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ちょっと長めの自著紹介①

昨年[注:2019 年]、 
本書は日本教育事務学会より 
「研究奨励賞」をいただきました。 

ご検討いただきました関係者の皆様、 
ありがとうございました。

──自著紹介をしていく前に、 
客観的にも一定の評価を得ているという前提を 
確認させていただきました(笑)。 

まず、本書の構成を紹介いたします。

  序章 義務教育は無償、ではない!? 
   1章 こんなものまで学校指定品 
   2章 増えつづける補助教材 
   3章 だれが消耗品を用意するのか 
  資料編 学校のモノとコト・私費負担カレンダー 
   4章 部活動のつみかさなる負担 
   5章 学校給食は福祉か教育か 
   6章 有無をいわさぬ旅行と行事 
  終章 「受益者負担」は正当か

あ、大事な宣伝を忘れるところでした! 
あの内田良先生(名古屋大学准教授)が 
推薦文を書いてくださいました。 
詳細は、出版社かAmazonのページを
ご覧ください。 
[注:http://www.tarojiro.co.jp/voice/6017/?pro=5935] 


■隠れ教育費とはなにか 

教育費とは、 
教育にかかる費用のことです。 
本書では、その費用のなかから 
「学校指定品」として制服や
各種シューズ類など、 
「補助教材」としてドリルやワークなど、 
「消耗品」として紙類やファイルなどを 
【モノ】として挙げました(1章~3章)。 

また、後半では「部活動」や 
「学校給食」、「各種旅行や行事」などの 
【コト】にかかる費用を
挙げています(4章~6章)。 

これらの費用は、
学校関係者以外でも 
知られている一般的な教育費だろうと 
考える人も多いと思います。

「アルマーニの制服だと8万円……」 
「給食費は1食で2、300円でしょ!?」 
「教材だって『漢字ドリル:300円』 

とかっていうように知らせが届くよ」──、 
確かになんとなく想像がつきそうですし、 
調べれば分かることかもしれません。 

しかし、
あえて「隠れ」とタイトルを 
付けたことには理由があります。 

学齢期の子どもがいる家庭なら、 
よく知っているはずの教育費ですが、 
学校の【モノ】と【コト】に関して 
総合的にどれだけ払っているのか、 
それは妥当なのか 
という意識は薄いと考えました。 

また、事務職員の視点から 
見えている部分は実は限られていて、 
保護者の目線からも学校から言われるがままに 
惰性的に支払っているだろうという仮説のもと、 
『隠れ教育費』というタイトルを付けました。 

さらに本書では、 
具体的な場面ごとに保護者負担の「現状」、 
今に至る経緯と背景の「歴史」、
本来どうあるべきかという「理念」、 
解決に近づけていくためにとれる「対策」 
という4つの視点で 
隠れ教育費を解き明かしています 
(現状と対策を栁澤が、 
歴史と理念を福嶋が担当しています)。 

ここでは、 
事務職員が読む視点として、 
〈当たり前と思って 
負担してもらっていた学校の 
【モノ】と【コト】にかかる費用を 
見直すためのきっかけ〉を挙げておきます。 


■隠れ教育費の現状と対策 

例えば、「学校指定品」の 
体育館シューズを検討してみましょう。 
──と書くだけで、 
「体育館シューズってなに?」
という人もいます。 
「なんですかそれ」と書いたのは、 
本誌[注:『学校事務』]で 
おなじみの事務職員です。 

身近では 
当たり前とされている【モノ】や【コト】が、 
地域によっては通用しないんですよね。 

防災頭巾って全国的には少数派なの?? 
体操着がない地域って 
体育のときの服装はどうしているの?? 
など、埼玉県にいると 
逆にビックリする事例です。 

体育館シューズの話に戻しますと、 
わたしの身近では 
体育館に入るときは
体育館シューズに履き替えて、 
ほかは上履きを使用するのが一般的です。 

「ずっとそうだから」というのが 
大きな理由だと考えられます。 
当たり前を疑ってみましょう。 
これが解決策の第一歩です。 

ほかの地域では 
体育館シューズなるモノが不要なのに、 
本市ではどうして必要なのかを考えるのです。 
そして、体育主任や管理職と話してみます。 

おそらく 
「ずっとそうだから」という答えが 
返ってくるのではないでしょうか。 
また、保守派からは 
「『踏襲している』ということは 
『問題がない』ということです」 
という言葉が返ってくるかもしれません。 
それでは、 
改革派はどのように
立ち向かえばよいのでしょか。

「『問題がない』ではなく、 
『問題としてとらえようとしてない』だけ」 
と言いながら、
本書を手渡してみましょう(笑)。 

本校は今年度[注:2020年度]から
体育館シューズではなく、 
上履きを廃止にしました。

「体育館シューズと上履きって両方必要?」 
という発言から、 
メリットとデメリットを考えてみると 
分ける価値はそんなに高くないことが 
共通理解できました。

体育館で履き替える手間、 
教室に置いておくスペース、 
費用の問題などを総合的に判断し、 
昨年末に上履き廃止が決まりました。 
年明けから移行期間が始まり、 
基本的には体育館シューズ1足で 
過ごすことになっています。 

このように、現状を把握して 
誰かが解決策のきっかけを発議することで 
議論が生まれます。 

学校にかかるお金は、 
事務職員が積極的にアジャストしていき、 
費用面から切り込む「アジャスター」になって 
いくことが求められると考えています。 
                                                  (栁澤靖明) 

♯隠れ教育費 
♯学校指定品 
♯学校徴収金 
♯保護者負担金 
♯義務教育費無償

『学校事務』2020年7月号 
特別企画2「自著紹介『隠れ教育費 
──公立小中学校でかかるお金を徹底検証』 
/栁澤靖明・福嶋尚子」より許可を得て転載 
https://www.gakuji.co.jp/archive/book/02605-7-2020.html
--- 
http://www.tarojiro.co.jp/product/5935/

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