65-68_悪役のエンディングは死のみ ネタバレ
数日後、公爵から呼び出され、公爵の執務室に向かった。
そこには、公爵と2人の息子、ヴィンター、イヴォンヌまでがソファに座っていた。
・・・成人式以後、このような場面がノーマルモードにあったのか?
元々ゲームでは、ヴィンターがイヴォンヌを連れてきたのだから、このような場面が1つぐらいはあったかもしれない。
「・・・ペネロペ、目覚めたばかりの状態で、こういう場を設けるのは申し訳ない。
しかし、成人式で倒れたことについて、詳しい状況を教えてほしい。
二度とこういうことがあってはいけないから。
それで君とイヴォンヌにその時のことをについていくつか質問したい」
「はい、聞いてください」
そうして、公爵は私に質問をしてきた。
セリー酒を飲んだことを覚えているかと。
私が飲んだ杯の上部に毒が塗られていたこと。そのグラスが私のものではなく、イヴォンヌのものだったということを知っていたのかということ。
「そうですね、わかるような気もするし、わからないような気もするし」
「ペネロペ。これは非常に重要な問題だ。あなたをそんな風にした原因が何なのか調べなければならないのだから、慎重に思い出しなさい」
「杯が似ていて、判断がつかなかったような気もします。イヴォンヌ君はどう?」
「あれ、あれ?」
ぼんやりと私の前のコップを見下ろしていた女主人公が驚いた。
「お前は、その時の記憶がどうなんだ?」
「びっくりしすぎて、あの時のことはおぼえてないよ・・・」
お酒を飲んで急にペネロペが倒れたことをしか覚えてないというイヴォンヌの青い目に急に涙が溢れた。
私は彼女のやり方にちょっと失笑した。
もちろん、私が私の手で毒を飲んだのは確かだが、彼女の言葉はまるで私が自作自演を犯したと確信しているように聞こえた。
私が苦笑いした時、彼女の隣に座っていたデリックの目つきが険しくなった。
その時、ヴィンターが口を開く。
「・・・皇太子殿下のお言葉のように、イヴォンヌ令嬢が自作自演を繰り広げようとして、ペネロペ令嬢に阻止された可能性も排除できません」
私は驚いた目で彼をみた。
まだ洗脳されてないのか・・・?
女主人公に先に会った彼が・・・・
「ええと、ええと、私が?
私は、そんなことしません!本当ですよ!」
イヴォンヌはヴィンターの指摘に驚いた。
水が溢れる杯のようにあふれんばかりだった女主人公の大きな目からとうとう涙がこぼれた。
「私はその場に入れるとは思ってもみなかたんですよ。まず、お兄さん・・いや、小公爵さんもご存知だと思います。私が・・私が行かないと申し上げたのを」
「それは事実です」
彼女の指摘にデリックは短く答えた。
本当だろう。君は、君が洗脳されたことも知らない愚かな奴だから!
私は内心苦笑いをした。
そんな私を発見したデリックがまたもや目を向いた。
その後イヴォンヌは、自分に付けられたメイドベッキーが、エミリーと親しかったことやベッキーがエミリーと時々会っていたこと、エミリーが私のメイドだということを指摘した。
質問を投げかけたヴィンターの口が徐々に閉ざされていく。
これで事件はまた原点に戻った。
私は静かな沈黙で視線を落としテーブルを見つめた。
最初はどう打破しようか考えたが、たちまち面倒くさくなってきた。
ゲームのように私が毒を飲ませたんじゃないだけマシじゃないか?
今でも思い浮かぶ。イヴォンヌを毒殺しようとしたペネロペがどうやって死んでいったのか・・。
そんなことを考えていた私は、イヴォンヌの前に置いてある茶碗へおもわず目を向けた。
湯気の立ち去った透明な茶の湯の色が、まるで私が飲んだセリー酒のように見えた。
私はかすかに揺れる視線を上げてイヴォンヌを見上げた。
彼女は何がそんなにくやしいのか、涙をぼろぼろ流していた。
私はまた視線を落として、彼女のコップを眺めた。
続いて、他の人の前に置かれたコップも・・・
___ない!
その瞬間、背筋を伝って不気味な気配を感じた。
イヴォンヌの茶碗には何もなかった。彼女の残像が、水面に映らなかった。
「____毒だとわかっていながらどうして飲んだのか」
その時、誰かが話しかける。
私は肩を震わせて顔を上げた。私をみていたデリックと正面から目があった。
「どうした?」
「いや、なにも・・
それよりも、何とおっしゃいました?」
「君がしていた魔法のネックレス、周辺に毒性物質があれば色が変わると言うが。
ベルダンディ侯爵は君がそれをみなかったはずがないと証言した」
私はこっそりヴィンターを見た。
彼もデリックに劣らずさっきから私をじっと見つめていた。目があうと彼の瞳孔が一度揺れた。
「メイドの部屋からお前の飲んだ毒の解毒剤が出てきた」
「デリック、やめろ!ここは尋問する場所じゃないよ」
公爵の厳しい声が彼を防いだ。
平素から父親の命を聞いている奴らしくないように、デリックは公爵の言葉まで無視して執拗に聞いた。
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