タロウ 

 ある日、タロウは考えた。

何をしているんだろうと。

 寒い季節になってきた。今の自分は何者にもなれていない。目標もなくただ、暖かい部屋で暮らし、その日に必応なものだけを買い、食べて、そして寝る。そんな生活を繰り返している。

 そんな生活をしているときに公園にたちよった日の事。ふと、スズメを見ていると感じた。こいつらいつもここにいるな、どっか遠くにいかなくていいのか。ここでの生活が気に入っているのか。そして、自分はカラスと変わらないことに気づいた。スズメを自分の鏡のように見えていることに。今、何かにすがるでもなく、成すでもなく、日々の生活を送っている自分に不満を感じている。
 しかし、スズメにいくら問うても、何も帰ってこないし、何にもならない。自分はこの生活、状況に変化を求めているのかもしれない。さらに、そのことを感じていながらも、何もしていない自分に嫌気がさした。

 タロウは考える。何にあこがれているのか、何か目指すべきものが自分にはあるのか、無意識のうちにそんなことを考えているのかも。日が暮れても、答えは出ない。そんな簡単に出てきたら、もう気づいているわ、とつぶやく。

 部屋に帰って見回すと、何もない。必要最低限の家具の数々。なにもない。自分というものに色が付けられるものは何もないことに気づく。生活ができる空間でしかなく、何もない。何もないことに今まで気づいていなかった。

 タロウはその日、何か新しいことが明日は起きるのか、起こせるのかわからないけれど、布団に入った。

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