試合に出た


10.8 初めて試合に出ました。柔術ではなく空道の方。

この日に大会があるのでどうですか?とお声がけいただいたのが8月の終わり〜9月頭。入門から1年が経っていた頃でした。
これまでも試合の話はありましたが、なんやかんやとやらない理由を見つけて断っていました。
稽古してるからって試合をやる必要があるわけでは無いし、殴り合えるほど真剣に取り組んでいなかったし、寝技の方が怖く無いし。普通の人は殴ったり殴られたり蹴られたり極められたりしないからね。

それでも今回出ようと決めた理由は大きく2つあって。
一つは、断り続けている自分がダサくて嫌になったから。かっこいい生き方してる人を何人も好きで応援している自分が、こんなにもダサく不甲斐ない精神で武道をやってることに対して嫌悪感が強くなってしまって。これまでの人生で勝ち負けのつくことをしたことも無く、特別熱心に働くでも無く、大した生き方もしてこなかったのだから、ここで一度くらい腹を決めたっていいよな、恥の一つもかいたっていいじゃないか、と思えてきて。強くなりたいから!とか自信があるから!ではなくて、自分の事を嫌いになりたくなかった。自分の事を諦めないために、自分で自分のこと好きになりたくて、試合に出ることを決めました。痛い思いをすることは正しいとは言えないけれど、数少ない自分で決めることができた意思は大事にしてみようかなと思って。

もう一つの理由は日程が幸運だったこと。
私の試合の前日は青木真也さんの試合が決定していて、これなら翌日の自分の試合を前に力もらって頑張れるな、と思えたことが大きな決定打でした。青木さんと一緒に頑張るだなんて烏滸がましいことは言えないけれど、少しだけ同じ船に乗らせてもらえたら、私はきっと何倍も頑張れると思えて。当日、試合が怖い気持ちが強くなったとしても、私は青木さんの船に勝手に乗ったのだから恥ずかしいことしないぞ、と思える試合を、自分の試合の前日に青木さんが成し遂げてくださる強い信用があったから、この日なら試合に挑めるなぁと思って決めました。

入門して一年とはいえ週に一度の稽古でして。ましてやこれまでに他の武道をしていたわけではなかった自分にとって(空道やる人は柔道や極真出身の人が多いのよ)、自信を持って闘える自信なんて少しもなかったのだけど、出ると決めてからの周りの方のサポートや自分から沸いてくる経験したことないやる気が少しずつ自信になっていきました。精進した、とまでは言えないものの、これまでよりはるかに熱心に集中して稽古に臨むことが出来たし、理解できるまで沢山聞いたし、自宅でも練習をするようになりました。もっと早くこうしていれば、と思いましたがまあそれはそれとして。

試合当日。
会場最寄り駅に着いたあたりから急激にイライラしてきて。そわそわというか、もう当たり散らしたいような落ち着かなさ。着いたら着いたで試合相手も目の前でアップしたりしていて怖さ爆増。帰りたい。どう見ても打撃強い。本当に帰りたかった。自分の試合の5試合くらい前に1回目のピークがきてちょっと泣いた。帰りたかった。
とにかく帰りたかったのだけど、普段一緒に練習してくださってる方が何名か応援にきてくださって。それぞれお家が近いわけでも無いし、たかだか私の初戦、それも2分ワンマッチだというのに時間を割いてきてくださって。この恩を返す方法、私にはこの2分をやり切ることしかないなあと思いながら畳に向かいました。帰りたい気持ちは一旦忘れることにしました。

試合開始。
試合中って普段の100000000倍くらい頭が働きますね、何考えていたかすごくよく覚えている。前半1分くらいかなり攻め込まれていて。これこのままだと今日までやってきたこと何も出せずに終わらん?誰にも何も恩返せなくない?と強めの気持ちの切り替えが起きて。びびってても試合終わっちゃう、出来ないことは出来ない、でも今日はもうあと1分で終わってしまう、じゃあどうする、特攻しかないか〜と思って首をとりに行きました。殴られてたけどあまり気にしてなかった。練習で一番やったこと、試合中唯一うまくいったこと。ハーフガードにでもしてみるか、と思ったあたりで試合終了。3回有効打もらったら試合途中で終わってしまうのだけど、なんとか2回でとどまってくれたので2分やり切ることができた。良かった。目標にしていた、笑顔で握手して終わる、をやり遂げてからめちゃめちゃ泣いた。よく耐えたぜ。

青帯がワシ。負けました。背だけでかい。
主審が岩﨑さんで嬉しかった!


試合が終わってから本当にたくさんの人に声をかけてもらえたけど、糸がぷつりと切れたのかすぐボロボロと涙が出てしまうのでうまく話せなかった。よく頑張った、課題がたくさん見えたので頑張ろうと声をかけてもらえました。相手選手の方もセコンドの方も良く声をかけてくださって本当にありがたかった。でもやっぱり勝ちたかったなあ。相手がどれだけ経験者でも。


終わって1週間経った今もずっと試合の2分間のことを考えている。身体のあちこちが痛いというのも理由ではあるけれど。あんなに濃密な時間ってないなあ。

試合に出るという経験は多くの人がやってきることで、大したことではないのかもしれないけれど、私にとっては人生の一大イベントでした。窮地に立った時の自分がどういう精神状態になるか、人に助けられた時にどのように感謝しようと考えるか、返せているか、殴られても蹴られても相手にリスペクトを持って笑顔で終われるか、自分のことをよく見つめ直したり気づくことのできる体験でした。
試合を通してもっと自分について知りたいと思った。強くなりたいというよりは、精進することで自分の自分に対する理解度が深まることがわかった。リベンジしてやるぞというよりは、また試合の時の自分に会いたい気持ちでいます。楽しかったね、シンみけちゃんがいたわ。


とはいえ日常は帰ってきますし続いていきます。
また柔術もぼちぼち再開していくし、脚は治さないといけないし、仕事はなんだか忙しいし。
またコツコツと過ごしていきます。まだ生きますよ。

写真慣れニキ


方々で声かけてくださったみなさん、ありがとうございました!


おわり

私がニコニコで暮らせます。