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三角関数が得意になるには その1 231107

関数で大切なことは何でしょうか。
2つの(それ以上のこともあります)変数の関係を考察するのが関数の考えです。変化の様子(増加・減少)、とりうる値の範囲(値域)、ある y の値に対する x の値(方程式・不等式)などを考察すると問題解決に役立つというのが関数のよさです。値の変化を視覚化したグラフは大活躍します。

どうして三角関数を学ぶのでしょうか。周期をもつ関数だからではないかと思っています。

三角関数の知識・技能

とりあえずパッと思いつく、知識・技能を挙げていきます。

円周上の点と三角関数との考察は結局しなくてはなりません。
周期が大切だといいました。$${\sin x}$$ の周期は 2π です。

$${\sin^2 x+\cos^2 x=1}$$, $${\tan x=\dfrac{\sin x}{\cos x}}$$, $${1+\tan^2 x=\dfrac{1}{\cos^2 x}}$$
相互関係と言われるものです、定義から直ちに出てきます。

$${\sin(x+\frac{\pi}{2})=\cos x}$$, $${\cos(x+\frac{\pi}{2})=-\sin x}$$,$${\tan(x+\frac{\pi}{2})=\dfrac{-1}{\tan x}}$$
$${\sin(x+\pi)=-\sin x}$$, $${\cos(x+\pi)=-\cos x}$$,$${\tan(x+\pi)=\tan x}$$
$${\sin(-x)=-\sin x}$$, $${\cos(-x)=\cos x}$$,$${\tan(-x)=-\tan x}$$
これらは覚えるよりも、円やグラフの平行移動や対称性を使って、そうだよねと気付けるようにするといいと思います。

$${\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta}$$
何といっても、加法定理です。周期を生み出しているといえるものです。
これから、倍角公式、半角公式、和→積、積→和の公式、などさまざまな公式が出てきて大変だということになりますが、問題を解くうちによく出てくる公式は覚えてしまうと思います。

そして、三角関数の合成はよく出てきます。加法定理を使った変形、
$${\sin(x+\frac{\pi}{3})=\dfrac{1}{2}\sin x+\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos x}$$
左から右が「展開」で、右から左が「合成」です。
式の変形は「散らかす」ときはあまり考えることはないですが、因数分解や平方完成、この三角関数の合成といった「まとめる」ときには意志が必要だと思います。

とりうる値の範囲を求める問題では、
$${-1\leqq\sin x\leqq 1}$$, $${-1\leqq\cos x\leqq 1}$$
2次関数に帰着する
三角関数の合成を使う
こんなところがよく見受けられます。

方程式や不等式にはグラフを使うのがいいと感じています。いまは、アプリで簡単にグラフが描けますから、そのイメージを活用したほうがいいです。三角関数ではいわゆる一般解も自然なイメージがもてます。

$${0\leqq x\lt 2\pi}$$ のとき、$${\sin(2x+\frac{\pi}{3})\geqq \frac{1}{2}}$$ を満たす x の範囲を求めてみましょう。
一般に、$${\sin(2x+\frac{\pi}{3})=\frac{1}{2}}$$ を満たす x は
$${2x+\frac{\pi}{3}=\frac{\pi}{6}}$$ すなわち $${-\frac{\pi}{12}}$$ を基準に π ごとの系列と
$${2x+\frac{\pi}{3}=\frac{5}{6}\pi}$$ すなわち $${\frac{\pi}{4}}$$ を基準に π ごとの系列があります。
不等式の一般解は n を整数として、$${-\frac{\pi}{12}+n\pi\leqq x \leqq \frac{\pi}{4}+n\pi}$$ です。
与えられた範囲では、$${0\leqq x \leqq \frac{\pi}{4}}$$, $${\frac{11}{12}\pi\leqq x \leqq \frac{5}{4}\pi}$$, $${\frac{23}{12}\pi\leqq x \lt 2\pi}$$ です。

$${0\leqq x\leqq \pi}$$ のとき、$${f(x)=\sin x+\cos x}$$ のとりうる値の範囲を求めてみましょう。$${f(x)=\sqrt{2}\sin(x+\frac{\pi}{4})}$$ ですから、一般には n を整数として、$${x=\frac{\pi}{4}+2n\pi}$$で最大、$${x=\frac{5}{4}\pi+2n\pi}$$で最小となります。
$${f(0)=1}$$, $${f(\pi)=-1}$$ です。いまの範囲では、$${f(x)}$$は、$${x=\frac{\pi}{4}}$$ で 最大値$${\sqrt{2}}$$, $${x=\pi}$$ で 最小値 -1 をとります。

問題を解いてみよう

p を実数として、x の方程式
$${\sin 2x-2\cos x+2\sin x+p=0}$$ $${(0\leqq x\leqq\pi)}$$ …①
について考えてみましょう。(2023 関西学院大)

誘導がついています。
$${t=\cos x-\sin x}$$ とおきます。$${0\leqq x\leqq \pi}$$ のとき、t のとりうる値の範囲を求めてみましょう。
三角関数の合成を使おうと思います。ここでは素直にやりたいと思います。 $${t=\sqrt{2}\sin(x+\frac{3}{4}\pi)}$$…②
x の制限を外すと、$${x=\frac{3}{4}\pi+2n\pi}$$ で最小, $${x=-\frac{\pi}{4}+2n\pi}$$ で最大となります。
いまの x の範囲では、t は
$${0\leqq x\leqq\frac{3}{4}\pi}$$ において減少、$${\frac{3}{4}\pi\leqq x\leqq\pi}$$ において増加
t のとりうる値の範囲は $${-\sqrt{2}\leqq t\leqq 1}$$ …③です。

$${\sin 2x-2\cos x+2\sin x}$$ を t の式で表してみましょう。
$${\sin 2x}$$ は t を2乗すると出現するというのは経験でしょうか。
$${t^2=1-\sin 2x}$$
したがって、$${\sin 2x-2\cos x+2\sin x=-t^2-2t+1}$$…④

方程式①の異なる実数解の個数を調べてみましょう。

曲線 $${y=t^2+2t-1}$$ $${(-\sqrt{2}\leqq t\leqq 1)}$$ と直線 $${y=p}$$ の共有点の個数を調べてみます。

図1: t と y の関係


図2: x と t の関係

$${p\lt -2}$$ のとき t はないので、x はありません。
$${p=-2}$$ のとき t は -1 の 1つです。 図2より このとき x は2個です。
$${-2\lt p\lt 1-2\sqrt{2}}$$ のとき t は2個あります。
この t の範囲に注目しましょう。
図1 より $${-\sqrt{2}\lt t\lt -1}$$ に 1つ、$${-1\lt t \lt -2+\sqrt{2}}$$ に 1つ です。
図2 より$${-\sqrt{2}\lt t\leqq -1}$$ なる t に対しては、 x は 2つ、
$${-1\lt t\lt -2+\sqrt{2}}$$ なる t に対しては、 x は 1つ
したがって、$${-2\lt p\lt 1-2\sqrt{2}}$$ のとき x は 3個です。
(境界の $${t=-2+\sqrt{2}}$$ にこだわることはなく、図2より $${-1\lt t\leqq 1}$$ なる t に対しては、x は1つです。)
$${p= 1-2\sqrt{2}}$$ のとき t は $${-\sqrt{2}}$$ または $${-2+\sqrt{2}}$$ の 2つ です。
$${t=-\sqrt{2}}$$ に対しては、 x は 1つ、$${t=-2+\sqrt{2}}$$ に対しては、 x は 1つ
したがって、$${p=1-2\sqrt{2}}$$ のとき x は 2つです。
$${1-2\sqrt{2}\lt p \leqq 2}$$ のとき、t は 1つ で、$${-1\lt t\leqq 1}$$ なので、x は1つです。
$${p\gt 2}$$ のとき t はないので、x はありません。

まとめると、
$${p\lt -2}$$ のとき、x はありません。
$${p=-2}$$ のとき、x は2個です。
$${-2\lt p\lt 1-2\sqrt{2}}$$ のとき、x は 3個です。
$${p=1-2\sqrt{2}}$$ のとき、x は 2つです。
$${1-2\sqrt{2}\lt p \leqq 2}$$ のとき、x は1つです。
$${p\gt 2}$$ のとき 、x はありません。


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