サイコの鶏唐 (毎週ショートショートnote)
大きなミスをして叱られ、私の足取りは重かった。月のない夜だった。
ふと気づくと、目の前に小さな無人販売店があった。ガラス扉には店名と「揚げたて鶏唐」――私の大好物だ。気持ちが少し明るくなる。
扉に手を伸ばし、ギョッとして自分の右手の甲を見つめた。いつのまにか黒い文字が書かれている。
食うな
当然、自分で書いた覚えはない。
薄気味悪さを感じながらも、香ばしい匂いに抗えず、私は店に入った。
商品棚には容器に詰められた唐揚げが並んでいた。どれも輝くような狐色だ。