大値 $${g(a)}$$、極小値 $${g(0)}$$ をとることがわかります。
ここで、$${g(a)=a^3-a}$$、 $${g(0)=-a}$$です。(なんと!)
a, b が不等式③を満たしていれば、曲線$${y=g(t)}$$  と 直線$${y=b}$$ は異なる3つの共有点をもちます。

こんなにうまくいくのは偶然でしょうか。たいてい偶然なんてものはありません。そもそも $${g(t)}$$ は接線の方程式に由来しています。
$${f(x)=x^3-x}$$ とおくと、
接線$${l}$$ の方程式再掲 $${y=(3t^2-1)(x-t)+f(t)}$$ (ここでは t は定数)
だから、$${g(t)=(3t^2-1)(a-t)+f(t)}$$ (t についての関数)
そして、$${g(a)=(3a^2-1)(a-a)+f(a)}$$ (t に a を代入)
$${g(0)=-a+f(0)}$$ (t に 0 を代入)

問題には続きがあって、P を通り C に接する3本の直線の傾きの和と積がともに0 となるようなP の座標を要求しています。

t についての3次方程式③の3つの実数解を α, β, γ としましょう。

傾きの和は $${(3\alpha^2-1)+(3\beta^2-1)+(3\gamma^2-1)}$$ と表されるので、和が 0 ということは、$${\alpha^2+\beta^2+\gamma^2=1}$$
ここで、$${(\alpha+\beta+\gamma)^2=\alpha^2+\beta^2+\gamma^2+2(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)}$$,
いま、$${\alpha+\beta+\gamma=\frac{3}{2}a}$$、$${\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=0}$$
したがって、a の値が分かります。

一方、傾きの積が0 ということは、少なくともどれか一つの傾きが 0 ということなので $${3\alpha^2-1=0}$$ として問題ありません。α は方程式③の解でしたから、$${b=-2\alpha^3}$$
これで問題は解決しました。

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