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Pray and Play

🐻‍❄️📖

夜になると、ぼくは、いつも、こっそり売り場を抜け出して、Chapelの十字架のてっぺんに座って、星空を眺めた。

お月様がくっきり見える日や、ときどき何も見えなくなる夜があって、さみしかったり、胸がときめいたり。
鳥さんに、突かれたり。
そして、陽がのぼる前には、また、そうっと、もとの場所にもどるんだ。

ある日、ひとりの女の子が、ぼくの目の前にあらわれた。

その子は、ほかの子たちと違って、ぼくのことを、これでもかと、ガン見してきた。
なんだか少し怖かったけど、ぼくは、負けないぞ!と、これまでにないくらい、両目をキラキラうるうるうるりんちょにして、そのままじっとしていた。

すると、その子が、くるりと回って立ち去ろうとしたから、ぼくは、やりすぎちゃった!と、慌てて、手にもっていた聖書を読むふりをしたんだ。
ちょっとだけ泪が出そうになりながら。

そうしたら、次の瞬間。
一周まわったその子が、くるりんとこっちに戻ってきた。
と思ったら、UFOみたいにふわっと、ぼくのことをつかんで、鼻歌を歌いながら、さらっていったんだ。

このときに、ぼくは、知ってしまった。

本の中に書いてあった、"奇跡" ってやつは、本当に起きるんだ!てことを。


✴︎


🐰🥕

毎晩、時計の二つの針が、12の時を過ぎる頃、ぼくは、売り場を抜け出して、ぴょんぴょんと冒険に出るんだ。

この冒険は、命がけ。
黒い足に踏まれそうになったり、あるときには、先が尖っているやつに刺されそうにもなった。

それなのに、ぼくがいることに、誰も気づいたりはしないんだ。
まったく、みんな、ふらふらと通り過ぎて、闇の中に消えていく。

まるで、不思議の国みたいに、大きすぎる建物が立ち並んでいる。

お月様は、この世界から消えてしまった。

どこまで行っても、地面は灰色で、かたくて、大好きな穴掘りができないし、にんじんやどんぐりだって、どこにも見当たらなかったよ。

それでも。
小さな四角い箱の中でじっとしているよりは、ずっとよかったんだ。

ある日、ひとりの女の子が、ぼくの目の前にあらわれた。

その子は、ほかの子たちと違って、ぼくの顔を見て、なんだかものすごく笑うんだ。
そして、ニヤニヤしながらこっちに手を伸ばしてきたときは、正直、とっても怖かったよ。

でも、ぼくは、抵抗するのをやめたのさ。
だって。
その子がもう片方の手にさげていた袋の中に、きらりと光るオレンジ色のものを見つけちゃったから!

あとから、あのキラキラが、にんじんじゃなくて、みかんだとわかったときには、めちゃんこがっかりしたけどね。

でも、これだけは、言ってやる。

ときには、でっかく間違えてみるのも、いいもんなのさ!



あなたという神と、わたしという神へ、ありがとう♡