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猫になれたなら。

作:みけれこ

※必読【ご利用規約→https://writening.net/page?LBztNP

〇猫になりたがりな僕等シリーズ
〈第3弾〉

●比率…♂︎2:♀︎0  【性別変更不可×】
●時間…約30分

※こちらの作品は、ほんのり同性愛(BL)を思わせる表現があるので、苦手な方はご注意ください。

《登場人物》
♂︎葉山 蒼(はやま そう):高校2年生。黒のクラスメート。分け隔てなくフレンドリーに誰とでも接することができる。自分の下に年の離れた弟と妹がいるので、面倒をよく見ている。両親は共働き。(モノローグ多め)

♂︎ 丸岡 黒(まるおか くろ): 高校2年生。目付きが悪く、幼い頃から虐められていた。前髪を伸ばして目元を隠している。人との関わりが苦手なのもあり、恥ずかしさもあり、生意気な受けごたえをする。

*二人の関係上、セリフバランスが悪いです。すみません。基本、蒼がずっと喋ってます( ˊᵕˋ ;)

▽以下から本文▽
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------------ひとけの無い校舎裏の非常階段で1人、昼食を取る丸岡 黒。その背後に近寄っていく葉山 蒼。

蒼:まーるおか!お前まーたこんなとこで、1人で隠れて飯、食ってんのかよ。

黒:………好きでここに居るんだから、ほっといてくんない。

蒼:寂しー奴。

黒:別に、あんたには関係ないだろ。

蒼:まー、関係はねぇけどさ。…てか、いい加減俺の名前呼んでくんね?俺には葉山 蒼(はやま そう)っていう、いい名前があんだけど?知ってんだろ?

黒:めんどくさ。

蒼:なんだよ、それ。…たくっ。隣座るわー。

黒:……勝手にすれば。

蒼:…へへ、なんだかんだ、やっぱ寂しいんだろ、お前。

黒:全然。嫌って言っても、どうせ座るじゃん。

蒼:まーなー。お前と飯食うのが、1番楽なんだよね、俺。

黒:意味わかんない。変わってるね。

蒼:そりゃどーも。

黒:褒めてないし…。

蒼:俺にとったらそれは、褒め言葉なんだよ。

黒:………あっそ。

蒼(M):殆ど顔が隠れるくらい長い前髪から、ちらちらと覗く黒目がちな瞳。いつも無表情で物静かで。まるで存在を隠しているかのように過ごしているクラスメイト。何を考えているのかもよく分からない。丸岡 黒(まるおか くろ)は、そんな不思議な男。

あいつの傍に居たら陰気臭くなる。周りの奴等はそう言って近寄らない。そうしている内に、みんな丸岡の事を忘れたように、話さなくなる。見なくなる。存在はそこにあるのに、まるで無いようになっていく。
でも俺は、違う。

黒:………あんたさ。

蒼:ん?何?

黒:…ここ最近、しょっちゅう俺に絡んでくるけど。何なの。

蒼:何なのって、別に?何か特別な理由がないと、絡んじゃ駄目なん?

黒:……今まで、誰も俺に興味なんて持たなかったし。あんたもそうだったでしょ。なのに、急にしつこいから。何かの罰ゲームとかなら、そんなのに付き合ってる暇なんて無いから、やめて欲しいんだけど。

蒼:別に、そんなのねーよ。

黒:じゃあ、何。

蒼:だから、別に、特に意味はねぇんだって。単純に、俺はお前と仲良くなりたいだけ。つか、俺、思うんだけどさ。お前がいつも1人になってるのってさ、お前自身が自分の存在を無いみたいなさ。そんな風にしてるからじゃん?

黒:意味分かんない。どうでもいいよ、そんなの。

蒼:よくねーって。

黒:周りの事なんて本当にどうでもいいから。俺は、ほっといて欲しいし。

蒼:とか言いつつさ、割と気にしてんじゃん、お前。

黒:意味分かんない。あんたには関係ないって言ってるじゃん。

蒼:俺はいつも、丸岡の事見てたよ。

黒:…は?

蒼:他の奴等が、どうとか知らねーし、興味もねーし。俺には関係ねーよ。勿論、罰ゲームもなんも無い。ただ俺はずっとお前の事を見てたし、お前のことが気になってたよ。…出会った頃からずっと。

黒:………。

蒼:だから、ずっと話しかけるタイミングを探してた。んで、お前が昼休みに1人で、しかもこんなとこで弁当食ってるのを見つけたから。今だって思ったんだよ。ただそれだけ。

黒:…………あっそ。あんたって本当に変な奴だね。

蒼:おう、サンキューな!

黒:…………。

蒼:つーかさ、お前っていつも弁当だよな。親に作ってもらってんの?

黒:………………自分で適当に作ってるけど。

蒼:まじか。偉いじゃん。

黒:別に、親が殆ど家に居ないからやってるだけ。

蒼:へー…。もしかして、お前んとこの母ちゃん達も、共働きとか?俺のとこもそうなんだよねー。んでさ、俺の下にちっこい弟と妹がいるから、俺、代わりに面倒見てんだよ。

黒:あっそ。

蒼:やんちゃ盛りの奴等だから結構大変だけど、可愛いんだよなー。喧嘩とかもよくするけど。一番下が妹でさ。兄弟の中で唯一の女子だから、可愛くて仕方ないんだけど。でも最近、ちょっと生意気になってきてさー。

黒:……。

蒼:この間なんか、私は女の子なんだから、もっとデリカシーをもって!とか、急に言われて。お前そんな言葉、どこで覚えてきたんだって思ったわ。まだ5歳だぜ?最近のちびって妙にませてるっていうか。まぁでも、デリカシーの意味は、あんま分かって無さそうで笑ったけど。とりあえず言ってみたかったって感じで。そういうとこ笑えるし、可愛いんだよなー。

黒:………。

蒼:あ、そうだ。丸岡さ、家(いえ)でも一人でいることが多いんだろ?なら良かったら今度、家(うち)に遊び来いよ。あいつ等も喜ぶし。俺も、チビ達の相手してもらえるなら、正直助かるし。んでさ、夕飯一緒に食おうぜ。俺の手料理で良ければ、ご馳走するから。1人で食うより、いーじゃん?

黒:(食い気味に)行かない。

蒼:……んな、食い気味に、即答しなくてもいいじゃんか。…ちぇっ。やっぱ駄目かー。いい案だと思ったんだけどなー。

黒:………。

蒼:……ま、もし気が変わったりしたら、いつでも言えよな。…つーか、いつの間にか食い終わってんのな、お前。

黒:あんたが、1人でべらべら喋ってる内にね。

蒼:あー…なるほどな。いやっ、つーかお前も、もう少し反応とかしてくれてもよくね??

黒:……。

蒼:はい無視ー。人の顔すら見ることもなく、弁当箱を閉まって、当たり前の様に本を開く…っていう。はーぁ。ほんと、徹底してるよなー。

黒:………それは、どーも。

蒼:…なー?たまには、俺の相手してくれてもよくねー?つかさ、いっつもそれ読んでるけど、そんなに楽しいの?なんて本?

黒:………。

蒼:無視かよ。……分かってたけど。(ため息)

蒼(M):昼休みになると、いつも人知れずに何処かに消えていく丸岡の後を、それとなく追ってみたあの日。

ひとけの無い校舎裏の非常階段で、1人静かに綺麗に詰められた弁当を広げ、手を合わせ小さく「いただきます」と囁いた姿に、どことなく漂う儚さと、美しさみたいなのを感じた。

真っ黒な瞳や、さらりと流れる長い前髪が、暖かな太陽の光に照らされて。凍りついた表情のまま、長いまつ毛を揺らして、ゆっくりと手を合わせる姿。その場所だけが凛とした静けさに包まれて、全く違う時間が流れているように見えた。

その空間に見とれていた、と。多分あれは、そう言える。よく分からない胸の高鳴りを感じて、暫く身動きも取れなかったのを覚えている。

ほんの一瞬だったのかもしれない。でも、その瞬間だけ時間が止まったように見えて、そのまま長いこと見つめていた気がした。そんな俺に気がついて、驚いた様子の丸岡を見て、我に返り思い切って声を掛けた。それがこの時間の始まりにはなった。

あの日から益々、もっとこいつの事を知りたい。もっと近づいてみたい。その想いがどうしても止まらなくなった。

でもやっぱりこの黒猫の心は、なかなか見えてこない。思ったよりも壁は分厚かった。

ただなんとなくだけど、1つだけ、分かってきた事がある。

蒼:なー。この前話したさ、俺がよく行ってるケーキ屋でさ、最近人気のケーキがあるんだけど。

黒:…へぇ。

蒼:俺も1度は食べてみたいんだけど、何かめっちゃ人気らしくて、なかなか出会えないんだよね。俺、結構頻繁に通ってて、…たまーに、夜まで残ってることがあるらしいから、狙ってんだけどさー。なかなかタイミングが合わねぇんだよ。

黒:…ふーん。

蒼:何か、チョコレートムースにオレンジピューレが混ぜてあって。その下は、ふわっとしたオレンジの香りがするスポンジ生地らしいんだけど。めちゃくちゃ美味そうなんだよ。写真見してもらったんだけどさ。俺、オレンジ大好きだから、食いたいんだけどなー。

黒:…………それ、食べた。

蒼:……え、は???まじで?!え、だってお前、そこのケーキ屋は行かないって、この間、言ってたじゃん!誘ったら速攻で断ってきたし!

黒:店には行かない。……けど、知り合いに、よくそこのケーキ買ってくる人がいるから。

蒼:………へぇ。そうなんだ。いいなぁ。…………美味かった?

黒:………まぁね。

蒼:ふーん。その人いいなー。タイミング良く買えたんかな。

黒:……さあ。

蒼:てか、その人もそこのケーキ屋よく行くなら、その内会えたりしてな!どんな人か教えてよ!

黒:嫌だ。

蒼:……即答。お前、嫌って時だけ即答するの、やめろよ。結構、地味に傷つくから。

黒:………。

蒼:んで、会話してても俺の顔は見ないし。本ばっか見てんじゃん。お前は本と会話してんのかーって…。

蒼(M):普段滅多に変わらない丸岡の表情が、時々、微妙に緩む時がある。前髪から覗く瞳が、どことなく優しげになって。空気が変わる。……今もそうだ。その空気は決まって、その『知り合い』の話をする時に流れる。

それが、たった1つの分かってきた事。
その黒々とした瞳を、真っ直ぐと向けられている人が居るんだろう。…誰だかは分からないけど。

こちらを一切見ずに話してくるから。いつもそれを横から見つめている内に、気がついた。その表情を見る度に俺の胸は、何故だかきゅっと締め付けられる。

ああ、今多分、その人を思い浮かべているんだろうなって。……そんな顔、できるんじゃんかって。

この黒猫の心を開きたいと求め、近寄っても、視線すらまともに向けて貰えない俺は、正直、その相手の事がとても羨ましいと思う。

俺にも向けて欲しい。
お前のそんな優しい空気を。
その微笑みを。

光の少ない漆黒の、その瞳に。
俺も映して欲しい。

俺を、見て欲しい。

もっと俺はお前に近づきたい。
その漆黒に俺は、飲み込まれたい。
俺を見て欲しい。

蒼:……………なー…黒(くろ)。

黒:………。(怪訝そうに視線を向ける)

蒼:……お、やっとこっち見た。俺に興味が無いのは分かるけどさ、一応、話しかけてるんだし、隣にも居るんだから、少しは俺の事見てくれてもよくね?ずーーーっと、手元ばっか見つめちゃってさ。俺の事見えてる?俺の声、聞こえてる?

黒:……勝手に下の名前で、呼ばないでくんない。

蒼:何でだよ。別にいいじゃん。クラスメイトなんだし。友達なんだし。

黒:あんたと俺、いつから友達になったわけ。俺はそんなつもり無いから。勝手にあんたが付きまとってきて、こっちは正直迷惑してるから。

蒼:うわ…ひっっでぇ。流石にちょっと傷つくわ。……つーかお前さ。前にも言ったけど、前髪長すぎだって。そんなんじゃ顔が全然見えねぇし、目も悪くなるから切ってこいよ。

黒:あんたには関係ない。

蒼:お前そればっか。嫌な口癖なー。

黒:俺と一緒に居ても何も楽しくないんだから、さっさと他の人達のとこ行けばいいじゃん。

蒼:だーかーらー、俺はお前と話がしたいのー。

黒:俺は別に、話したいことなんて無い。

蒼:………………ちぇ。

黒:……………。

蒼(M):また視線が本へと戻っていく。

一瞬でも自分の方に向けられて、嬉しいと思ったのに。分厚い壁のように置かれた前髪で、目が合ったのかも分からないけど。

やっぱり。
その瞳に、俺が映り続けることは無いか。

悔しいな。

蒼:……んじゃもう、そのままで良いから俺の話聞いてよ。

黒:………。

蒼:…俺さ、お前がいつも言うさ、「いただきます。」っていうの、なんか好きなんだよね。

黒:………は?

蒼:あんなちゃんと「いただきます。」って言う奴、そうそう居ねぇし。

黒:……馬鹿にしてるの?

蒼:違ぇって。こう手を合わせて、綺麗に言うじゃん。何かいいなーって思うんだよね。傍で見てるの割と好き。

黒:…あっそ。

蒼:初めてここで見た時、どっかの絵画みたいだなって思ったもん。

黒:絵画って……。何言ってんの。やっぱあんたって変だよ。

蒼:だよなー。俺もそう思う。まっ、そこが俺の取り柄って感じじゃん?

黒:(ため息)

蒼:…丸岡ってさ、犬派?猫派?

黒:…何、急に。

蒼:いや、さっき話した俺の妹がさ、最近、犬が欲しいって言うんだよ。この前テレビで見かけてから、夢中になっちまったみたいで。

黒:…………へぇ……。

蒼:すっげーきらきらした目で訴えてくるけど、俺ん家(ち)って、基本的に家(いえ)に人がいる時間が少ねぇし、母ちゃん達にはそんな余裕もねぇから無理なんだけどさ。

黒:………だから何。

蒼:それ見てたら、妹は犬派だなって思って。で、丸岡はどうなのかなって、ふと思って。因みに俺も、どっちかと言うと犬派。

黒:…………。

蒼:お前自身はなんか、野良猫って感じだけどな。んでもって、絶対黒猫な。

黒:…………………そんなに猫っぽい?

蒼:え?何?

黒:…………俺って、……そんなに、猫っぽい?

蒼:……あーーー…いや、お前はどう見ても犬ではないだろ。なかなか懐かない猫って感じ。

黒:……あっそ…。

蒼:…何だよ、何か気になることでもあんのかよ。

黒:…別に。……前にも、似たようなこと別の人にも言われたから。

蒼:………まじか。……ふーん。やっぱりそうだよなー。いや、てか話、逸れたわ。んで、お前はどっち派?俺の予想では猫派だろうと見てる。

黒:(聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でボソリと)……………………猫。

蒼:………だよな!

黒:なんでそんな嬉しそうな顔するわけ。

蒼:いや、べっつにー?予想通りだったから、なんとなく嬉しくなっただけ。あとほら、お前の事知れたのと、今、お前、俺の事見てくれたじゃん?

黒:意味分かんない。

蒼:へへっ。……あー。丸岡が猫派なら、俺、猫になりてーな。

黒:…………………は?

蒼:猫になったら、お前、傍に置いてくれんだろ。

黒:…何言ってんの。

蒼:お前があまりにも俺の事、嫌うから。猫になったら今よりは心許して、俺の事もちゃーんと見てくれるのかなーって思って。

黒:…………。

蒼:動物といるとさ、自然と笑顔になったりすんじゃん?あいつ等の何かパワーっていうのかな。俺、あれって結構すげーよなって思ってんだけど。

黒:…………。

蒼:猫になったら、俺もそんな風になれんのかなーって。そうなれるなら、お前も、もっと笑って一緒に居てくれっかな、とか。………俺の事、ちゃんと見てくれんのかな、って。……たまにちょっと考えたりするんだよね。

黒:……………。

蒼:………なんて、馬鹿みてぇだよな。…悪い。何か気持ちわりぃ事言ったかも。……忘れてくれていいわ。

黒:……何で。

蒼:ん?

黒:……なん、で。俺なんかにあんたは、そこまで思うわけ。

蒼:…………………。

黒:…別に俺とあんたは、特別仲がいい訳でもないし。あんたも分かってる通り、友達なんて一人も居なくて、いつも一人で居る俺に。……あんたのことだって無視してる俺に……何であんたはそこまで言えるの。

蒼:……分かんねぇ。

黒:は?

蒼:俺だってよく分かんねぇから、上手く言えねぇんだよ。……けどさ。

黒:………。

蒼:………その、なんつーか。お前の隠れたその瞳に、ちゃんと映りたいって………。………お前に、ちゃんと俺を見て欲しいって思う。

黒:………………何それ。

蒼:…分かんねぇ。

黒:…馬鹿じゃないの。

蒼:…だよなぁ。…俺もそう思う。

黒:……。

蒼:………なぁ、丸岡。

黒:…何。

蒼:……俺とさ、友達になってよ。

(しばらくの間。それに耐えられなくなったように、蒼が口を開く)

蒼:………なん、て。やっぱ厳しいか。

黒:(蒼の言葉に被せて、ボソリと)………別にいいけど。

蒼:…………へ?

黒:………。

蒼:あ……いや、ごめん。上手く聞こえなかった。……何て?

黒:……………別に、いい……けど。

蒼:………まじで?!

黒:……。

蒼:まっっじっっで?!!!!

黒:煩い。聞こえてる。何度も言わなくていいから。

蒼:ま!!じ!!で!!!!!??!

黒:………やっぱり、撤回する。

蒼:うわっちょ!ごめんて!まさかの答え過ぎて、信じられなくて!

黒:俺うるさい奴、嫌いだから。あんたの事も好きじゃない。

蒼:は?好きじゃないのに、友達になってくれるとか!お前やっぱりめちゃくちゃ良い奴じゃん!!!

黒:煩いってば。………あーもう、予鈴鳴ったじゃん。最悪。全然読めなかったし、休憩にもならなかったんだけど。

蒼:あんだけ俺の事、無視して読み進めてたのに?まあ、なんだかんだ言いつつ、割と反応してくれてたもんな?つーかさ、よく考えたら、毎日毎日その本読んでる割には、読むの遅くね?やっぱりお前って……良い奴じゃん。

黒:やっぱ無理。あんたと友達になるの。

蒼:いやいやいや、男に二言はねぇから!!

黒:俺もう行くから。

蒼:ちょい待てって!《友達》を!置いてくなっ!

黒:うざい。

蒼:おいこら!……待てって!黒(くろ)!!!

黒:……っ。本っ当に煩い…っ。……さっさとしてよ、…………………………っ…葉山(はやま)。

蒼:……………………うわ、まって。いきなりのデレじゃん。えーーやばい、やばいやばいやばい。何かニヤける。やばいって、 まって。やばーーーー……って、おい!!置いていくなっつーの!!!

蒼(M):どんなに望んでも俺は、お前が真っ直ぐと見つめている人にはなれない。

だからせめて、俺は、お前の傍に居たい。

人間の俺が嫌だと言うのなら、
お前のその壁をすり抜ける、猫になりたい。

いつかお前が、本当に自分が見えなくなったとしても。猫になった俺は、お前を優しく照らす小さな光でありたい。きっとその時は、その黒い世界にぽっかりと映るのは俺だけだから。

一時でもいい。その瞳に居続けられる存在になりたい。その漆黒を独り占めしたい。

周りがお前の存在を消していくなら。お前が自分の存在を消していくなら。俺だけは見失わずに見つめているから。

だからいつか俺を、見てほしい。

猫になれたなら。
それは叶うのかな。

こんな叶いもしない、子供みたいな。
小さな妹が喜びそうな、そんな御伽噺(おとぎばなし)を本気で願うくらい、俺は漆黒に勝手に溺れている。

馬鹿だよな、本当に。

[END]

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【作品掲載HP】
『^. .^{とある猫の言葉.•♬』
https://lit.link/Nekotoba

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