念願の再会が復帰戦✨③
何が起こったのか分からなかった。
その場面は映ってなかったし、見たくもなかった。
この日の為に、彼は万全の準備をしていた。
奈良のために、チームのために、奈良のブースターのために
彼のバスケット人生第2章は、
ここでまた輝くはずだった。
そして五男君は、テレビの前で、大声で、ブラックサンダーを握りしめて、グチャグチャに溶かして
『はせがわー、はせがわー』と応援し、私はそれを見ながら微笑むはずだった。
あの痛がり方は、誰が見ても尋常ではなかったと思う。
診断は骨折 全治6週間。
五男君は何が起こっているのか理解できていなかった。
私も、五男君にどう言っていいのかわからなかった。
やっと、テレビ越しではあるけど、はせがわがボールを持って、走り回る姿を見せていけると思っていたのに。
次の試合も、その次の試合も、彼はユニホームを着る事はなかった。
五男君はその度に私に問いかける。
『なんではせがわは、試合出ないの』
そうだね、そうだね、ずっと待ってたもんね。
はせがわの真似をして、ボールを追っかけて
入りもしないリングに向かってスリーポイントを打ち続けて
たなばなさまの短冊にも願い事をして
繰り返し、試合のビデオを見ながら、同じ場面ではせがわーってコールしてたもんね
悔しかった 本当に悔しかった
だけど、1番悔しかったのは
紛れもなく長谷川選手だろう
どんなに落ち込んで、どんな気持ちでベンチにいるんだろう もうベンチにいられないぐらいズタズタなのではないか
そう思って試合を見た
しかし、そこには
私の想像を遥かに超えた
プロのバスケットボールプレイヤーがいたのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?