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外のトイレ

途中から,僕の実家は寺になった。
(正しくは寺の横に家を建ててもらってそこに住んでいた)

小さい頃は,父方の祖父母のところに泊まりに行くと,寺の本堂が寝床だった。

トイレに行き,本堂の奥まで進み,布団に入る。

あのとき,大きな大仏の前を通るのが少し怖かった。

ところで,古い寺だからなのか,トイレが外にあった。

家を建ててもらってから使用することはなくなったが,あれはあれで中々面白い体験だった。

外のトイレと言っても,壁と流れていく先があるだけ。

そう,ただのコンクリートの壁だ。

4人の祖父母の中で,父方の祖父が最初に亡くなった。

僕が中3になる前のことだったと思う。

初めて,身近な人の死を体験した。

祖父はいい意味でふざけた人だった。

小学1年生の僕にタバコを咥えさせたりしていた。

間違えて食べてしまったらどうするんだと,母が怒っていた。

寺の住職のための,つまり祖父のための葬式は壮大なものだった。

10人以上の僧侶が同時にお経を唱えたときは,不謹慎かもしれないが,圧巻だった。

そんな僕も歳を重ね,大学に行くことになった。

京都に行くことが決定してから,数日後。

久しぶりに外のトイレで用を足していると,いつの間にか祖父が横にいた。

祖父も用を足していた。

いや,いるはずがない。

祖父は数年前に亡くなっている。

しかし,そんなことはどうでもよかった。

祖父と話をした。

短い会話だけど,今でもしっかり覚えている。

「どこに行くんや」

「京都に行く」

「そうか,頑張れよ」

左を向くと,祖父が笑顔で僕を見てそう言った。

目を覚ますと,涙が流れていた。

あまりにもリアルだったから,驚いた。

ベッドから起きて,階段を降りてリビングに行き,両親に夢の話をした。

「親父も応援してくれてるんやぞ」

その言葉で,とても温かい気持ちになったのを,今でも覚えている。

全然文字数が足りないけど,そのままリリースします。笑

#2000字のホラー


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