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熱に浮かされ

コミナティ筋注の三回目が終わった。

案の定39度近い発熱、嘔吐、下痢、頭痛のオンパレードで、解熱剤を使わないわけにはいかなかった。血を吐いているからなるべく使いたくなかったんだけど。

この文章を書いている今も体全体の関節が痛い。それにも関わらず記録を残しているのは、とめどなく色んな考えが頭を駆け巡っているからだと思う。

思えば、昔から天井を眺めることが多かった。小さい頃から体が弱く、しょっちゅう熱を出したり吐いたりしていた。季節の変わり目や親の転勤の発表の季節になると、クラクラしていた気がする。茶色い木の板は顔に見える模様が怖かったけど、自分の王国にも見えたりした。当時は自分の空想に逃げるしかなかった。熱が出た時は、母が必ずグレープフルーツゼリーを買ってくれた。いつも厳しい母が、熱が出た時は優しく接してくれた。天井や病院といった景色の中で、黄金に輝くゼリーは宝石のようだった。口の中に入れると、ほろ苦さと酸っぱさに目が覚めるようだった。

なんでこんなことを思い出しているのだろう。どうやら熱で記憶の引き出しのネジが緩んだみたいだ。昔からケアされることが多かったり、転校続きでコミュニティの構築に興味を持たざるを得なかったんだなと思う。ついつい、どんなことも仕事に考えてしまう。お金は出ないけれど、職場に籍を置いている自分が時々馬鹿らしくなる。

性被害を受けて3年ほど経つ。最近まで、心の底から「これをやりたい」と思えることがなかった。強迫的に何かをやろうとしていた。取り戻したい一心で、理想と現実の乖離に涙が止まらなくなったこともあった。

ワクチンの副反応で体調が悪いなか、あれをしたいこれをしたいという欲望が芽生えるのを感じる。生活の些細なことだけれど、セルフネグレクトから抜け出す兆しが見えたような気がする。

38.4度。

薬を飲むタイミングが遅かっただろうか。体の中に燃えるような灯火を感じる。熱のせいで体が熱いだけなんだけどさ。体の置き場所に困るくらい辛いけど、生きてるなって実感する。

一眠りしよう。まどろみに身を任せよう。起きた時には少しだけ前向きになっていますように。

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