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見られ慣れている人

JJFで時々話題になる「他人の目」という話から派生して、だいぶ前のことですが思い出した話をひとつ。だいぶ前なのでもう時効かと思い。

何年も前、夫と入籍に向けて一緒に住み始め、今とは違う路線で通勤していた時、何でもない平日の朝。各停しか止まらない駅から、見たことある???ような男性が一人で乗ってきた。

特に顔も隠さず、ぱっと見シャツにチノパンのラフな服装で、気配消してすっと立っているけど、お肌の手入れのされ方など佇まいが明らかに一般人ではない。いい意味で隙がない感じ。思わず二度見する。

一瞬、余程疲れが溜まって幻覚を見ているのだろうかと思いかけるが、いやでも、すごく「あの人」っぽいのだが。。。某シリーズものの刑事ドラマに出てる俳優さん。背格好とか髪色とかこんなんだったかしら。と段々混乱してきて、一人で内心パニックに陥る。その日はたまたま夫はいなくて一人だったし、共有できる相手もいない。

周囲の人も気づいている雰囲気ではなく、極々自然に乗ってこられたので、この場所にこんな感じで、いるわけあるか・・・・??? 私の2メートル向こうに。狐につままれたようについじ・・・っと見てしまう。

視線に気づいたのか、ふとその方と目が合ってしまい、しまったと思いかけた瞬間、微かに目だけでふふっと笑いかけられた。つられて私もくすっと笑って返した。共犯者になったようでおかしかった。

その後私が先に降りてしまったのでどこまで行ったのか分からないけど、後で調べたら、乗車駅のあたりに稽古場?のようなものがあるらしかった。ではやはり本人だったのか。気持ちがザワザワしてきて、ふわふわした頭のまま同僚に聞いて貰ったら、それ絶対本物だよ、その見られ慣れた感じの反応が! いかにも!だよ!!と同僚のほうが食い気味に返してきて、やっぱそうですよね!!!と時間差で興奮してきゃあきゃあと盛り上がった。

同僚が言った「見られ慣れた」という言葉を聞いて、なるほどそうかもなと腑に落ちるところがあった。無遠慮な一般人がガン見してるのに(するつもりはなくても、吸い寄せられたというほうが近いのだが)、さり気なく微笑み返しするって心の余裕すごいな。見られる職業の人って実際こんな感じなのか、と、ほんの1分かそこらのニアミスで感動すら覚えてしまった。

翻って私は普段の仕事はほぼ9割裏方だし、プライベートでも発表会などで一応人前には出るものの、私を見ずに曲を聞いてくれ、と開き直るタイプで、見られることに慣れてるわけでも、好きなわけでもない。ド素人の私と見られる職業の人の違いとは。

この奇跡のニアミスに時々思いを馳せるうちに私もそれなりに歳を重ね、咀嚼してきた。単純に慣れてる、特別な人達 と括って完結しまうのは簡単だけど、下積み時代もあったはずで、経験値を上げた結果の「練り上げられた闘気オーラ」なんだろう。それも出す出さないを自分でコントロールしているかのように見える。

一般人のレベルに落とし込めることは何かと考えると、言葉はうまくないかもしれないが、見られることに対して腹を括るというか、覚悟とでも言おうか。そのようなものがあるかもと思う。たまに自分の動画撮られて後で見返すとギョッとすることあるが、その体たらくと比較すると、相当ぬかりなく見られ方を研究(意識的にではなくても)していそう。。

あくまで想像でしかないけれど、そんなことを思いました。
先日も演奏の動画を撮られて本当に色々酷かったので、いい年になって羞恥心なくなってきたとか言ってる場合じゃないなと、襟を正される思い。

全く余談ですが、前述の同僚に話したときに、同僚が、オーラ出しまくりの某俳優の方(電車の人とは別人)と高級ホテルですれ違ったときの話をしてくれて、

「TVで見てるときはどちらかというとアンチだったのに、思わず『ファンです』と話しかけてついていきたい衝動に駆られた」

と言っていた。よく芸能人はプライベートで気配を消すのがうまいと言われるけれど、その逆の破壊力たるや。そんな激しいオーラなら私もその場にいてぜひ浴びてみたかったと思います(笑)。

特にオチはありませんが、このへんでおしまい。

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