りつ。

うつと共存する人。 物語を書く練習や日記に使っています。 誰かの何かになれたら嬉しいで…

りつ。

うつと共存する人。 物語を書く練習や日記に使っています。 誰かの何かになれたら嬉しいです。

記事一覧

見守る優しさ

今日のほっこりしたお話 ある休憩所で、手を洗おうとしている 女の子がいました。 そこの蛇口はボタンを押すタイプで、 その子は戸惑っているように見えたので、 私は少…

りつ。
11か月前
4

overdose ~致死量を超えた恋~

___本当は分かってた。 いけないことだったって分かっていたのに……。 この手から伝わる温もりが全て愛だと錯覚した。 朝目が覚めると、部屋には私一人しかいない。 …

りつ。
1年前
4

優しさの理由

物心ついた時から、「優しい子だね」という言葉をよく耳にしてきた。子供の頃、それは褒め言葉なのだと無邪気に喜んでいた。 思い返すと、あの頃は優しさの意味を理解する…

りつ。
1年前
6

伝えられなかった想い…

___「さよなら」「ありがとう」 澄み渡った青空に向けて、声の限りそう叫んだ。 誰もいない河川敷にポツンと一人座ってみる。 どんなに声を上げたところで、きっと私の…

りつ。
1年前
6

子(ねずみ)の婿入り

___空を押し上げて手を伸ばす。 分厚い雲で覆われた灰色の空から、雨水が容赦なく降り注ぐ。その感触を手で確かめると、夢ではないことに落胆してため息をついた。 雨…

りつ。
1年前
5

だから僕は音楽をやめた

___考えたってわからない。 いつだったかはもう思い出せない。 だけどもうずっと長い間、苦しめられてきた気がする。 君のせいで大好きだった音楽が聞けなくなった。 …

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1年前
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バレンタインの思い出

その日の朝、登校中の私の手は寒さに加え、緊張でいつも以上に震えていた。 誰よりも早く学校に着かなきゃ、せっかくの計画が全て水の泡になってしまう。 誰もいない校門…

りつ。
1年前
8

君との生活

君と共存をはじめて4年が経った。 最初に君の存在を知ったのは、4年前の冬の始まり。色々なことが重なった環境に限界を感じた頃、心と体はすでに壊れていたらしい。 君の…

りつ。
1年前
6
見守る優しさ

見守る優しさ

今日のほっこりしたお話

ある休憩所で、手を洗おうとしている
女の子がいました。

そこの蛇口はボタンを押すタイプで、
その子は戸惑っているように見えたので、
私は少し立ち止まりました。

すると、向こうからその子のお兄ちゃんらしき
男の子が走って来て、「こうやって水を出すんだよ」と女の子に助け船を出しました。

その男の子がやって来た方向を見ると、お母さんらしき人がハンカチを広げて、二人が戻って

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overdose ~致死量を超えた恋~

overdose ~致死量を超えた恋~

___本当は分かってた。
いけないことだったって分かっていたのに……。

この手から伝わる温もりが全て愛だと錯覚した。

朝目が覚めると、部屋には私一人しかいない。
酔いが治まらない感覚に頭を抱えながら、気だるい体を起こした。昨夜脱ぎ散らかした服を拾い集めると、水を求めて台所へ向かった。

コップに注いだ水を飲み干して一息つくと、殺風景な自分の部屋を見渡した。自然と昨夜ここであったことが思い返され

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優しさの理由

優しさの理由

物心ついた時から、「優しい子だね」という言葉をよく耳にしてきた。子供の頃、それは褒め言葉なのだと無邪気に喜んでいた。

思い返すと、あの頃は優しさの意味を理解するにはまだ幼なかったと思う。
大人になるにつれて、そのことを痛感した。

社会に出てからしばらくして、優しさにはいくつかの種類があることを知った。

一つ目は、道徳の授業で習った優しさ。
人に思いやりを持って接しましょうという類のもので、子

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伝えられなかった想い…

伝えられなかった想い…

___「さよなら」「ありがとう」
澄み渡った青空に向けて、声の限りそう叫んだ。
誰もいない河川敷にポツンと一人座ってみる。

どんなに声を上げたところで、きっと私の言葉は届かない。それでも叫ばずにはいられなかった。
もしかしたら風に乗せて、あなたが旅立った先に届くかもしれないから。

目の前に広がる空があなたと出会った日の空に似ていたから、どこかで繋がっていてほしいと願いを込めた。

数年前に入院

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子(ねずみ)の婿入り

子(ねずみ)の婿入り

___空を押し上げて手を伸ばす。
分厚い雲で覆われた灰色の空から、雨水が容赦なく降り注ぐ。その感触を手で確かめると、夢ではないことに落胆してため息をついた。

雨は昔からどうも苦手だ。
鼻につくような土の匂い、泥が跳ねる足元、うねりを増す髪、気まぐれに起こる偏頭痛……不快な要素ばかりが頭に浮かび、そのどれもが私を憂鬱にさせる。そんなときはいつもなら家にこもってやり過ごせばいいのだが、生憎今日はそう

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だから僕は音楽をやめた

だから僕は音楽をやめた

___考えたってわからない。
いつだったかはもう思い出せない。
だけどもうずっと長い間、苦しめられてきた気がする。

君のせいで大好きだった音楽が聞けなくなった。
好きだったラブソングも、流行りの曲も、音が頭に響く度に苦痛を感じるようになった。
大好きだったピアノも、ギターも、弾く度に調律が狂っているように聞こえて触れなくなった。
密かに自慢だった絶対音感も、気づかないうちにどこか遠くに置いてきて

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バレンタインの思い出

バレンタインの思い出

その日の朝、登校中の私の手は寒さに加え、緊張でいつも以上に震えていた。
誰よりも早く学校に着かなきゃ、せっかくの計画が全て水の泡になってしまう。

誰もいない校門をくぐり抜けると、先生の靴箱目がけて全力疾走した。玄関口を開けると2月の冷たい風が吹き抜けて、落ち葉がくるくると足元で舞っている。
「よかった……」
誰にも見られていないことを確認すると、昨日用意したものを先生の靴箱に押し込んですぐさま逃

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君との生活

君との生活

君と共存をはじめて4年が経った。
最初に君の存在を知ったのは、4年前の冬の始まり。色々なことが重なった環境に限界を感じた頃、心と体はすでに壊れていたらしい。

君の存在を主治医に告げられて、病気のことや自己肯定感を上げる方法を調べ尽くしたけれど、むしろそれは逆効果で、何もできなくなった自分を責め続けたこともあった。

主治医の助言通り、まず頑張らないことを頑張ることから始めて、べきだの何だのこれま

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