ぴえん充電(毎週ショートショートnote)
ちょっと話があるの、と妻が言った。
僕は溜め息を吐き、ダイニングチェアに腰かける。
「明日も早いんだ。短く頼むよ」
「気づいた?もうすぐ満杯になりそうなの」
そう言って自分の耳に触れている。
涙型をしたイヤリングが銀色に光っていた。
「若い子はね、これを『ぴえん充電』って呼んでるんだって」
本題ではない話から始める。彼女の悪い癖だ。
「それは変だね」
僕は少し苛ついて答える。
イヤリングは小型の発電装置だ。怒りや悲しみで発電する。
家族内で発生する負の感情を有効利用しよう、と