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特定非営利活動法人みんなの進路委員会「子どもにとって安心・安全な組織・事業づくりガイドライン」

前文

すべての子どもは、権利の主体であり、一人の人間としてその尊厳が尊重され、その権利が保障される。すべての子どもは、生まれながらにして幸せに生きるための権利を持っている。この権利は、子どもであることを理由に侵害されることがあってはならない。
 1989年に国連「子どもの権利条約」が採択され、1994年に日本政府も批准。2022年には「こども基本法」が成立するなど、子どもの権利の保障は、子どもの成長に関わる教育関係者にとっていまや世界標準の責務である。
 しかし、世界ではあらゆる場所で虐待や搾取など、子どもの権利の侵害が起こっており、日本も例外ではない。とりわけ、子どもを支援する立場にある者が、その地位を悪用して加害行為に及び、私欲のために子どもを利用することは、深刻な背任行為であり到底許されることではない。
 そこで、特定非営利活動法人みんなの進路委員会(以下、当法人)は、この度様々な関係法令や先行する諸教育関係団体の事例を参考に、この度子どもにとって安心・安全な組織・事業づくりガイドライン(以下、当ガイドライン)を定める。関係者による虐待や搾取など、子どもの権利に反する行為や危険防止に努め、子どもたちがより安心・安全できる活動と運営を目指す。また、疑念が生じた場合は毅然と対応し再発防止に努める。

第1章 当ガイドラインが目指すもの

 当法人の活動に参加・関与する子どもたちが、その活動を通じて虐待や性的搾取にあうことがないよう、またいかなる形でも傷つけられ権利を脅かされることがないように最大限の努力を行う。故意によるものだけでなく、過失や不注意による危険も起こらないようにしなければならない。
 すべての職員および団体関係者はそのための責任を担い、また、様々な規定類にこれを反映する。このガイドラインはそのための責務を示すものである。

本ガイドラインが目指すもの:

・当法人のスタッフ採用プロセスにあたっては、子どものために働く十分な適性を備えた人物を選考すべく、厳しい人選手続きを行う。
・すべての関係者が、子ども虐待や性的搾取に関して、各々の責任を理解し適切に対応できるようになる。
・すべての関係者が、子どもと適切な関係を保って接し、当法人の名声や信用を汚すことがないようにする。
・すべての関係者が、当法人の活動に参加する子どものための安全な環境づくりに積極的に取り組む。
・すべての事業や活動において、子どものリスクを分析し、自分たちでコントロールできるあらゆる方法を用いてリスクを軽減、もしくは除去する。
・すべての関係者において、こどもの権利に関する意識を向上させ、子どもたちを危険から守るよう予防に取り組み、安全に関する懸念の報告や適切な問題対応を促す仕組みを確立し、維持していく。

 上記を通し、当法人は子どもにとって安心で安全な団体として成長し続けることを目指す。それが、子どもの権利に資することであり、当法人が希求すべきことと考える。

第2章 原則

下記の原則を満たすことにより本指針の実現を図る。

・当法人に関わるすべての関係者は、公私にわたり、子どもと最も適切な言動をもって接する。本ガイドラインを理解し実践する責務は関係者一人一人に課せられる。指針に反しかねない潜在的な問題や懸念を察知した場合には適切に報告・対応し、問題の予防に全力を尽くさなければならない。
・本指針は、当法人の活動形態や場所を問わず、あらゆる業務において、すべての関係者の義務として適用する。
・子どもの安全に関する懸念や問題がもちあがった場合には、オープンに話し合うことができる環境づくりを目指す。
・不適切な行為に対してはきちんと指摘し、問題行為を未然に防ぐとともに、好ましい実践を広げていく。
・団体内の制度や基準および実践を強化することによって、活動対象となる人々への説明責任を果たす。
・この取り組みと関連する「子どもの権利」の内容について、子どもたちが理解しておくことが肝要である。関係者のどんな行動が適切で、そうでないものは何か、また万が一問題や懸念を感じた時にどうすれば良いかについて子どもに知らせ、子ども自身による防御力や適応力を引き出す。
・子どもの安全を脅かす問題が生じた際には、常に子どもの最善の利益を考慮して対応にあたる。また心理的、精神的、身体的なニーズに配慮し、子どもの安全と健康および幸福感の充実にむけて努力する。
・関係者等の言動に関する懸念や、報告、調査を通じて集められた情報は必要最小限の範囲で共有されるよう統制する。すべての記録や一連の通信文書も含め、守秘義務を守って適切に保管されなければならない。
・虐待がしばしば深刻化し繰り返される可能性を鑑み、懸念が生じた際には迅速な対応が何より重要となる。問題把握後の報告や問題対応にあたっては明確な期限を定めて手続きを進めなければならない。
・本ガイドラインは、業務時間中であるか業務外かを問わず公私にわたり適用される。
・協力関係にある団体や個人と一緒にこの取り組みを推進し、より広く地域や業界に働きかけて子どもの安全保護を実現する。

第3章 定義と適用範囲

以下に、本ガイドラインにおける用語等の定義と適用範囲を定める。

子ども・・・18歳未満のすべての人。なお、18歳以上であっても高等学校卒業前のものについても準拠する。

子ども虐待・・・個人・組織・または物事を進める過程において、作為か不作為かを問わず、子どもを直接的または間接的に傷つけ、安全で健康的に成長していくことを害するあらゆる行為を言う。世界保健機構(WHO)の定義によると、虐待は、身体的虐待、心理的虐待、ネグレクトや注意の行き届かない扱い、性的虐待、搾取に分類される。身体的虐待とは、物理的な暴力により、怪我をさせたり苦痛を与えるもの、もしくは、そうなりかねないものを指す(例:殴る、揺さぶる、やけどを負わせる、叩く、女性器切除、拷問など)。心理的虐待とは、中傷、繰り返される批判、さげすみ、侮辱、監禁、隔離などを指す。性的虐待は、近親姦、児童婚、強制結婚、強姦、ポルノグラフィーへの関与、性的奴隷など、あらゆる性的暴力をいう。特に、子どもに対する性的虐待は、わいせつな接触や、性器の露出、露骨な性的な言葉や、児童ポルノを見せることも含む。

性的搾取・・・性的な目的で、立場の弱みにつけ込み、力の違いや信頼関係を悪用して性的関係を持つ、あるいは持とうとするあらゆる行為を指す。これは他者を性的に搾取することで金銭的、社会的、政治的に利益を得る場合も含み、またその限りでもない。

子どもの性的搾取・・・法律で定められた性的同意年齢未満の子どもとの性行為は、子どもの性的虐待であり、かつ刑事犯罪である。仮にその年齢に満たない子どもが合意していたとしても、法的には同意とはみなされない。これを踏まえ、当法人は以下のように考える。

a. 関係者による子どもとの性行為は、同意の有無に関わらず、子ども虐待かつ違反行為とみなす。

b. 同意の有無に関わらず、子どもが住む国や性行為が行われた国において、法律で定められた性的同意年齢未満の子どもと性行為を行うことは、子ども虐待かつ犯罪である。

c. 子どもが住む国や性行為が行われた国において、法律で定められた性的同意年齢以上18 歳未満の子どもとの性行為は、違法行為にあたらないとしても、当指針および行動規範の違反として取り扱われる。

本ガイドラインの適用範囲・・・本ガイドラインは次の者に適用される。

スタッフ: 当法人の職員やアルバイト等。契約の形態は問わない。

その他の関係者: 役員、ボランティア、インターン、アドバイザーなど、当法人の名称を使用して活動に携わる人々。

パートナー機関あるいはパートナー機関の関係者: 子どもとの接触を含む活動等で当法人と公式な契約関係にある個人やグループ、外部組織や提携機関、およびその職員及び役員、ボランティアなどの関係者。ただし、その組織が子どもの権利の保障に関する独自指針を保有しそれを遵守することを公式に合意した場合は除く。

ドナー、ジャーナリスト、著名人、政治家、その他の人々が当法人の活動や事務所を訪れ子どもと接する際は、本ガイドラインが適用されることを認識させなければならない。

上述の対象者は、公私にわたり、この指針に従って行動しなければならない。

当ガイドラインに違反する行為を行った場合は、解雇を含む懲戒処分となる可能性がある。パートナー機関や契約先の場合は、契約や連携の終了を含む事態を招くこともありうる。また場合によっては、当局に連絡してしかるべき法的措置等に従うものである。

第4章 組織体制

 当法人は、内外の関係者一人ひとりがこの取り組みを理解して規範に沿った言動ができるよう啓発するとともに、組織内の各部署・各担当者がそれぞれの役割と手続きを理解してその責任を果たすようにしなければならない。当法人は、組織全体でこの取り組みを実現・推進していくために、適切な人員を配置する。また必要に応じて委員会等を設けて定期的に進捗状況を点検し、必要となる方策等の決定、諸課題への対応、および内外への啓発等を担える組織体制を整えることとする。
 理事会は重要課題についての報告を受け必要な審議・決定を行い、その最終責任を担う。
 事業の管理運営に関しては、事前審議で子どもの安全の観点から実施の是非を検討し、詳細計画の立案では丁寧なリスク分析と安全のための予防策を講じなければならない。さらに、事業モニタリングおよび事後評価のプロセスにおいても、子どもの権利の保障の観点での検証が必ずなされるよう十分な情報収集と分析を行うとともに、そのためのチェックシステムを導入・確立を目指すものとする。

第5章 その他

 当ガイドラインは、1989年の国連で採択された「子どもの権利条約」、国連事務小腸が2003年に公表した「性的虐待及び性的搾取を予防するための特別措置」、当法人が2024年に制定した「子どもの権利保障のための行動規範」等に準拠する。

2024年4月1日制定


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