星峠の棚田

美味しいの創造 Vol.4

大地の芸術祭 越後妻有アート・トリエンナーレ

瀬戸内国際芸術祭と並んで日本で最も有名で規模も大きい芸術祭です。
当時Jean Georges Tokyoでシェフをしている2014年、お世話になっている先輩から

‘米ちゃん、新潟の芸術祭って知ってる? 俺そこのお手伝いしてるから、
アートと料理でコラボしようよ!すげー面白いよ。'

と言うお誘いから、二つ返事でお伺いしたのが一番初めの来訪でした。
前にも話しましたが、都会育ちの僕にとって新潟、しかも十日町の街並みと緑は本当に新鮮でした。
しかも、そこで自分の料理を振舞う事が出来るなんて。
そして、実際に足を運ぶようになりもう5年近く年月が過ぎていきました。

十日町の大きさは東京23区ほどの面積があり、車ですべてを回ろうとするには数日必要じゃないか?と思うほど広大な場所で本当に様々な現代アートが展示してあります。
その中の飲食施設で地元のお母さん達と料理を作るこの時間はまさに僕の中ではアートです。(初めの写真はその中でも大好きな星峠の棚田)

ちなみに何故、こんなに魅力的で足げなく通う事になったのか?
大きく分けて理由は3つあると思います。

1、 田舎の風景に触れる事により、心が浄化されて行くような実感がある。
2、 芸術祭に関わっている方々が本当に素敵で頼られれば是非答えたいと素直に思うから
3、 ここで料理をする時の地元のお母さん達との時間とそこで味わう料理が最高だから。

田舎の無い僕の経験ですが、東京と言う街は本当に最先端ですべてが美味しすぎる。と言っても過言ではないと思います。世界中に行った事があるわけではないけれども、世界的に見ても間違いなくトップクラスの美食都市だと思います。

では、それは何故か?

日本と言う国が育んだ、田舎と言う名の各地方が料理を通して作られてきた文化が東京と言う街の土台を作っていて、その土台が果てしなく文化的であり、美味しいんだと思います。料理人としても思いますが、その文化的背景やそもそも食べて来た食材や料理が本当に素晴らしいんだと思います。

地元のお母さんたちが恥ずかしそうに僕に作ってくれるお料理には間違いなく文化的背景を感じますし、レシピとかそんなモノではなく本当に滋味深い味わいに包まれてるんです。
多分、僕はこれを毎回体験したいんだと思う。
これが新潟に足げなく通う一番の理由だとおもいます。

四季を通して本当に様々な顔がある。春になると山に入り山菜を取り新鮮な物は天ぷらなどで食し、処理を施して冷凍をし一年中小出しにして料理に使われます。

夏になれば光り輝く夏野菜がいたるところで収穫され、秋になれば米どころ新潟の新米が出ます。
冬はこれでもか!と言うほどの雪に囲まれて、地元の方は雪かきで本当に大変なのですが都会育ちの僕からすると信じられないぐらいの銀世界が一面を包み込みます。

でもどの地方都市でも起こっている過疎化。十日町の辺りは限界集落になってしまう土地が後を絶ちません。
本当にさみしいけど、これが現状です。
十日町では殆どと言っていいくらい若者を見かけません。まさに高齢化です。

芸術祭のそもそもの始まりは地方にアートと言う文化を発展させて、都心部からアートを見に来てもらい、好きになって貰ってこの美しい風景がなくならないように移住者が出るような街にしたい。(違ってたらすいません。)

大きな思いはここになると思いますし、アートディレクターの北川フラムさんからも何度もお話を聞いたことがあります。

自然があり、美味しい食があり。アートがあり。こんなに素晴らしい街は中々ない。
でも移住者は増えない。日本の様々な地方都市が抱える高齢化は本当に深刻な問題なんだと毎回訪れる度に実感します。
少なからず僕が出来る事はその土地に足を運び、美味しいを沢山の方と共に創造し、
この土地の良さを一人でも多くの方に知って貰いたい。
芸術祭に訪れたことのない人に伝えたい。
本当に微々たることしか出来ない事は勿論理解してるつもりです。
今では責任のあるプロジェクトもご一緒させて頂いてます。今よりもっと沢山の人に知って貰えたら本当に嬉しく思う。と思いながら10月にも十日町の方と共に収穫祭のイベントの打ち合わせに伺うのを今からとても楽しみにしています。

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