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編み物ができないから企画が生まれた    ラ メルヘン・テープのバッグ本のこと

塩化ビニルのテープと樹脂製ネットを使って作るバッグ。
上品な光沢や質感が魅力のテープで、ブランドバッグのように仕上がるため、現在は人気手芸のイチジャンルに(なったハズ)。
このバッグを作るサロンや講師の育成を行う協会が5団体も立ち上がり、会員数を伸ばしているというのもその証左。

そのきっかけを作ったのが、弊社が企画した『輝くビニルひもで作る 大人かわいいきらきらバッグ』(河出書房新社)だったのではないか、というのがテープのメーカーであるメルヘンアートさんの見解。
そして私も密かに(でもなく)そう思っている。

メルヘンテープ

この本が出て以来、ラ メルヘン・テープの売り上げが倍増し、本で紹介したバッグ成形用のネットを販売しているメーカーも、テープバッグ用に新色を出す勢いに。それからは、テープもネットも類似商品がいくつか出現し、この本で初めて紹介した「ネットにテープを通す技法」を使った書籍が、その後、数多くの出版社から発売されている。

狭い業界内のことではあるけれど、ちょっとしたムーブメントを起こせたことは誇らしく、嬉しいので、企画が生まれたきっかけについて書いておきたい。

美しいバッグを「簡単に」作りたい

ラ メルヘン・テープを使ったバッグの本は以前にも存在していた。
控えめながら美しい光沢を放つ、某ブランドの商品とも引けをとらないテープバッグ。塩ビというカジュアルな素材ながらリッチな雰囲気、というのがとても気に入り、「なんとか本にしたい!」と思ったのだった。

こうした気持ちは、おいしい食材を見つけて、「これを誰に調理してもらおうか」と考え、期待以上の一皿に最初にありつこうという食いしん坊の考え方と同じだ。
当時、その調理法、いわばバッグの作り方は棒針を使って編む技法であり、左利きという理由で編み物を断念した根性なしの私にはハードルが高く、棒針バッグを企画する気にはならなかった。

そこで、食いしん坊はメルヘンアートさんにお願いする。
「御社の商品ではないのですが、ハマナカさんのバッグ用成形ネットを使えば、編み物ができない人でもラ メルヘン・テープを使ってバッグが作れませんか」

少し苦い顔をされていた記憶があるが、背に腹はかえられぬということもあったようだ。他社のネットが売れることになっても、自社のテープが売れれば御の字と考えてくれたのか、快く企画に協力してくれたのだった。

サイズがぴったり! ふたつの材料の邂逅

手芸本の企画を立てるときに大切にしているのは、「簡単」なのに「おしゃれ」ということ。なぜなら、初心者を巻き込んで読者にできるから。
と訴えて、「編んだり、縫ったり一切なし! ネットに通せばできあがり!」と企画を通したわけなのだが、編み物ができないばっかりに、ひねり出した企画でもあるのだった。
「ちょうどいいぐあいにテープがネットに通せますよ!」とメルヘンアートさんから報告を受けたときのことは覚えている。
今では、テープとネットの組み合わせは当然のように思われているけれど、ネットは本来かぎ針を使った編み付け用として販売されていたもの。
たまたま、テープ幅とネットのサイズが合ったために実現した企画でもあった。

今や、センスと探究心のある多くの作家さんたちが、テープ×ネットのバッグを発展させている。SNSやネットを検索すれば、工夫を凝らしたバッグがたくさん見られるし、米倉涼子が出たニベアのCMでも採用されたと聞く。
願わくは、「もとはといえば、クリーシーが編集した本を参考に作りました〜」と付け加えてもらえたら……。

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