爪を塗るということ。

私の爪は365日中、おそらく364日ぐらいの割合で色が付いている。
これは今に始まったことではなく、自分の記憶を遡ってみても10年ほど同じ割合だと思う。
数年前からジェルネイルを辞め、セルフネイルに移行したので家は様々なポリッシュとネイル用品で溢れている。デパコスブランドからドラッグストアで買えるもの、100円ショップのものまで、多分50本ぐらい、怖いので数えませんが。

数年前、転職活動に疲れてふらっとバイトしてみたCDショップはネイルが禁止だったため出勤初日に女性社員に「このお店は御年輩のお客様も来るのでネイルは取ってきてね」と言われた。内心「レジにいた店員の爪なんて誰も見てないやろ」と思いつつも社内規定だったので次の休日にジェルネイルを除去した。とは言いつつも自分の素爪がどうにも気に食わない私はただひたすらにベースコートと他人からは目視出来ないほどのピンクのマニキュアにトップコートを重ねつやつやの爪で働き続けた。あとはちょっとした手術を受け入院したときの1週間がおそらく大人になってからの素爪最長記録。

先日、剥がれかけたネイルに除光液を含ませたコットンを貼り付けているとき、いつから私は自分の爪に色を塗っているのだろうと思い返した。自分の記憶では小学生だった。母と100円ショップに行くたびに100円のマニキュアを買って貰っていたけれど、母はあまりそういうことに興味が無いタイプなので「あんまり塗りすぎると爪が息出来なくなるから良くないよ」と言われていた。それでも私はちまちまと100円ショップのマニキュアを集め、当時購読していた小学生女子向け雑誌のネイル特集を大切に保管していたことを覚えている。そんな小学3年生だったか4年生だったかの頃、私は休日に前述の雑誌に載っていた水玉ネイルというものに挑戦していた。100円の真っ赤なマニキュアを塗り、爪楊枝の丸い部分で同じく100円の真っ白なマニキュアを取り上から水玉に模様付ける、良く言えばミニー、でも10歳そこらの女児のテクニックでは毒キノコのようになってしまうネイル。そんな毒キノコネイルでも10歳の私からすれば超大作で、上手く出来たと大満足だった。
今ではこのためにマニキュアを塗ったのかさすがに記憶は残っていないが、爪を水玉にした次の日私は美容室にいた。当時は母と同じ美容院に通っており、その日は私と時間差で母もその美容院で施術を受ける予定になっていた。美容院で椅子に座ると、美容師さんが開口一番「爪可愛いね~!」と褒めてくれた。小学生女児が真っ赤な爪で来店すればどの大人も気付く。当たり前に。小学生だった私はお姉さんの美容師さんに褒められ、嬉しいような恥ずかしいような気持ちになったのを覚えている。その後続けて「お母さんにやってもらったの?」と聞かれた。私が小さな声で「自分でやりました」と答えると大袈裟すぎるほどのリアクションで「え~!!!!すごい!!!上手!!!」と褒めてくれた。そんな褒めて貰ったにも関わらずどう返せば分からないままニヤニヤして終わったように思う。何と言っても10歳なので。その後来店した母と入れ違いで1人電車で帰路に着き、夕方帰ってきた母が開口一番「○○さん(担当美容師さん)が爪めっっっちゃ褒めてたよ!ほんまに○○ちゃん(私)がやったんですか?!すごい!って~」と言ってくれた。ちなみに母は常に私がちまちまとこういうことをしていたので慣れており「またやってるわ~」ぐらいで特にリアクションはなかった(笑)たったこれだけのこと、でもこれがすごくすごくすごく嬉しくて未だに記憶に残っている。

そこから20年ほど経ち大人になった今も、色の付いた爪で会社のパソコンを打ち、スマホをスクロールし、車を運転し、ご飯を作り、お酒を飲み、日々の生活をこなし、そして好きなアイドルの団扇を持っている。私がネイルを塗るという行為は日々事務的なルーティンのようになっているが、ルーティンだからこそ、この習慣が無くなることは無いと思う。楽しいときや嬉しいとき幸せなときはもちろん、疲れたときも嫌なときも悲しいときもどうしようもなく空しくなるときも、私の爪は必ず綺麗な色をしているので。絶対に。それだけで勝ってる。
自分がその時の気分で自分が一番見るであろう部位に色を付けるという作業がとても好き。コンサートの前にメンバーカラーのネイルに変えるのも大好き。お守りとかそんな大それたことではなく、多分体育祭前に気合を入れる女子高生と同じマインドだと思う(厚かましい)。明日がとんでもなく楽しい1日になるぞという高揚感を高めてくれる。
なのでWESTVで濵ちゃんが曲中(ホメチギリスト)、観客へ向かって放った「マニキュア塗ってきたやろ♡」にものすごくロマンを感じてしまったんですよね!!!!!その!あなたが女の子のマニキュアへ抱いている特別感!!!大正解!!!と。爪に色を付けるという、さして何の意味もなく全てが自己満足で完結する行為を、他人が肯定してくれることの素晴らしさ。これこそ大袈裟ですが。水玉ネイルを褒めて貰えた10歳の私の記憶と一緒に、この濵ちゃんの言葉もずっと記憶に留めて置きたいな。
モテネイルもオフィスネイルも可愛いけど、私はお婆ちゃんになっても赤もピンクも青も紫も、黒も緑も黄色もオレンジもキラキラもギラギラもごちゃ混ぜにして自分で自分の機嫌を取り続けてゆきたいと思う。
バ~~~ッと書きたくなったから書きましたが自分でもなんの話か分かりません。

おわり。


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