75-77_悪役のエンディングは死のみ ネタバレ

目を開けると、私たちは太陽の光が降り注ぐ灼熱の砂漠の真ん中に立っていた。

ものすごい熱風が吹きすさんだ。

「あそこは・・・」

遠い砂の山の向こうのかげろうが立ち上がる間から、かすかに建物の姿が見えた。

皇太子の言葉が事実だった。

「太陽が熱い・・・」

慌ててあっぷあっぷしてると、皇太子が黙々と私の頭に彼がしていた真っ赤なマントを巻いてくれた。

猛烈な太陽の下で、彼のハンサムな顔だけが丸見えだった。

「殿下は?」

「いいよ。砂漠は・・昼が短い」

戦争中でもこんな砂漠は経験しているらしく、彼が私を優先する行動に妙な気分になった。

神殿を目の前にして最後の砂丘の頂上に登った時、体がだるさの限界を訴えた。

「はっ・・はぁっ・・・ちょっと待ってください」

私は膝をついて浅く喘いだ。

目的地を目の前にしているが、息切れした状態では何も見えなかった。

カリストは私の要求に黙って待っていた。

しばらくして、荒い息が治った頃、私は彼に聞いた。

「どうして、何も聞かないんですか?」

「何を?」

「まぁ、あれこれ」

皇太子の性格なら、当然私を叱ることができるだろう。

毒を飲んだのはなぜなのか、ここはなぜ来たのか、侯爵とはどんな関係なのか・・

何も産めない真っ赤な目を見ることができず、私は荒野に目を伏せた。

「都に行ったのなら、私の話を聞いていたでしょう?」

「ああ、公爵の養女が実の娘を殴って家でしたことか?」

「何だって?」

「小公爵が目を真っ赤にして君を探していた」

その言葉に自然と眉をひそめた。

嫌らしいやつ!その屈辱を経験してもまだ、私に何を望んでいるんだ!

身震いしていた頃・・

「気にしないでやりたいことをやりなさい。魔物を捕まえたいなら捕まえ、レイラを叩き殺したければ殺す」

「・・・・」

「そばにいさせてくれよ」

皇太子が発した言葉に私は彼を見た。

「私は殿下がなぜこうしていらっしゃるのかわかりません」

白昼でも真っ赤な好感度ゲージバーが強烈に色を放っていた。

成人式では全ての感情の片鱗を整理したと思った。

ハードモードが終わって、もう残っているのはノーマルモードのヒロインのためのストーリーだけなのに、彼はなぜ・・・

皇太子が顔を歪めた。

「あなたはそんなの・・知らなくてもいい。

 君にとって重要なものはもうそんなことではないだろう」

「・・・」

「結局、何の助けものなく、勝手に公爵邸を抜け出した。あなたは」

どうやってわかったのか分からないが、彼が言い当てた。

一時、男主人公たちの一人が私を助けてくれると思い、好感度数値を絶対的な脱出指標と考えた。

しかし、もはや好感度も脱出も全て水の泡となった。

目的も、生き残る理由も消えた私にとってもう大事なことは・・・・

・・・もう私に大事なことは何だろうか

ふとそんな想いにふけった時、

「大切なことは、あなたがしようとすること、すなわち私がしようとすることだよ」

カリストが明確に語った。

「私に何ができると思っているんですか?」

「なんでも。死んだレイラたちを起こして、世界征服をしようというのか?」

彼が茶目っ気たっぷりの声で聞き返した。

依然として見知らぬ目で彼を見た。

「殿下は皇太子殿下でしょう?

 無血な皇帝になりたがっていたではないですか」

「皇太子なんて辞めればいいじゃないか。いっそのこと、あなたが帝国を占領して工程になるのも悪くない」

「冗談じゃないよ・・」

「そばにいるのもダメかな?」

彼は私の言葉を切って尋ねた。

先ほど船で見た苛だたしい顔。

いつも余裕が溢れる彼の顔はいつの間にか切迫した状態だった。

カリストは洗脳されてない!

私はその事実を一つだけ繰り返してゆっくり頷いた。

許諾だった。

そしてやっと彼がまた余裕を取り戻して笑った。

殺したと思っていた心臓がまた生きて鼓動を始めた。

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