倒産法判例百選 No.8「再生計画案可決の見込みと申立棄却事由
1. 本判例の解説
【判例タイトル】 No.8「再生計画案可決の見込みと申立棄却事由」
【判例番号】 東京高裁 平成13年3月8日決定
【事案の概要】
X(抗告人)は、債権者としてY(相手方)およびその代表取締役Aに対してそれぞれ破産の申立てを行いました。これに対し、Yは民事再生手続の開始を申立てました。その結果、Aに対しては破産手続開始決定がなされ、Yに対しては民事再生手続の開始決定(原決定)が下されました。Xは、自身が議決権の過半数を有しており、再生計画案に賛成しないため「再生計画案の可決の見込みがない」と主張し、民再25条3項に基づき即時抗告を行いました。
再生裁判所に提出された債権認否書によると、Yの届出再生債権の総額は515億7635万円であり、そのうちXの債権額は139億5209万円を占めていました。また、Aの破産管財人が届出た244億1633万円のうち、238億5308万円がY社の債務に基づく求償債権であり、これによりXの議決権は実質的に過半数を占めると認定されました。
1-1. 問題となったところ
民再25条3項は、「再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないとき」に申立てを棄却すべきことを規定しています。本件では、Xが過半数の議決権を有し、再生計画案に賛成しない意思を表明したため、再生計画案の可決の見込みがないと判断されました。再生手続の濫用防止と債権者の利益を守るため、再生計画案が可決される見込みがない場合には、裁判所は申立てを棄却しなければなりません。
規範として以下の内容をその場でつくれれば十分かとおもいます。ポイントは議決権の50%もしくは総債権者の過半数です。
「再生計画案の可決の見込みがないと判断されるのは、総議決権の50%以上を有する債権者が反対する場合や、総債権者の過半数が再生債務者に対する不信感を表明している場合である」
2. ショート問題と解答例
【問題】
Y社の総債権額は500億円であり、そのうちA銀行が200億円、その他10名の債権者が270億円の債権を有しています。また少数債権者の合計は30億円です。A銀行以外の債権のうち、Y社代表取締役Zの連帯保証に基づく求償債権が120億円含まれています。この状況で、A銀行が再生計画案に反対の意思を表明し、再生手続開始決定の棄却を求めたとき、再生手続の棄却は認められるでしょうか。
【解答例】
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