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汁を出すには単勝か馬単か

【馬単という革命】


馬券の基本は単勝である。
自分の本命馬が勝った瞬間に払い戻しが確定する極めてシンプルな馬券だ。その馬の勝利だけを願うという点で購入者の熱量は高く、的中した時の喜びは大きい。Twitter仲間の表現を借りると汁が出るというやつだ。各々どういうスタイルで競馬を観ているかにも左右されるので一概に金額の大小だけで汁の噴出量が変わるとは言えないのだが、単勝を万単位で握るファン(以下マンバリストと呼ぶ)はやはり大量の汁を求めている。かつてマンバリストが汁を出す馬券の選択肢は単勝しかなかった。ところが2002年に馬単という馬券が登場する。豆券ファンには全く関係の無い話だが、マンバリスト達には革命が起きた。馬単全通りを資金分配する事で仮想単勝馬券を作り出す事が可能になったのである。かくして単勝と馬単どちらの方が汁を出せるかという選択がマンバリストの馬券テクニックとなった。

どんなソフトでも良いが例えばvanなら下の画像のような感じで予算を999,900円にして瞬時に馬単合成オッズを出す事ができる。100万近い勝負はしなくとも、1万円の単勝ドカンが選択肢にある人は締切寸前に資金分配が出来るこの機能は必須となる。何かしら対応するソフトは入れておくべきだろう。

馬券を全て選択→資金分配→予算入力→配当均等型の順に指定すると配当金が均一になるよう割り振りができる。

【配当の歪みを生むのは個性派】


では、この単勝と馬単合成に配当差が生まれやすいのはどんな時かというとファンが汁を求めやすい馬が走る時。即ち個性派スターホースがGIレースを走る時である。ここで現役屈指の個性派ソダシとメイケイエールに登場願おう。先ほどの手順で馬単合成オッズを作り、単勝オッズと比較してみる。

単勝ー馬単合成の比較

ソダシは白毛馬の勝利、メイケイエールも見せ場たっぷりの競馬をした事で阪神JFで人気が定着したと考えて3歳以降の比較とした。ソダシに関しては秋華賞大敗からのダート2戦で、メイケイエールは池添騎手が騎乗するようになってからのGIで汁が求められている事がわかる。この2頭に関しての汁は復活を願うファンの気持ちである。また、汁が求められる背景にはもう一つ条件があって混戦のGIであるという事も挙げられるだろう。ソダシのダート戦はその要素も加わっている。逆にメイケイエールの高松宮記念はレシステンシアが居たにも関わらず配当にこれだけの開きが見られた。ファンの間で汁指数が高いのはメイケイエールの方かもしれない。個性派の混戦パターンの例としては今年の宝塚記念を挙げておきたい。上位人気馬の単勝ー馬単合成オッズ比較はこのようになる。

2022年宝塚記念

ご覧の通り、ファンはパンサラッサに汁を求めている事が一目瞭然である。この日はTwitterでお世話になっているようぞう氏とご一緒させていただいたが「ようぞうさん、今日パンサラッサにぶち込むなら馬単で配分ですよ。」という話をした記憶がある。今思えば、はるばる遠方から現地までパンサラッサという文字が入った馬券を買いに来られた方に野暮な話をしたものだと猛省している。この場を借りてお詫び申し上げたい。そしてこの宝塚記念の結果はというと1着がタイトルホルダーで2着はヒシイグアスであった。先程のオッズ表を確認すると、この2頭が馬単合成で支持されている事がわかる。賢明な読者の方はお気付きかもしれないが、長々と話してきたこの馬単合成作戦の着地点は真逆の方向。儲けようと思うなら馬単合成オッズが高い時は買うなである。

ソダシがダートで新味を出すかもしれない。マイルならダートでもやるんじゃないか。メイケイエールも池添さんなら・・・パンサラッサも今なら日本でもGIを・・・否っ!!全て願望が強すぎる!根拠として弱く、汁への欲にまみれた単勝はやはり当たらんのである。

馬券を制するのは木暮の目を持つ者

ホントはみんな経験から知っている。変化球の単勝が沸いた時に馬は走らないことを。だけどココで汁を出したい気持ちが抑えられない。中にはわかっているが気持ちよく死にたいという猛者も一定数存在する。往々にしてこの手の馬が走るのは汁のしの字も出ていない時。例えば2018年安田記念を制した個性派モズアスコット。「まあ、強いし無くはないけど重賞勝ってないしねえ」「オープンから連闘?へえ~。でも掲示板くらいには来そうだね。」コレなのだ!レース前のこの空気感。1ミリも汁が出ていないこの感じ。この安田記念、モズアスコットの単勝は15.7倍。そして馬単合成オッズは13.3倍であった。汁を求めるロマン派ではなく、理詰めの玄人たちがイケると馬単で一撃回収を狙っていたのである。

個性派スターホースが出て来たら馬単合成オッズを作り、単勝が売れていなければドカン。これが真の単馬券プロである。ただ、そのGIはアナタ以外の同行者が誰も馬券を獲っていないパターンが濃厚となる。馬券的中の喜びは共有されることなく、競馬帰りの飲み代は全てアナタ持ちになる事は覚悟しておこう。

おしまい。


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