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さんぽ綴る

ご近所探検

ひるどき、隣のうどん屋さんの匂いがしてくる。

畑に生けるお花を探そうと足を運ぶとほんのりめんつゆのような、うどんのつゆのいい匂いがしてくる。
まるでお花の香りを嗅ぐように、すーーっと深呼吸して体いっぱいにうどん屋さんからはみ出す空気を吸い込む。
寝てしまえそうないい匂い。
甘い感じとしょっぱい感じ。
今日は安生のうどんにしようかな。いや昨日つくったかぼちゃサラダが残ってる。

うどんの匂いに誘われて、そのまま商店街を東に歩き出す。

うどんのにおいがしたと思ったら、
それと同時くらいにケチャップの匂いがやってきた。
喫茶エトワール。
なになに、今日の日替わりメニューは"ビビンバ丼"。
毎日変わる外のホワイトボードの日替わり定食を見て帰路に着くのが楽しみでもある。
なんだかんだ朝のエトワールしか行ったことないけれど、
いつもメニューで見る、ナポリタンとハンバーグ、目玉焼きのランチセットが食欲をそそる。
ナポリタンつくってるんかな。

宮脇刃物店さん。
いつも扉越しに、首の向きが変わるまで私がガン見してしまう店主さん。
刃物を研いでい椅子にたり、座って足を伸ばしてぼーっと座っていたり。
いつか話しかけてみたい。
あれ、今日はストーブの上にやかんがおかれたまま、顔が見えない。お昼ご飯を食べに中に入っているのかな。

世界のパン、ヤマザキという1番上が弧を描いた形の看板が目を引く。
和菓子の寿庵。
もちもちした感じの字体でつきたてのお餅あります、の文字。
いつもお餅が見つけられず、見つけても歩くスピードに首が追いつかず素通りしてしまうのだが、昨日に引き続き柏餅が!!
あのもちもちとした字の上に掲示された柏もちの文字。
中からはお店の人の会話がきこえてくる。

なんなんだここは、
なんともいえないこじんまりさと斜めに角度をつけた板チョコレートのような入り口のドア。
喫茶「庭」である。
少し破れたしっかりとした明朝体の"庭"の暖簾。
立て看板もまだあって、表には生き生きと顔を出す植木鉢もあるから、お店はやっていないけど、建物自体は健在なのだろう。
通るたびに謎が深まる、奉還町の赤い箱。

パサージュへ向かう道。
ついこの間までよく通ったのに、パサージュが閉店してからめっきり通らなくなった。
角っこにはあの黄色の謎の石と、赤い花の咲く植木鉢が2つ、ちょこんと。
シャッターが閉じて無機質な佇まいの端っこに、そっと人の息遣いが聞こえてくるのが安心する。
ときどきシャッターが開いておばあちゃん達の井戸端会議場になるこの角っこ。いつか会議に参加したい。

今日の朝藤田くんが見つけた、土と道が溶け出している植木鉢。

いい感じにずれていて、濃い青のタイルがなんとなく傾いてる建物。
茶色の真っ直ぐに揃った新しいとたん的なのに変わってしまった。
崩れる心配ちょっとなくなったから安心だけど、どこか寂しい。

お買い物の散歩道

ちょっと赤の時間が長すぎる信号を渡ると、アーケードが覆う本格的な「お買い物の散歩道」が登場。

ピザのワゴンのピザ食べてる途中のおじさん2人と目合っちゃったり、
めっちゃおしゃれさんでカラフルな服着た2人組の仲良さそうなおばあちゃんいたり、

商店街の入り口のところのベンチ、ではなく隣の長い箱みたいなところに腰掛けて団欒してるおばあちゃん達とか、

丸みのある字体の看板、手書きか機械か微妙なラインを攻めてくるのよ。

なぜかウーパールーパー売ってる花屋さんとかあったりする。
ウーパールーパーの卵も売ってた。

歩くたびに発見、というかほっこりポイントがあるのがこの商店街の好きなところ。

駅に向かって横断歩道を渡るときは、左の方に薄ーく広がる山が見えるのがいい。
帰るときは右に、オレンジとピンクと水色を水で薄めて塗っていったような夕空が広がる。
ときどき、歩いても歩いても届きそうもない、夕焼けの濃い方に向かって体の向きを変えてみたりする。

表通りから外れて裏道に歩き出す。
ちょっと下の方に目線を変えて、歩くスピードを遅くしたくなる。
目を凝らして、そこに住む人々の小さな営みを発見したくなる。
そんな裏道。

ただいままで

お昼ごはんの時間帯を過ぎた商店街。
さっきよりちょっともったりした熱い空気が、体を通り抜けずに滞る。

とりいくぐるの目の前にあるのは郵便局。
いろんな人が訪れる。
自転車の音が聞こえてきた、と思ったら郵便局のお客さん。
ピポ♪というATMかなんかの音が心地よい感じがしてくる。ピポ♪
目の前が郵便局屋さんというのもなんかいい、なんかいいとはいうのはなんでだろ。
とりいの赤と郵便局の赤(正式にはオレンジ)がなんだかいい感じなのだ。

斜め前の洋服屋さん
いつも誰かしら来てて団欒してる
掃除してるとときどき上から眺めたりして、挨拶したり。
ほなな、ありがとうって言っていろんな人が来て、また来て、
ありがとう、っていってまた帰る。

なんか、こういう、どこにでもあるような、でもここにしかないようなふふふとニヤニヤしてしまう日常。

明日もまた歩きに行こうか。

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