もう一度、光の中へ_84-87 外伝3-2[※ネタバレあり]
慌ただしく準備してきた継承式は目の前に迫っていた。
計画されていた半年を満たして完成したわけだ。
たくさんお気品の中で最も目立っていたのは、今や次期皇帝になるイシスお兄様の姿だった。
「記念コインにお兄様の姿を刻めば、みんな欲しくて仕方がないと思います」
私がそう言うと、兄は照れ臭そうに笑ってみせた。
もう20代後半になった彼だったが、私の称賛に純粋に喜ぶ姿そのままだった。
「イシス、あなたが私たちの下に来てくれたのは、まさに神の祝福だとしか思えない」
父は穏やかに笑いながら言った。母もうなずいた。
私と両親だけではなかった。長い間、兄の側で見守ってきた年配の侍従長も一緒にいた。
「イシス殿下こそ、光の神様が我が帝国に与えてくれた最大の恩寵です」
喜んでいた私は、侍従長の言葉にびくっとしてしまった。
突然ルーン様の話が出たからだ。
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