【育児最前線01】

【01.世界線を越えられない】


子供が産まれてから世界がまるっと変わってしまったかというと

そうでもなかった。

いや、大変なんだけれども。
とっても。

想像以上に眠れないし、ずっと抱っこをしていて、授乳・オムツ・家事を少々したら1日あっという間に終わる。
とにかく達成感がない。
そして追い討ちをかけるようにこのコロナ禍なので、妊婦・産後じゃなくてもどこにも行けない。
ずっと家にいる。
子供も、夫も。


ひとりになれない。

こんなにストレスになるなんて思わなかった。
私はずっとひとりではない生活に憧れていたはずだ。


子供が産みづらい身体で、ひょっとしたら子供を持てないかもしれない恐怖と4年近く戦っていた。
30になる少し前、結婚はできないかもしれないと思い、保険に入ったり貯金をした。
でもそれは意地であって、結婚したかった。
だけど、仕事で成果を上げられなくて、今の仕事を続けるのかさえも分からず、もがき苦しみ、結婚はしたくないと思う日もあった。

毎日、自分の感情のジェットコースターに振り回されていた。


妊娠したのが分かったのが12月8日だったから、気づけば1年が過ぎていた。
あの日から目まぐるしい環境の変化と様々な生活タスクをこなした。


出産直前、嫌いだった自分と決別し、新しい神聖で美しい私に生まれ変わると本気で思っていた。

出産後はダイエットして体型を変え、好きな人と暮らし、愛すべき我が子と楽しい暮らし。
私は妊娠と出産を通してどこぞのアニメの主人公のように世界線を越えるんだとばかり思っていた。

ところがどっこい。

体重は減らない、体型は戻らない。
好きな人は夫となったけど、一緒になったことを後悔する日もある。
子が可愛いと思えない時期がしばらく続いた。


未だにどこか現実感がないまま今を過ごしている。

本当に、私は結婚したのか?子供を産んだのか?
分からなくなる。

大きな変化は短い期間にたくさんあった。
だけど、実際。
世界線を越えるほどの衝撃と実感はない。


ただ、私が知らなかっただけの現実を知る日々。

パートナーの悪口を言ったり、子育ての苦悩を話す人を軽蔑していたが、実際私も片足突っ込む形になってしまった。

私だけはそうならない、なんて都合の良いことは起こらない。

誰だよ、赤子の世話をあんなに神々しく描いてイメージ刷り込んできたやつ。
上書きしてリアルを伝えたいって毎日真剣に思ってる。
もうこれでひとつアートの題材になるわ。

妊婦神話に踊らされていた私は、すっかり拍子抜けしてしまった。


人よりも実感するということに鈍感な私は果たしてこの変化を“実感”するときが来るのだろうか。
その時、感動するのか、落胆するのか。

それを楽しみに、浮遊し続けたいと思う。

(2020.12.11)

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