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#それでもスポーツで生きていく・#5

スポーツ界の『生きづらさ』と自立への道筋

連載5回目。ここまで、日本スポーツ界の現状把握的な文脈で書いてきています。

今回でいったん一段落おき、そのあとでスポーツ業界の自立(そして僕自身の自立)のヒントとなる投稿を増やしていく考えでいます。

≪ 日本スポーツの自立を阻む5つの要因 ≫

1.日本のスポーツ界は本当に「稼げません」
2.「やりがい搾取」が横行しています
3.組織が上意下達の「ピラミッド型」です
4.「経営上層部がサロン化」しています
5.現場からの「叩き上げ経営トップがいません」

今日は「5.」の、「叩き上げ経営トップがいません」というテーマで書いていきます。

人の入れ替わりが激しいスポーツ業界

最近は、Jリーグチェアマンの村井満氏がリクルート出身であったり、楽天の三木谷浩史氏が、東北楽天ゴールデンイーグルス・ヴィッセル神戸のオーナーであるように、バリバリのビジネスパーソンがスポーツ界にお越しになり、手腕を発揮される流れがあります。

そして昨夜電撃ニュースが、noteを通じてサッカー界に吹き荒れたのですが、メルカリ社が鹿島アントラーズの筆頭株主に。ITに強い会社がオーナーシップを握る流れは今後も続いていくのではないでしょうか。

経営トップだけでなく、管理層や実務層に至るまで、スポーツ業界外で専門の業務スキルを培ってきた方々が、スポーツ業界の要職につくケースも増えてきています。

こうなってきたのも、ここ5年~10年くらいの流れで、それまでは、親会社から出向で来られた方や、関連会社から転職された方、新卒ですと大学などで学連の経験がある方などが、スポーツ業界に来られる流れが以前はありました。

同じ方が10~20年も勤めあげているケースは少数派で、多くは似たような業種を転々とし、キャリアを作るケースのほうが多い気がします。

【参考】以前書いた投稿に登場した、10年前の職場の同僚4人。20名はいたその旧職場に当時から今も継続して務めているのは、もう2名だけ。それが現実。

幅広い領域を持つスポーツ業界

自分は、たまたまプロスポーツの業界歴が人生で一番長いのですが、スポーツ界とひとことで言っても、結構拡がりある世界です。上の表が少し見えにくいので、次の表に分かりやすく纏めます。

大きくスポーツ界には「する・みる・ささえる」という3つの大分類があることを、以前の投稿でも書きました。

スポーツ用品業界のように、100年以上の歴史を持つ分野もあり、比較的安定的な経営をされている分野もあります。( 昨今は用品業界においても、スポーツの普及活動を事業化するなど多角化している。 )

フィットネスクラブなどのスポーツ施設関連のお仕事も、トレーナーやインストラクターのお仕事も、多くは不安定な基盤のなか、生活を強いられている方が多い業界だったりします。

スポーツ界の離職率はどうなのか?

下記の表は厚生労働省が平成29年に発表した産業別の入職率・離職率のデータです。

実のところこの分類に「スポーツ業」という分野は存在せず「サービス業(他に分類されないもの)」という項目に該当するケースが多いものと思われます。

「サービス業(他…)」(18.1%)以外に目をやると、「宿泊業・飲食業」(30.0%)が離職率1位。2位が「生活関連サービス業、娯楽業」(22.1%)。

スポーツ界のなかでは、東京ドームのように、宿泊業や飲食業、娯楽業の複合事業に取り組んでいる企業体もあります。( スポーツ業界内では、国内髄一のスポーツコンプレックス事業と言われています。)

そして、スポーツ庁も、スポーツ産業の生き残りの指針として、多産業連携を推進しています。

「モノ消費からコト消費」という時代転換の流れに乗る面白味ある未来像ではありますが、総じてサービス業ということで働く環境としては非常に厳しい、と、離職率のデータからも想像できます。

「小規模複合事業体」を誰が営むのか

※「小規模複合事業体」=マイクロコングロマリット

実のところスポーツ事業だけでも、上記の表のような専門職の融合体である組織に、今後は多業種連携の動きも推進される流れがやってくるのです。

経営スキルの高いビジネスパーソンが業界に来られるようになったことは歓迎されることではありますが、スポーツ業界の現場で、経験を積み重ねてきた「叩き上げの経営者」が誕生しにくい環境になりつつあることも確かです。

スポーツ組織特有の機能を周知する必要性も

例えば、選手強化関係では、スポーツ医療、スポーツ科学関係のサポートチームを組織する必要性があります。

( 参照 : 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー・テキストなどを参考に、筆者にて作成した講義資料より )

ここまで専門家チームを揃えきっているチームや競技は限られるかもしれませんが、かなり専門性の高いスタッフの協業により、スポーツ組織は成り立っています。

人の入れ替わりが激しい世界で生き抜く

末端業務のスキル一本で、スポーツ業界を生き抜くにはたいへん困難な時代がやって来ています。また、業界自体も好きなスポーツをただやっている」だけの事業では成り立ちにくくなってきています。

こうした時代の変化に対応できるような成長が、『#それでもスポーツで生きていく』ために求められる時代になってきている、というお話でした。

スポーツエッセイスト
岡田浩志

『みるスポーツ研究所』では、「それでも、スポーツで生きていく」皆さまの取り組みにもっと寄り添っていけるよう、随時サポートを受け付けております!