61-64_悪役のエンディングは死のみ ネタバレ

デリックはふと考え混んで歩いていた足を止めた。

いつの間にか中央階段の最後の階段の上に立っていた。

はるか向こうの廊下に立っている執事とメイドが一人見えた。

彼はしばらくためらったが、すぐにそちらに足を運んだ。

「小公爵様」

人の気配に顔を上げた執事が驚いた表情をした。

「中に、入れるかな?」

デリックが聞いた。

しばらく悩んでいるようだった執事が軽く頷きながら答えた。

「主治医が診察しています」

「ちょっと様子をみたいんだけど」

「ああ、それが・・・・」

部屋に入ると言われて執事が慌てた。

困った表情に不思議に感じている時、ふと奥から見知らぬ声が聞こえてきた。

「どうだ、調子は」

どっしりした男性の声だった。

一瞬驚いたデリックがそっと開いていた部屋のドアを開け放つためにドアノブを握った頃・・

「小公爵、皇太子殿下にと伝えします」

執事が急いで彼を阻んだ。

肩の隙間から立ち込めた濃い煙とともに、二人の顔が映った。

ベッドを真ん中に挟んで、主治医と皇太子が立っていた。

「ヤマハ超えましたが、まだ血は完全に止まっていません。

 意識がいつ戻るかは・・・」

医者が言葉を濁しながら首を横に振った。

皇太子がよろめきながらベッドの横に置いた椅子にどっかりと座り込んだ。

布団の外に突き出た手を掴んで口元に持って頭を下げた。

部屋の中に陰鬱な沈黙が訪れた。

しばらくして皇太子が何かつぶやくのが聞こえた。

デリックは息を止めたまま、よく聞こえない音に耳を傾けた。

「実はよく知っている。あなたが噂のように血も涙もない悪女とは程遠いということを。でもその話をするたびに、私を睨むあなたがとても綺麗だった。

 だからついつい言ってしまうんだ。本気じゃなかったと」

取り留めなく振舞っていた皇太子がペネロペの手に深く顔を埋めた。

「血も涙もない悪女だという噂を避けた。血も涙もないどころか、残忍なのは大嫌いな人なのに。しかし、血はまだ流れている。君はこんなこと嫌いなのに・・・そうでしょ?」

死体のように青白い手には温もり一つないように見えた。

皇太子はその手に自分の唇と頬を擦り付けながら自分の体温を伝えた。

「この地獄から出てくれって言うから、どうか目を覚ましてくれ。

 死なないで、ペネロペ。

 この地獄に私だけ置いて・・・」

こういうことを望んでいたわけではない。ただ、気になった。

果たしてイヴォンヌを連れて行ったら、どんな反応をするのか。

しかし、このようなことを望んだわけではなかった。

デリックの顔は知らないうちに歪んだ。

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