猫田による猫田のための、ホールケーキ。

自転車でホールケーキを運んだ。

なにかと理由をつけて
ホールケーキを買いに行くことが、
私のささやかな楽しみのひとつである。

かつてはサークルでとか、
アルバイト先でとか、
理由の付けようがあったのだけれど。

(とはいえそんなに買っていない。
片手で数えられるほどにしか。
それほど理由の付けようがないってこと。)

いまではおよそそういうのもできない。

あれ、そもそもサークルでは買ってないか…。
そもそも大学生になりたての頃は、
自分でホールケーキを買うっていう
その発想がなかったのかも。

自分のお金でホールケーキを買う。
その選択ができるようになったのは、
ひとつ大人になったってことでいいじゃん。
いいじゃんね。

プレートの文字をお願いするときは、
ちょっとはずかしくてたまらない。
でもそういうところもホールケーキ。

ホールケーキだからといって、
プレートが必要かっていうと
要らないときもある。

でもホールケーキの良さって、
ちょっとプレートにある気がする。
ちょっとだけ。

プレートにはお祝いの言葉しか書いていない。
そこにはなんだかほんわかした、
ゆるりとしたいい気持ちだけ、
載っている気がする。

ケーキのプレートはもしかしたら
幸せの象徴なのかもしれない。
ぱっと思いついただけだ。

思いついただけだってのに、
脳内のついったー界隈が
「ホールケーキを買えない者もいるのだ！」
と騒ぎだしてしまった。

なら一緒に買って食べようや。
だからまずともだちになろうや。
ともだち記念ってプレートに書こうや。

ついったー界隈は散り散りになった。

プレートなんて必要のない
なにもない日に買うホールケーキの方が、
幸せだったりするかもしれない。
買ったことないから分からないけど

ホールケーキといえばやっぱり、
真っ白な生クリームのドレスに、
色とりどりのフルーツをあしらった、
ショートケーキってイメージ。

私自身はチーズケーキ愛好家だけど、
でもみんなショートケーキ好きかなあ。
ホールケーキともなれば、
ショートケーキを選びがち。

そうじゃないなあ。
ショートケーキって賑やかで明るくて、
彩り豊かでお祝いって感じがするから
きっと選びがちなんだ。

だけどこないだ手元にやって来た、
チョコレートケーキはちょっとおしとやかで、
それでいて華やかな出で立ちで、
とてもかわいかった。

猫田による猫田のための、ホールケーキ。