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1000文字思考 その44 「ほぐし水」

最近暑い。朝に食べるお茶漬けの折角のおいしさを素直に感じ取れない季節が近づきつつある。

外でご飯を食べる用事があり、コンビニへ向かうとそこには「ざるそば」と表記されたざるそばが陳列されていた。

美味そう。

寒い時期には誰にも見向きもされなかったざるそば。もう大丈夫。僕が救ってあげるからね。

ざるそばに対しUFOキャッチャーの景品と同じ愛情の注ぎ方をして購入し、ベンチに座った。

「ほぐし水」。

「ほぐし水」が、僕はずっと怖い。
今まで生きてきて一度たりとも易々と受け入れたことはないし、これから死ぬまでもそうだろう。

面倒なので調べはしないが、おそらく普通の安全な水ではない。多分軟膏とか入ってる。

何が一番恐ろしいかというと、「ほぐし水」をざるそばにかけると麺が確かにほぐれる所だ。
この場合のツッコミは「ほぐれんのかい」で正しいのか。いやそれだとツッコミボケになる。

「ほぐし水」によりほぐれたざるそばをそのまま口に運ぶのは憚られるので、一旦蛇口の水で「ほぐし水」を洗い流すことにした。すまん。

美味しい。

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「ほぐし水」はざるそば以外にも色々と用途があるに違いない。

・小林尊のホットドッグをほぐす
小林尊は言わずと知れた、日本が誇る世界トップレベルのホットドッグ喰いである。
「数行くためには水にくぐらす」という事実を教えてくれたのは伊東四郎でもなく三宅裕司でもない、小林尊だ。
彼はホットドッグにこの「ほぐし水」を使用しているに違いない。胃の中でちょうどほぐれる。

・自転車のパンク探しにタイヤをほぐす
自転車がパンクしてしまった時、あの水色の立方体の水瓶の中にタイヤを通してパンクを探してもらった経験は万国共通であろう。
あの水は毎日入れ替えているのか、温度にこだわりがあるのか、そもそも水なのか。
答えは「ほぐし水」である。タイヤのゴムのほぐれを良くして、パンクを発見していると考える。

・記者会見に置いてあるペットボトルの水
「誰が飲むねん」日本代表。また「ぬるそう」アジア選手権代表のあの水は、間違いなくそう。
「ほぐし水」だ。
喉がほぐれて、過去の過ちを吐き出させるために存在しているから、会見中は誰も飲みたがらない。税金で温泉地に行きまくった某都道府県の議員さんは、飲んでた。そして醜態を晒した。

こんなことを考えているとざるそばが残り1マス。
少し外気に触れて硬くなった。
ほぐし水が足りない。

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