ばあちゃんが教えてくれたこと 第2話

このシリーズでは、私(33歳シングルママ)が、亡き祖母から教えてもらったことを思い出しながらご紹介いたします。
祖母とは18歳まで一緒に暮らしでおり、育ての母のごとく私の世話をしていました。

ばあちゃんの言葉
「これが生活の知恵!」
〜みんなと違うことは恥ずかしくない〜


私が小3くらいのことでしょうか。
遠足にお弁当が必要でした。
記憶が曖昧ですが、お弁当はおそらく祖母が作ったと思います。
その時の水筒の思い出です。

当時、魔法瓶が流行っていたような気がします。みんな魔法瓶に入れた冷たい飲み物を持ってきていました。
みんなが水筒を出す中、私は一人、新聞紙で巻かれた入れ物を取り出しました。
中身は、ペットボトルと、凍らせた水。
ペットボトルの中に水を入れ、一晩凍らせる。それを新聞紙でくるくると包むと、保冷されて中の氷が溶けにくく、ペットボトルから出た水滴も新聞紙が吸収してくれます。
持って行くときは、正直、「いやだなぁ。私もみんなみたいに魔法瓶がいいなぁ。」と思っていました。

魔法瓶を買うお金が無かったのか、
あえて私に新聞紙で包んだペットボトルを持たせたのか、
わかりません。

祖母は、ペットボトル水筒を渡す時に、新聞紙でくるくると包みながら言いました。

「こうすると、なかなか溶けないから冷たい水を飲めるんだよ。魔法瓶なんか無くても大丈夫。これが生活の知恵というやつだよ。」

今でも覚えています。
そう言った祖母の口調は、自慢気だったことを。

もし、あのとき、
「うちには魔法瓶を買う余裕が無いから、ごめんね。これを持っていってね。」とか言われていたら、私も恥ずかしくなって、ペットボトル水筒を友達の前で出すことはなかったでしょう。

でも、ばあちゃんは、自信たっぷりに言った。
「こんなこと知っている人、いないと思うよ!」
だから私は、そのペットボトルの水筒をみんなの前で堂々と(では無かったかもしれないけど)出した。

小学3年生。多感になってくるお年頃。
一歩間違えば、そこからイジメにだって発展するかもしれない。
私の周りにいた子は、「新聞紙の中に何が 入っているの??」と興味津々。新聞紙を開けると、ペットボトルの中の氷は1/3くらい溶けていた。
大きな氷の塊は、溶かかりの氷らしく白っぽくなっていた。ペットボトルの中だったので、細長くて白っぽい氷の塊が水の中にある。そんな私の変わった水筒を見た周りの友達は「なにそれ???大根みたーい!」と笑った。
私はもう一度、ペットボトル水筒を見た。たしかに氷は大根そのものに形も色も少し似ているようにも見えた。
そして、みんなで笑った。「わー!大根だ、大根だ!」
私は、得意気に言った。

「これね、すごいんだよ!新聞紙で包んでいるから溶けないんだよ!生活の知恵なんだよー!」


家に帰ってから、私は興奮気味にばあちゃんに伝えた。
「新聞紙で包んで行ったら、本当にあんまり溶けて無かったよ!生活の知恵だね!」
私は覚えたばかりの「生活の知恵」という言葉を得意気に使った。
ばあちゃんは、やっぱり得意気に笑った。

恥ずかしいとか、
楽しくないとか、
辛いとか、
悲しいとかでさえ、
全ては、周りから学ぶ。
周りの大人が恥ずかしがっていたら、それは恥ずかしいことになる。
周りの大人な楽しんでいなかったら、それは楽しくないことになる。
周りの大人が辛いと言ってばかりだと、それは辛いことになる。

だけど、
大人がちゃんと伝えたら、
それは恥ずかしいとこなどのネガティブなことではなくて、誇るべきことにだってなる。







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