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サービス付き高齢者住宅~足が腫れて2倍になってしまった~


#医療施設 、老人保健施設からのサービス付き高齢者住宅へ
#毎日の下肢の洗浄と軟膏処置手法の違い
#処置に対する根拠を実践に生かす
#下肢挙上のヘルスプロモーション
#コンプライアンスを求める医療からの脱却

 現在2つのサービス付き高齢者住宅(以下=サ高住)で看護師の仕事に従事しながら、高齢者に看護を提供しています。
一つの施設は、小規模多機能併設されたサ高住です。
もう一つもサービス付き高齢者住宅ですが、訪問看護ステーションと介護サービスステーションを有するサ高住です。
 ある意味、参与観察をしながら働くという視点で仕事をしています。
設置主体が異なれば、入居者の看護必要度も違いますし、看護師の業務提供内容も違っています。しかしながら、看護師の視点で何が個々人の高齢者にとって必要な援助かを考え、実践することは同じです。設置主体と所属する訪問看護ステーションがあるなしの違いがあり、看護師としての実践が介護保険による診療報酬に直接反映されるか、されないかの違いだけ。つまり、どちらで看護師の知識と技術サービスを提供し実践しようが、私の賃金には一切関係もなく反映されません。
そう考えると、言われたことだけやっていればいいと考える看護師がいるのもわかる気がしています。指示されない限り動かない。やらない。そういった人がいるのも介護業界で働く人の中にいるも目の当たりにしています。

前置きはこれくらいにしておきます。

ケース紹介 

人となりと医療と介護の変遷


武道館 北の丸公園 ミツマタ 2019年


皮膚の正常な水分維持や細胞内の栄養と血液の交換が変化してしまったらどうなると思いますか?

自分の足が、ある日突然、象の足のようにどっしりとした重み、2倍の太さに腫れ上がり、歩けなくなってしまったら、病院に行くでしょう。

病院に行ったそのAさんは、腫れ上がった足の皮膚が弾け裂ける前に、足首や踵、足の甲に切開を入れられて、足がはち切れる事を予防してもらった。
私が出会ったとき、足が腫れはじめて1年3ヶ月経過。
病院での一次的な処置を終えて、退院後は老人保健施設に入居して、その施設内で1日2回微温湯で洗浄し続けていた。500mℓの微温湯で左右の足を洗い、切開創にはB軟膏、膝下全体にC軟膏塗り、腫れ上がった足の細胞と切開創から滲み出す体液を吸収するガーゼと包帯を巻き続けていた。

コンプライアンスを求められた医療


上野 恩賜公園 寒牡丹 2020年


医師は患者よりも専門知識があり、その専門的知識がある医師と患者との関係が、過去の患者指導面では問題となっている。
医師の支配に患者が服従する関係。
それをコンプライアンス/ノンコンプライアンスの関係という。
医師の指示を聞き入れず実践しない患者を、ノンコンプライアンスの状態と評価したりする。
「せっかく指導してるのに、何一つ指示に従わない患者」
「ベッドの上では、足を挙上しているように言っているのに、挙げないで過ごしているから回復の悪い患者」
そう評価されていたのだろうと、患者の口調から感じ取れた。

Aさんの語り


 医療施設に入院中、医師から
『「足を挙げて過ごしていれば(心臓より高い位置)半年で治ったのに」と言われた。』
と、ぼやいた。
その言葉を、私は耳にした。
Aさんにとっては、できる限り足を挙上していたのに、回復しないことを医師から、自己コントロールのできない患者と評価されていた。
そうした憤慨感情が胸中にあることを、文脈から私は感じた。

その話から、足を心臓より低い位置において過ごして、医師の指示に従わない患者だったと、医師が評価していたと思った。

上野 恩賜公園 寒牡丹 2020年

患者とは、医師の指示に従順で、行動が伴う人ばかりではない。

糖尿病で痩せたほうがいい。
標準体重に体重を落とす。

こんな指示を一度聞いて、体重を落とせる人が何%いるだろう。
医療施設から、老人保健施設に入所していたが、現在はサービス付き高齢者施設住に入居し、訪問看護を受けているAさん。

Aさんは高齢者(90歳代)
頭脳明晰、スポーツ大好き。ご自身もスポーツを続けていた方だ。
入居後は、朝食を召し上がったらいったんベッドに横になる。
昼食までは、ベッドにゴロゴロしながらうたたねをして過ごしている。
スポーツ好きで、テレビ観戦も好きなので、ゴルフやサッカーの試合、相撲、マラソンなどテレビ放送があるとその時間は観戦しているという生活スタイルで過ごしている。
ベッドに横たわっていれば、下肢を挙上して横になって休んでいる。

高齢者住宅入居後の下肢の処置


滋賀県 三井寺 しだれ桜 2022年


毎日、浴室のシャワーで下肢についた、軟膏や組織に付着している膿を洗い流し、水流と温熱刺激で血行の促進を図る。

傷からは、1日に600mlの水分が失われ、その水分には、タンパク質が含まれている。

なぜ、老人保健施設入所中の1年以上、流水で下肢の処置をしなかったのかが、不思議な気がしてならない。
なぜ一年以上、浴槽に浸かる入浴をさせなかったのだろう。
なぜ、傷に直接ボディソープの液体を塗ったくり、ペットボトル2本程度の微温等で、軟膏成分と傷口からの滲出物や膿を洗浄し血行促進が図れると思っていたのだろう。

創傷処置のガイドラインが推奨していることを、ことごとく逸脱する処置を続けていられたのかと、エビデンスを基礎看護学教育の根幹にしている思考過程との乖離をまざまざと見せつけられた。老人保健施設での処置伝達内容だった。

訪問看護ステーションでの対応


田んぼのあぜ道に咲く花とアマガエル 2匹 2021年


 ご一緒に仕事をしている人たちは、今回のAさんのケースに対しても、エビデンスを話し合い、手法を検討するなとの意見交換が活発に行える人たちで構成されている。
各々の看護実践の思いは、安全にしかも快適に、心ある看護を提供したいとする気持ちに満ち溢れている。
Aさんの下肢から染み出す浸出液をガーゼと包帯で吸収していた手法から、パットを用いて、くっつく包帯で一時的に覆い、その上から弾性包帯で固定する。
  下肢の血液循環の回復と促進のためには、シャワーを使い洗浄をする。
介護士さんとシャワー室の利用時間を調整することと、テレビ好きのAさんの鑑賞時間を伺いつつ、時間を決める。
時には、
『競馬の重賞レースが終わる4時以降がいい。』
というのを聞き入れて下肢の洗浄と軟膏塗布の処置時間を決定してる。
主体は誰か。
対等な関係性の中での、援助の組み立て方や手法を凝らし、入居時の下肢の浮腫み、周囲の計測結果から半分になっている。
範囲で考えれば、下肢全体から下肢の半分の面積に変化している。

Aさんの変化


東京国立博物館 庭園 春 2022年


入居時は、むくんだ足でのベッドから車椅子への移動や、体の自由が奪われたつらい状況での場所の移動も自分で車椅子を操縦して移動する気力もなかった。やってもらって当たり前的に、ふるまっていた。
足のむくみの回復とともに、心の持ちようも変化し、今では自分で車椅子を操縦して、食堂への行き来を行い、シャワーの時間になるとその場に自ら移動して、終われば自室までもとるようになっている。
『いつもありがと。感謝です。』
そんな言葉を、介護士にもかんごしにもかけてくれるAさん。
一日も早く、
『自分で車椅子を運転して、あんパンを買いに行く』
目標がかないますように~。

2023.1.25(水)
MILK
  


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