72-74_悪役のエンディングは死のみ ネタバレ

しばらくして、商会近くで馬車を降り、見慣れたウサギ模様が描かれた古いドアが出てきた。

私は誰かが追いかけてくるのではないかと急いで階段を駆け上がってドアを叩いた。

ドンドン・・・ ドンドン・・

強くノックしたけど、ドアが開く気配がない。

ここにいない・・?戻ってくるまで待つ?

がらんとした路地をきょろきょろ見回しながら悩んだ私は、ドアノブを握った。

回したドアノブは簡単に開いた。

バッと戸を開けた私は、開けられたばかりのドアから出てくる途中だったウサギの仮面と正面で出くわした。

「だ、あなた・・・うっ!」

びっくりして魔法を間違えたのか、「クウウウ〜〜ン」といきなり壁が閉まり始めた。

やつは半分壁に挟まれた奇妙な姿でうろたえていた。

私は商会のドアを閉めて、彼に素早く近づき囁いた。

「お金ちょうだい」

「・・・・はい?」

「預けておいた私のお金の一部を取りに来た」

「なに・・とりあえず、ちょっと待ってください。くそっ」

ヴィンターは低級な悪口とともに何かを呟いた。

やがてドアが開き、彼は壁に挟まれた奇妙な状態から解放された。

「一体、突然やってきてどういうことですか?レディ」

彼はれんがの粉がいっぱいついた服をはらってため息をついた。

早くお金をもらって首都から出る計画ばかり頭の中に浮かんだ私は、急いで言葉を吐く。

「君は私のお金さえくれればいい」

「とりあえずお座りください。座って話を交わしてもいいんじゃないですか?」

「いや、私には時間がない・・」

「手が・・・こないだのように震えておられます」

その言葉で自分の指先を見ると、ぶるぶると震えていた。

__興奮しすぎた!

それを自覚し、首の後ろが冷や汗で湿っていることに気が付いた。

怒りが収まったところに、再び恐怖がわいてきた。

「ドアの鍵をかけます。お座りください」

もう一度席を勧めるヴィンターの言葉に、私は急ぎ足でソファに向かい座った。

向かい側に座ったヴィンターは手を二回振り、ガチャガチャとどっからか、鍵のかかる音が聞こえた。

「もうお話しても大丈夫です」

すべて準備が整うと、ヴィンターは優しく私に促した。

泣きそうになり、彼にすべてを投げ出したいという弱い気持ちに襲われた。

しかし、私は辛うじてそれを抑え、ゆっくりと口を開いた。

「大したことではない。ただ、買うべきものが・・ちょっとあるんだ」

「公爵邸から逃げるのですか?」

「淡白な関係」とばかり思っていた彼の本音を聞いた後、「もしかしたら、彼は私の脱出計画を台無しにするかもしれない」という気がした。

過度な妄想というのはわかるけど、一度経験してみたからね。

「・・・・どこへ行くのですか?お手伝いします」

しかし、ヴィンターは意外と正常に話した。

しばらく驚いた目で彼を眺めていた私は、その言葉にゆっくりと理性を取り戻した。

「・・・鏡の欠片はちゃんと保管してるか?」

逃亡も逃亡だったが、突き詰めてみれば彼に言いたいことが多かった。

返事の代わりに、私の問いにヴィンターは短く答えた。

「安全なところに保管しておきました」

「突然だったのに、頼みを聞いてくれてありがとう。それも返して欲しい」

「鏡の欠片を・・ですか?」

イヴォンヌの洗脳は思ったより強力だった。

邸宅の外にいるヴィンターに任せた方がいいと判断したが、彼の正体をすでにわかっているような彼女だったから、考えが変わった。

「うん、その鏡の欠片、返して。私が持っているよ」

「ダメです」

「なぜ?」

「レディーが持っていていいものではないです。それは危険すぎます」

「しかし・・・」

「ソレイルから持ってきたんですか?」

渡せないというヴィンターの言葉に反論しようとした私は、問い詰める声に渋々頷いた。

「一体どうして持ってきたと今まで言わなかったのですか?

 あのアーティファクトがどれだけ危険なのかあの時一緒に見て・・・!」

怒りをこらえるヴィンターの目つきが厳しくなった。

「私もそれがそんなに怖いものだとは全く知らなかったと」

システムが与えた補償にすぎないのに、なんとなく問題を起こしてひどい目に合った子になった気がした。

「あなた、もしかして・・真実の鏡が何かわかる?」

「真実の鏡?それをあなたがどうやって・・」

念の為探り当ててよかった。よく知っているような彼の姿に私はさらに尋ねた。

「それは一体なんなの?どこにあるの?」

「それは・・・ここで言うことではありません」

困惑した様子で私を眺めていたヴィンターが首を横に振った。

そして突然彼は立ち上がり、

「少々、お付き合いいただけますか?」

「お金と欠片を渡して、どこにあるかだけ話して。時間が・・・」

「お金も彫刻もその中に置いてあるんです」

私はぼんやりと彼を眺め、ゆっくりと立ち上がった。

秘密のスペースに入っている方が安心できるような気がした。

〈SYSTEM〉隠しクエスト発生!

魔法使いの秘密の空間に招待されました。入ってみますか?

ご褒美:わからない何か

[受諾/拒絶]

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