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サービス付き高齢者住宅入居~1週間のBさんの言動~

#入居1週間の80代利用者
#新しい環境因子のワーカー
#人となりを確認する作業
#No .と言ってみては、ワーカーの表情と発語を確認する

入居一週間のBさん


 結婚後30代で、ご主人を事故で亡くし、5人のお子さんを育て上げた。今は、両足が浮腫んでいて、常に弾性包帯を膝から下に巻いて、表在の静脈を圧迫し深部静脈への血流を増大させている。
入居前の在宅生活では、内服の管理や食事の準備を筋肉の維持を目標に、訪問看護師、訪問介護、訪問リハビリのサービス契約をして一人暮らしをしていた。一週間前に、サービス付き高齢者住宅に入居することで、24時間誰かの目が届く環境に身を置き、安心と安全を見守るケアサービスを受け、入浴サービスを受けたり、デイサービスや食事が3食とも提供される環境で、食生活を整えることを目標に入居している。
 Bさんとお話をすると、ご主人がなくなってからご自身が複数の子どもを立派に育てあげたと言う自負心のあらわれを、会話の中に垣間ることができる。その自負心があると同時に、子どもに世話になると、気遣いもあり、お互いに言いたいことを言い合って、けんかをするのも回避したいと思い、適度な距離感で生活できるのはサービス付き高齢者向け住宅に入居することだと思ったと言っていた。

福岡空港 2023年

血圧の再測定時の反応は『いや』

午前中の血圧測定データは、高めを示していたので、午後から再測定をすることをお伝えしていた。
午後4時(16時)にお部屋に伺い、
『血圧をもう一度測定しにきました』
と告げる。

Aさん
居室の椅子に腰掛けながら、お部屋の入り口に体を向けて、入室時の私と目が合った。

開口一番
『やだね』
と言う。
口調は、強くもなく弱くもなく。いつもの会話の時と同じ。

私は、Bさんのお顔を拝見して、
『あら、今朝の血圧が少した高めだったから、午後からくるとお約束してましたよ〜。』
『測定しましょ。』
と、Bさんの発した「やだね」の言葉にひるまず、いつも通りに声をかけた。

Bさんは
『うそ。嘘。ウソ~。』
と言って、私の顔を椅子にしわりながら覗き込んだ。

Bさんはつまり、わざと拒否的な「やだ」と発する態度をとったときに、
私がどんな表情や反応を示すか。どのような言葉を返してくるかを試しているのだった。

福岡 柳川 本吉屋本店 庭園


Bさんの口からは、以下のような言葉が発せられた。
『人は笑っていても、腹の中はわからない』
『反対に、ぶっきらぼうな言い方のようでも、心根の優しい人もいる』。
『上っ面を見ているだけじゃ、わからないことがある。』
上記のような言葉を選び、わざと血圧測定をしたくない反応を示してみたのだと思った真意を語った。

入居後の心情はさみしさ


 高齢者住宅に入居してきて、1週間が経過したBさん。
キーパーソンのお嬢さんと私が、今日お話しをしたところ、
入居した翌日は「寂しい」と言って電話で話していたと伺った。

福岡 柳川 鰻せいろ

 複雑な心境で、高齢者住宅に入居し、コロナ禍の現在は、家族とも好きな時にいつでも対面で面会することもできない。
心の寂しさを埋めるために、環境の変化に戸惑っている。そんなBさんの心境を察したら、わざと拒否する対応をしてみたくなった感情の揺らぎを思わすにはいられない。
私に対して拒否的な態度をとってみて、私がどんな反応を示すのかを、状況を作り、確認してみたくなったBさんの心境もわからなくないなぁと思う。

鰻の酢の物

 これまでに、意図的にケアワーカーや看護師に、否定的な言葉を選択して投げ返すことで、ケアワーカーや看護師が真剣に起こりだす場面もあったとBさんは語っていた。
 Bさんの心の中には、いたずらな態度を示しても、動じることなくBさんの心情を察し許容する反応を示すかを検証してみたかったのかもしれない。さらには、少しくらいのいたずには、ユーモアを交えて、コミュニケーションを楽しむ人間と話をしたいと思っていたのかもしれない。

福岡 柳川 本吉屋 床の間

2023.1.29(日)
MILK


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