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一般人観察日記

自分は特別な存在だと思い込んでいる一般人がいました。
その子が持つ数字の大半は彼女に興味なんて最初っからないのに、自分が沢山の人々に愛されてると錯覚したその子は画面の上で踊り続けました。
「普通」がまともに出来ないその子は直ぐに数十万人の数字を抱えた電脳世界のピエロになりました。
愛想の在庫切れと多方面から飛んでくる言葉のナイフに怯えたあの子はひたすらに笑顔を作りました。
そんなあの子の傷口に塗りこまれるのは契約によるお金と顔も知らない人たちの「大好き」でした。
嘘でもいい、思ってなくてもいい、その言葉を頂戴。その為なら血を流してもいい。
そしてあの子は電波の鎖に繋がれました。
そして賞味期限は突然やってくるのです。
伸び悩んだあの子は突然姿を消しました。
そして何度も名前を変えて同じことを繰り返すのです。
そして認められ、当てられ、離れられ、ピエロになるのを繰り返して、傷口はいつまでも鮮やかなまま。
何回これを繰り返すのだろう?
中途半端に続かないままずっと車輪を廻し続ける愚かな自分が嫌いで、それを受け入れたくなくて、顔に無理やり可愛いの理想像を描き続け、自分自身の手で自分を着せ替え人形にしました。
そして鏡に映る虚像を見つめながらあの子は今日もこういうのです。
「かわいい」
誰かが本物のその言葉をかけてくれる日まで、ずっとあの子は自分で虚像を愛で続けるのでしょう。

光り出す画面と無意味な文字列、薬や化粧品の散らばった台。漠然とした不安に目を瞑ったって、今日も鏡の向こうのあの子はこんなにも可愛い。


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