TOKYO MER 第2話 レビュー フィクションをリアルに感じて生きる力に変わる最高のドラマ


遅ればせながら、第2話レビューです。

1話を裏切らない・・・いやそれ以上の緊迫感を見せてくれる、ドラマ班の心意気に感動。
いきなり鉄骨崩落現場でのオペのシーンは、すごかった。あんな危険なところでオペをはじめるとか、普通にあり得ませんよね。「えっ?」とだいぶ引きぎみで声に出してしまうレスキューや正直なMERスタッフの気持ちはよくわかります。
私ら視聴者も(なんで…何考えてんの?)と思っていたはず。しかしそんな言葉はあえて飲み込み、手際のよい喜多見先生の所作を見守る。無敵のスーパードクターと究極のMは紙一重か…なんてふと浮かぶ考えも、違う違う!とあえて封印する。

そうこうして見入っているうちに、そこに存在するのは、圧倒的リアリティ。さっきまで感じてた違和感は何処かへ行ってしまっている。

ドラマってこういうものだ。私たちの現実とは異なる「フィクション」の中にいる彼らは、私たちと同じく、確かに生きている。

SNSのコメントを見ると、実際の医療現場や救出現場と照らし合わせて、「ここがおかしい」「あり得ない設定でさめる」などと突っ込む人も少なくない。ご愁傷様です。そんな人たちは、ドラマを見る資格はありません。今すぐドキュメンタリーを見ましょう。

当たり前なことを言うが、ドラマとはエンターテイメント。

フィクションの中には現実と違う「あり得ない」はぬぐえない。その中にリアリティーを見いだし、物語の世界観に慣れるまでには「あり得ない」ハードルを越えなければならない。そこには多少の「もやもや」が付きまとうかもしれないが、そこを越えてまんまと「はまって」しまったら、究極のアトラクションが待っている。TOKYO MER とは、まさしくそんなドラマです。

思うに、比奈先生はこのドラマの世界観の中では、私たち視聴者に最も近い存在なのではなかろうか。

研修医でありながら、TOKYO MERに配属されたことを不本意に感じ、喜多見チーフの行動に「あり得ない」と真っ向から否定する。実力も経験もないのに、いっちょ前に理想やプライドだけはあってふてくされている。自分の頭の中以外のやり方を批判する、若気の至り。自分で判断しなければならない現場で、一刻をあらそうからと言い訳をして他へ搬送し治療を任そうとするなど、自分を守ることだけは立派。もちろん、そんな自分にはイライラは隠せない。

えらそうな比奈先生の文句は無視して、喜多見チーフはもくもくと行動をする。クラッシュ症候群の患者さんをオペするシーンでは、あらゆる手を尽くし、想定外の事態にも冷静に判断を選ぶ。万事を尽くして誰もがあきらめかけていたとき、一人だけ手術の成功をゆるぎなく確信していた。私たちは、いつでもそんな風に、強くありたい、できる人になりたいと願うのだけど、比奈先生のように、言い訳をつけては「あり得ない」と思い込んではいないだろうか。腹を立て自分の正義を主張し盾にしていないだろうか。

喜多見チーフはそんな比奈先生を無視して突き放すかのようで、実は一番温かく見守っていてくれた。やり方や答えを「与える」のではなく、「自分が一番わかってますよね」と本人の中に「ある」ことを教えてくれていた。

「自分にはできない」と決め付けたら、どんなたいそうな覚悟ではじめたことも、一生、できることはない。しかし喜多見チーフは、「あなたならできる」と比奈先生に投げかける。自分が自分を信じられないのに、喜多見チーフは絶大の信頼を持ってくれているのだ。比奈先生には、どれだけ大きく強く見えただろう。

このドラマのいいところは、フィクションであっても理想論ではないところだ。結果、比奈先生は、判断ミスや無知で大きな失敗をしでかしそうになる。しかし、喜多見チーフはそれを否定しない。ひっくるめて「よくがんばった」とほめ「あなたがいてくれてよかった。ありがとう」と感謝すらしてくれる。

比奈先生に明るい顔が戻ったとき、私たちにもなぜか力がみなぎっている。比奈先生を通して、私たちまでもが喜多見チーフに全肯定されている気分になる。これが、フィクションを超えてリアリティを得たドラマの大いなる力。比奈先生とともに自分も励まされ、きっと私にも喜多見チーフのような人がどこかにいると思わせる。そう思えたら、外側ではなくもうすでに自分自身の中に喜多見チーフはいるのかもしれない。

「わたしならできる」と思える力が生まれているから。

日曜日の夜に、次の月曜日からのエネルギーになる、素敵なドラマにはまれてよかった。(しかも主演が推し俳優の鈴木亮平さんとか、まじ最高です)生きているって色々あって、しんどいこともあるけれど、ドラマに励まされてがんばろうと素直に思える自分がいるかぎり、世界はいいところに違いない。そんな気がする。

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