くちなしの香り
くちなしの花が好きだ。甘ったるく芳醇な香りに、真っ白でつやつやなウェディングドレスみたいなたっぷりの花びら。すぐ茶色くなって萎んでしまうのだけど、そのささやかな時間にすごく幸福を感じるのだった。
香水で同じような香りがないかずっと探しつづけている。あの甘い香りは再現できても、その中にある切ないきゅっとしたものが足りないのだ。それは自然の中で咲いている瑞々しさなのだろう。
祖母の家には、くちなしの花がある。わたしの記憶にある祖母の家は、いつもくちなしの花が満開に咲いている。会いたいなあ。記憶の中の香りがふわっと甦る気がした。
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