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痴漢にあってしまったあなたへ ー自分にできることや証拠は?ー


私は元警察官で、mimosasの「#知ることで変えられる未来がある」という思いに共感し、活動に加わりました。都道府県警察・警察庁における実務経験を活かし、「知る」一歩となる正確な情報を、mimosasと一緒に発信していきたいと思っています。

痴漢被害にあってしまったあなたに、
伝えたいことが3つあります。

1. 被害にあってしまったことについてあなたに落ち度はないということ。2. 痴漢は犯罪で、我慢しなきゃいけないことでも、笑って流さなきゃいけないことでもなくて、あなたの感じた痛みも気持ち悪さも恐怖も間違っていないということ。
3. 痴漢被害にあってしまったときに、具体的に何が出来るのか。

今回の記事では「痴漢被害にあってしまったときに、具体的に何が出来るのか」について書いていきたいと思います。


1,2について、前回の記事に書いているので良かったら読んでみてください。

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被害にあっても声を上げられない

被害にあっても声を上げづらい理由のひとつとして、「痴漢はよくあること」「あんな格好していたから」といった言葉を社会で聞き続けるうちに、無意識に自分の中に形成される「仕方ない」という刷り込みがあると思います。


最初に書いたように
「仕方ない」ということはありませんし、
被害にあったことについて、
あなたに落ち度はありません。

だから声を上げられそうであれば
自分を信じて堂々と声を上げてほしいですし、

もしも誰かが声を上げたときは
誰もがその声に真摯に向き合えるような
社会を作っていきたいと思います。

そしてもうひとつ、
声を上げづらい大きな理由として
「何をすればいいのかわからない」
「声を上げたとしてどうなるか分からないから、躊躇してしまう」

ということもあるのではないでしょうか。

ここからは、被害にあったときに

・何が出来るのか
・何をしたらいいのか
・何が起きるのか

を具体的にお伝えしたいと思います。

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被害にあったあとにできることはある?

痴漢は電車内に限らず色々なところで起きますしその方法も様々ですが、

ここでは「痴漢」といって連想されやすい
朝の通勤・通学時間帯の電車において、
「身体を触られた場合」を想定して書きます。


被害にあってしまったときは、
次の3つを思い出してください。

① 身の安全を確保する
② 警察に相談する
③ 証拠を確保する

具体的にどういったことをするのかを
⬇︎に記載するので、参考にしてくださいね。

① 身の安全を確保してください。
加害者が逆上する危険もありますので、まずは自分の身の安全を最優先し、
可能な限り周囲に助けを求めてください。

周りの人に「助けてください」
「駅員さんを呼んでください」
「通報してください」
「痴漢です」と伝えることは、

・あなたを守ること
・通報や加害者の取り押さえに協力してもらうこと
・目撃者を確保すること        

などの点で有効です。

② 警察に相談してください。
警察における被害相談はいつでも受け付けていますが、被害後の早い段階で行った方がいいこともあります。
通報後の流れは 次に出す記事で詳しく書きますが、「通報したら絶対に日が暮れるまで帰れない」というわけではありません。躊躇せず早めに(可能であればその場で)通報や相談をしてほしいと思います。

ただ「被害直後は動揺してしまって通報できなかった」ということもあると思います。

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被害発生時点で加害者を捕まえられなくても、痴漢の被害にあっている方からの相談に基づいて事前に打ち合わせをし、関係する警察署や鉄道警察隊等が被害者の協力を得ながら犯人を逮捕している事案もあります。

被害の実態や発生状況によっては私服警察官が被害者に同行して通学・通勤電車に乗車するといった対応もします。

また例えば「この路線のこの時間帯のこの車両は被害申告が多い」ということが分かれば、警察官が重点的に警戒することにもつながります。

決して声を上げることは無駄にはなりません。
諦めずに最寄りの警察署や鉄道警察隊に
相談してみてください。

直接相談することに抵抗があれば、各都道府県警察の「性犯罪被害相談電話窓口」につながる
全国共通の短縮ダイヤル番号(#8103)があります。

電話をかけてみてください。(※1)(※2)

③ 証拠を確保してください
痴漢の証拠になり得るものは、被害者証言、目撃者証言、防犯カメラ映像、洋服や肌に付着した繊維などがあります。当日採取したほうがよいもの、現場に居合わせたひとの協力が必要なものもありますので、出来ればその場で警察に通報してほしいと思います。


被害直後に警察に行くことが難しいときも、
・シャワーを浴びる前に相談に行く
・着ていた洋服は洗わずにきれいなビニール袋に入れて保管する
・時間や車両、覚えていることをメモしておく

といったことは有効です。

頭の片隅に置いておいてもらえたらと思います。

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覚えておきたい痴漢の“証拠”

痴漢は犯罪ですが、
犯罪として処罰するためには、
犯罪の事実があったということを
証明しなければなりません。
では、どんなものが証拠になるのでしょうか。

私は高校生のころ被害に遭ったとき警察にも先生にも言いませんでしたが、それは「証拠がない」「どうしようもない」と思ったからでした。

確かに比較的短時間で行われ、被害者が混乱しているうちに加害者が人ごみに紛れてしまう——そんな痴漢は「証拠」のイメージが付きづらいと思います。確かに証明が難しいのも事実です。ただ証拠になるものは、おそらく皆さんが想像するよりもたくさんあります。

被害直後、以下に書いたことを思い出せなくても仕方がありません。

それでも「何が証拠になるか」について、知っているのと知らないのとでは、きっと出来ることが違ってくると思うので解説させてください。

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(証拠1) 被害者の証言

分かりやすいと思いますが
「被害にあった本人の証言」です。
痴漢の場合は、他の客観証拠を集めづらく、
被害者証言に頼らざるを得ない場合が
多い傾向にあります。

そのため出来る限り記憶の新しいうちに警察において聴取を行い、正確性を確保するために、必要に応じて人形等を使った被害の再現を行います。

(証拠2) 目撃者の証言

目撃者がいる場合は、
出来る限りその場に残ってもらってください。難しければ連絡先だけでも
聞いておけると良い
です。

連絡先を聞く場合も、
駅員や警察官につなぐまで残ってもらい、
その場で「後日警察で証言すること」と
「目撃者の連絡先」
を伝えてもらえたら、
なお良いです。

第三者の証言があることは、
犯罪事実があったことの
信用性を高めてくれます。

目撃者が「止めに入る勇気はなかったけど、証拠を…」と被害状況を撮っている場合もあるかもしれません。映像があれば、強い証拠になります。

(証拠3) 防犯カメラ映像

こちらも馴染みがあるかと思います。最近は電車内の防犯カメラ設置が広がっていますし、車内にカメラがなかったとしても、駅のホームにカメラが設置されている場合は多いです。

例えば
・走って逃げる加害者の様子が映っている
・ホームにおける不審行動の確認
・(常習犯であれば)不自然なつきまとい

の様子が確認できるかもしれません。

映像だけで証明することが
難しい場合もありますが、
証拠の組み合わせで証明が出来たり、
証言の裏付け
になったりすることもあります。

(証拠4)微物、DNAなど

加害者が被害者に触れた時に
加害者の服の繊維(微物)や体液などが
被害者に付着することがあります。

例えば被害者の衣服で覆われたはずの肌から、
加害者の着ていた洋服の繊維が採取されたと
か、そういった事情があれば嫌疑が強まります。

洋服を洗濯してしまったり体を洗ってしまったりすると採取が難しくなるため、当日に警察で確認を行う必要があります。

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このように、証拠にもいろんな種類があります。加害者をつかまえて引き渡すことだけが方法ではありません。

まずは交番や警察署、大きい駅であれば鉄道警察隊の分駐所がありますので、相談してみてくださいね。

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※この記事は2020年10月21日において、警察庁や都道府県警察が公開している情報を基に、元警察官が個人の見解として執筆しています。

※1 土日・祝日、執務時間外は当直対応です。
※2 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの短縮ダイヤル(#8891)もあるので相談してみてくださいね。


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2021/4/29
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