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IMAJIN 1話「未知との遭遇」

◯朝笹町・とある高校・午後
   チャイムが鳴っている。

◯同・教室

たかし「え!人殺し!?」

ケンジ「ばか!お前、声がデケェって!」

たかし「すまん。でもその話本当かよ?」

ケンジ「まぁ、噂なんだけど黒川のやつ、中学の時にオヤジを滅多刺しにして殺したらしい。
 それでこの街の山にあるお寺に引き取られてこの高校に通ってるってわけ」

たかし「うわぁ…… あんなに静かな感じなのに怖いな。あいつに話しかけるのやめよ……」

   後ろから黒川シン(17)が荷物を取りに来る。

ケンジ「!?」

たかし「ん?どうした?」
   たかしは振り向いてシンを見つけてびっくりする。

ケンジ「いや、あの、黒川くん、その、俺たちは別に……なんていうか……」

シン「別に、荷物取りに来ただけだから」

   シンはそのまま教室を出て行く。

たかし「うわぁ…… やっば……」

◯帰宅途中モンタージュ

   シンは一人で高校を出て駅へと向かい電車に揺られながら帰宅している。
シンM「4年前に父は殺された。
 殺したのは俺なのかは記憶がない。
 血が苦手な俺は現場でそのまま気を失ったらしい。
 だけどその情報がネット上で消えることはなかった」
   周りには楽しそうに友達と会話する同じ歳の学生がいる。
   電車の中、シンの持っているスマホには4年前の父親殺人事件の息子Sに関する記事が表示されていた。

シンM「あと一年で卒業… そして就職か?
 働いて金稼いで同じことを繰り返して…
 なんでも出来る恵まれた奴はこの世で一握り。
 そうじゃない俺みたいな奴はこのまま生きていて何が楽しいんだろう…」

   シンはお寺に向かう長い階段を登っていき、一礼をしてからお寺の門を潜っていく。

   お寺の本堂からはお経が聞こえている。
シンM「お客さんか? 珍しいな…」
   寺に隣接する家にシンは入って行く。

◯シンの部屋
   シンはベッドの上でスマホを取り出して「プラネットブレイカー」というゲームを始める。
   ゲーム内では宇宙人を召喚して敵の宇宙人を攻撃している。

   ゲームの中でWINという文字が表示され、ワールドランキング6位に上がったという結果画面が表示される。

   それを見て笑顔を見せるシン。

シン「世界6位にまで来た…… 将来はゲーマーもありかもな……」

   玄関の方から大塚善照(44)の声が聞こえる。

善照「おーい! シン! 帰っとんのかー?手伝ってくれんか!」

シン「んー!今行く!」

   シンは玄関の外へと向かう。
   そこには善照と色付きメガネのヤクザの風貌をした小野白龍(50)が立っていた。

白龍「おお!君がシンくんか!
 3年前からこの寺に住んどるんやって?」

シン「はい…… 善照さん、この人は?」

善照「この人は小野白龍さんと言って、僕のお坊さんの先輩なんだ。
 目に見えない波動が見えるってよく話してくれてね…」

シン「へぇ……」

シンM「まぁ、そういうスピリチュアルは信じてないけど……」

善照「白龍さんは今からインドに行くらしいんだよ」

シン「インド? お坊さんて海外に行くんすね……」

白龍「普通は行かねぇよ!
先代が死んだもんで、やっと自由に羽を伸ばせるってわけよ!
山頂の寺なもんで、誰も来やしねぇしな!
まぁ、また帰ったら土産話でも聞かせてやるよ!」

シン「はぁ……」

   白龍は手を上げながら門の方へと歩いていく。

善照「じゃあ、今から空港まで送ってくるから留守番お願いね」

シン「はーい。まあ、誰も来ないと思うけど」

  善照も門の方へと歩いていくがふと振り返る。

善照「あ、そうだ!
その間お願いなんだけど、白龍さんのお父さんの遺品を預かることになってるから本堂にある段ボールを家に運んでおいてくれるかな?」

   本堂の中に3箱くらい段ボールが積まれているのが見える。

シン「はーい。了解」

   白龍はバチんと手を叩いて合掌する。
   その音にびくりと反応するシン。 
白龍「よろしく頼む!」

シン「は…… はい」

   門を出ていく二人を見送るシン。

◯桜照寺・本堂
   シンは荷物を本堂から運ぼうと段ボールを持ち上げる。

シンM「これで最後の荷物か…… 重っ!」

   ダンボールの底が抜けて本堂の床に荷物が散乱する。
シン「……やっちまった」
   シンは散乱した本や仏具などを片付けているとそこに木箱があり、その蓋が少し開いていた。
   木箱には虹龍と書かれている。

シン「なんだこれ?」
   シンが箱を開けるとそこには虹色に輝く数珠が光っている。
シン「数珠? でも…これってもしかして…ゴズライト?」

   スマホで何かを検索するシン。
シン「あった、これだ。
宇宙の宝石と呼ばれるゴズライト…
隕石からしか取れないからダイヤモンドよりも価値がある宝石…」

   スマホをスワイプしていると何かに気づくシン。
シン「ここ半年間で価格が200倍にもなってるじゃないか!?」

   木箱の中からゴズライトの数珠を取り出すシン。
シン「このサイズだと数億円くらいするんじゃないのか…
 なんでこんなものがここに?」

   数珠を触っていると次第に光が強まり目を開けるのも難しくなる。
   やがて光の中に甲冑を着た大きな男が次第に見えてくる。

シン「誰かいるのか! 何が起きてるんだ?」

魔神「俺を呼んだのはお前だな。
 俺はこの石に宿る者だ。」

   徐々に男の姿がくっきりと見えるようになる。

シン「石に宿る? 幽霊? それとも魔神?
 …いや、ドッキリの方が確率は高いか 」

魔神「とある事情で俺を呼んだ者の願いを一つ叶えてやることにしている。
 お前の願いはなんだ? 」

シン「いや、急に言われても理解できねぇ。
 …うーん… なんでも願いを叶えてくれるのか?」

魔神「…限界はあるが俺は結構叶えられる方だな。
 とりあえず願いを言ってみろ」

シン「俺は? ってことは他にも魔神がいるってことか」

魔神「…さぁ、願いを言ってみろ」

シン「あぁ、俺の質問には答えないのね。
俺の願いか…」

シンM「なんでも願いが叶うなら…
 俺は何がしたいんだろうな?」

×    ×    ×
回想。
◯狭いアパートの一室(夜)
   息を切らしている13歳のシン。
   目の前には滅多刺しにされ包丁が刺さったまま血を流し倒れているシンの父親。
   部屋の奥に脱ぎ捨てられた学ランがある。

◯児童相談所
   おじさんがうつむいているシンに対して話しかける。
おじさん「黒川くん、君を受け入れてくれる人が見つかったよ」

◯児童相談所・施設の前

善照「おお、君がシン君だね!

今日から君の保護者の善照だ!
よろしく!」

   にっこり笑顔を見せる善照とそれを無表情で見つめるシン。

◯学校・教室
   シンは一人、壁側の席に座るが机には「人殺し」などと落書きされている。
   遠くの方でクラスメートはヒソヒソと噂をしている。
女子A「お父さん殺したっていうネットの記事、あれ黒川さんだよね…… 」
男子A「人殺しと同じクラスとか嫌なんだけど」

男子B「ネットに晒されてんだし、もう友達もできねぇだろ。
あいつ人生詰んだな……」

女子B「なるべく関わりたくないよね……」

◯桜照寺・シンの部屋
   シンは部屋でゲームをしていると外から善照の声が聞こえる。
善照「おーい!シン!見てみろよ!」
   大きな芋を片手に持つ善照。
善照「おい、シン!見てみろ! でかい芋だ!
 後で茹でて食うぞ!」

   シンはそれを見て少し笑顔を見せる。

×    ×    ×

シン「そうだな…
なんでも願いを叶えてくれるんだったら…
友達…」

   シンはスマホをチラッと見つめる。

魔神「友達が欲しいのか?」

シン「あぁ、宇宙人の友達でも作りたいね」

魔神「宇宙人の友達がお前の願いだな?」

シン「そうだな…… なるべく俺とかけ離れた奴と友達になりたいね」

魔神「わかった。その願い叶えてやろう」

   魔神は柏手を打ち、そのままどこかへと消えていった。

シン「はは… まさかね…
地球外に生命がいるとして接触できるなんてあり得ねぇ…
人間はゴリラとも話せねぇのに…」

   シンは手に持った数珠を見つめ木箱に戻した後に再び散らかった道具を整理していく。

◯朝笹街上空

サンダルにTシャツの新沼ユータ(21)と高級そうなスーツを身につけ黒い鞄を持っている赤井光 (37)がそれぞれ畳に乗って街を見下ろしている。

ユータ「まだ見つからないんすか? レッドさん」

レッド「うーん… 急に移動したからなぁ…
そこそこ力も強いし、この街にあることは間違いないんだけど…」
   レッドは双眼鏡で街を見渡す。

ユータ「もし誰かに先越されてたらやばいじゃないっすか」

レッド「んなっ!? あー!もうちょっと!そこそこ!」

ユータ「背中の痒いとこみたいに言わんでくださいよ。
 じゃぁ、この辺ってことっすか?」

レッド「いや、待て! …向こうから近づいてくる…」

   冷や汗が出るレッド。

ユータ「向こうからって…ここは上空500mくらいっすよ」

レッド「多分… 上だ…」

   双眼鏡を外し上を見上げるレッド。

ユータ「上?」

   ユータが空を見上げるとそこには星のようなものが一つだけ光っている。

◯桜照寺の隣の家・1階の奥の部屋

   扉を閉めるシン。

シン「よし、おわり」

シンM「善照さん帰ってくるまでプラブレやろうかな」
   スマホを取り出してプラネットブレイカーをやろうとするシン。

   シンがふと通りかかった和室の外を覗くと空に一つだけ星のようなものが見える

シン「なんだあれ?」

   ずっと見ていると徐々に大きくなっていく星。

シン「え… あれ、近づいてきてねぇか?」

   徐々に音と光が増していき、玄関の棚の上の花瓶がガタガタと揺れ始めている。

   シンは急いで靴を履き、外へと出て上を見上げる。

シン「いやいや、嘘だろ! 隕石!?」

   シンは走って門の方へと逃げるが、後方では徐々に音と光が大きくなる。

◯上空
   畳に乗っていたレッドとユータの元に隕石が飛んでくる。
レッド「んなっ! こっちに来る!」
   ユータはレッドの方へ手を伸ばす。
ユータ「くそっ!間に合うか!?」
   隕石が直撃する寸前でレッドは畳から飛び出し、ユータの方へと捕まる。
   隕石はレッドがいた畳を粉砕して通り過ぎていく

◯桜照寺

   隕石はシンの部屋がある家の2階部分を破壊して本堂と門の間の境内に煙を上げて落ちる。

   破壊された家の破片が火の粉を帯びて辺りに広がる。
   中央には20mほどのクレーターができ、その中心には2mほどの黒い隕石の塊に火がついている。

   シンは息を切らしながら門のところに隠れて煙の方向を見ている。
   すると後ろから声をかけられる。

魔神「おい! 小僧!」

シン「うわぁ! なんだ!」

魔神「俺だ!俺!」

シン「脅かすなよ……」

魔神「お前の願い、叶えるべく宇宙人を連れてきたぞ!」

シン「宇宙人…? あの隕石がそうなのか?」

魔神「あぁ、そうだ」

シン「いや、もう少しで死んでたじゃねーか!」

魔神「まぁ、落ち着け。
こうするしかなかったんだよ。
少し時間がかかるかもしれんが、いずれお前と話せると思うからしっかり友達になれよ」

シン「はぁ? 友達って、本当に宇宙人連れてきたのかよ?
宇宙人っているのかよ? なぁ?」

魔神「俺の役目はここまでだから、あとはがんばれよ」

シン「いや、意味がわかんねーよ!」

   魔神は手をパンと叩き光の塵となってそこから消え去った。

シン「え? おい!ちょっと待てよ……
 家がめちゃめちゃじゃねーかよ!」

   目の前には隕石によって破壊された家とクレーターで大きな穴が空いた境内が広がっている。

   上から畳の縁に座ったユータとその後ろで電話を耳に当てながら立っているレッドが降りてくる。

ユータ「危なかったっすねー。
っていうかこれ、人とかメディア来ちゃいますよ」

レッド「あぁ、今連絡したから問題ない。
 俺たちが先に調査する」

ユータ「目撃者はどうするんすか?
多分、この街の人間は見てますよ」

レッド「大手が取り上げなければそのうち忘れられるだろ」

   会話を二人の後ろから聞いているシンが喋る

シン「今度はなんだ? 空から降りてきた?」

   後ろにいたシンに気がついたユータはこっそりレッドに話しかける。

ユータ「レッドさん、人がいました」

レッド「ん? 石について何か知ってるかもしれんな」

   レッドはシンの方を振り向いて笑顔で話しかける。

レッド「ここのお寺の方ですか。
いやぁ、災難でしたねぇ。
お怪我はありませんか?」

シン「あなたたちは誰ですか?
空から降りてきたように見えるんですけど」

レッド「いやぁ、これはうちの会社で作ってる乗り物ですよ。
ほら、ドローンみたいなもので」

シンM「どう見てもただの畳…
隕石といい、あり得ないことばかりが続いている。
こいつらも何か願いを叶えてもらったということか?」

シン「それで、ここには何をしに来たんですか?
大したものはない田舎町なんですけどね」

レッド「いやぁ、我々はお宝を買い取っていましてね。
このお寺に何かお宝のようなものが眠ってるんじゃないかと、私の勘が言っておりましてねぇ…」

シン「お宝だと? なんでまたウチに?」

レッド「こういう人口が減っている場所にこそまだ見ぬチャンスがある!
 それにこの災難…」

   レッドは隕石のあるクレーターの方を見たあとに損壊した家を見る。

レッド「修理にもお金がかかるでしょう…
 もしお宝があればすぐにでも買い取りますよ」

   レッドは畳から降りて手に持っていた鞄を開けるとそこにはぎっしりと札束が詰め込まれていた。

シン「怪しすぎるだろ。
 隕石が落ちたと同時にやってきて宝を買いますだと?
 俺はこの寺の責任者でもないんでとりあえず今日は帰ってくれ」

レッド「ちっ… 勘がいい小僧だ…」

ユータ「レッドさん、石の力は感じますか?
とりあえず回収だけしておきましょう」

レッド「あぁ、そうだな… 石の力は…」

   目を瞑り力を込めるレッド。

レッド「んなっ!? これは!」

ユータ「どうしたんすか? レッドさん」

レッド「この場所には石の力が3つある…」

ユータ「どういうことっすか?」

レッド「あの男と、隕石、そしてあの家にも1つある…!!」

ユータ「それってつまり…」

レッド「…あぁ、状況から察するに家の中にあるのは石だろう。
 すると隕石はあの男の願いってことだろうな」

ユータ「隕石を願う?」
   ユータはシンの方を向く。
ユータ「 おい、お前は一体なにを願ったんだ!?」

   隕石の炎が消える。

シン「願う? やっぱり石のこと知ってるよな?
 どういうことか説明してもらおうか?」

レッド「もたもたしてたら他の奴が来てしまう!
 おい!ちょっとお前、俺たちと一緒に来てくれ!」

ユータ「レッドさん、あいつを入れるんすか?」

レッド「得体の知れないものはとりあえず連れていく!
 金ならあるんだ、説明は後にしよう!」

シン「なに勝手なこと言ってんだ」

   隕石の表面に徐々に亀裂が入っていく。

ユータ「じゃあ、ちょっと力づくっすけど捕まえますか。
 レッドさん、ベルト借りますよ……」

   ユータがベルトに触れるとベルトは龍のように宙を舞いシンの周りを回った後に足に絡みつきシンを捕まえ空中で宙吊り状態にする。

シン「おいなんだよこれ!離せよ!」

ユータ「とりあえず、あとは隕石のサンプルでも持って離れましょう」

レッド「そうだな。
 おい、小僧! この金は隕石の代金だから置いとくぞ!」

   ユータは鞄に触れ鞄は賽銭箱の上で開き、札束が賽銭箱の上に積み重なる

ユータ「さっさと隕石入れていきましょう」

レッド「おう!」

   レッドは空の鞄を空中で受け取り、クレーターの中へと降りていく。

レッド「これか…… しかしなぜこんな隕石を願ったのやら…
 …ん?」

   隕石の表面が割れていきそこから水蒸気のようなものが徐々に増していく。

レッド「熱っ! おいおい、ちょっと待てよ…
 爆発したりしねぇよな?」

ユータ「レッドさん! 気をつけて!
 その隕石はこの男が呼んだもんすよ!
 抵抗してるのかもしれんす!」

レッド「おい!小僧!止めろー!」

   シンは驚いた表情で隕石を見ている。

シン「なんだ? 何か起きるのか?」

   レッドは急いでクレーターから這い出そうとするが水蒸気が爆発してクレーターから煙が吹き上がる。

   煙の中から泥だらけのレッドが現れユータの元へと向かう。

レッド「ぜぇ… ぜぇ… 一体、なにが起きたんだ?」

   煙の中から人影が見える。

ユータ「そこに誰かいるっすよ… 」

シン「あれが… 宇宙人…?」

   煙が晴れていくとそこには20歳前後くらいの人間の女性のような姿の生命体が裸で立っており、ゆっくりと周りを見渡している。

レッド「おい、なんだあの女は?」

ユータ「女なんすか? なんか、異様な雰囲気っすよ」

レッド「おい、小僧!一体、お前の願いはなんなんだ?」

シン「…友達だ 」

レッド「え? 今なんて?」

シン「俺の友達だ!…多分」

レッド「友達? なんだよそれ、全然動かねぇじゃん。友達!」

   宇宙人はシンの元へと近づいていく。

シン「あぁ… 俺はあんたを呼んだシンって言うんだけど… ってあれ?」

   宇宙人はシンの横を通り過ぎ、寺の門に手を触れたかと思うと柱の部分を蹴飛ばして門を破壊する。
   宇宙人はそのまま門の木の部分をバリバリと食べ始めた。

シン「おい! なにやってんだよ!」

レッド「なんなんだ、あいつ…!!
 めちゃくちゃだな!
 とにかくやばいんじゃねぇか…」

ユータ「やばいなんてもんじゃないっしょ…
 門を蹴りで破壊するって…」

レッド「あの小僧、友達とか言ってた気がするが制御できてねぇみたいだし、ここは止めた方がいいんじゃねぇか?
 あれが人目についたらまずいだろ…」

ユータ「止めるって…とりあえず気絶でもしてくれればいいんすけどね…」

   ユータは地面にあった手のひらサイズの石に手を触れて空中でコマのように高速回転をさせ始める
   手を宇宙人の方向へとかざすと宇宙人の後方を目掛けて飛んでいく。

   宇宙人の後頭部に石が当たるが石の方が割れる。
   頭をポリポリと触る宇宙人だが引き続き門を食べる。

レッド「んなっ!?」

ユータ「全然効かないっすね…」

   ユータは自分の腰くらいにまであるサイズの岩を触り空中に持ち上げて高速で回転をはじめる。
ユータ「ちょっとこれはやりすぎかもしれませんが…」

   ユータは石をものすごいスピードで宇宙人に向けて飛ばす。

   宇宙人は振り向き、岩を拳で迎え撃ち粉々に砕く。

   さらに宇宙人はユータを睨みつけ、ものすごいスピードでユータの方へと向かって走ってくる。

ユータ「ちょっとこれはまずい…」

   ユータは地面にあった畳を触って浮かせ、盾のようにして前に配置する。
   宇宙人は畳を蹴飛ばし畳の向こうのユータを高台にある寺の外へと吹き飛ばす。

ユータ「ぐはっ…」

   シンは宙吊りで拘束されていた状態から解放され地面に落ちる。

   ユータは吐血しながら右手を畳のほうへと伸ばす。

   畳はユータの方へと向かい、ユータが地面に叩きつけられる前に畳がユータをキャッチする。

ユータ「はっ… はっ… 危ない…
 今ので左腕が折れたか…
 これは無理だ…」

レッド「おい、ユータ… 嘘だろ… 」
   レッドはシンの方を振り返る。

レッド「おい、なんとかできないのか!
 このままじゃ、全員が危ないぞ!」

シン「そんなこと言ったって…」

レッド「さっき、友達って言ってただろ!
 友達に人を殺させるんじゃねぇよ!」

   シンはその言葉にハッとする。

×   ×   × 
回想

○桜照寺・門の前
   善照とシンはほうきを持って掃除をしている。

善照「友達ねぇ… そんなに欲しいの?」

シン「学校がつまらないんだよ。
 それってきっと友達がいないからだなって思ってさ。」

善照「学校ねぇ…」

シン「まぁ、善照さんも友達いないから聞く人を間違えたかもしれないけど」

善照「ははは! 確かに友と呼べる人間は少ないな!」

   落ち葉をチリトリの中に入れる善照。

善照「その人を友達と呼ぶかどうかはわからんけど…」

   夕焼けが二人を照らし始める。

善照「もし困ってそうな人がいたら、その人を全力で応援して助けてあげればいいさ。そうすればその人も君を助けてくれるようになるだろうね。」

   シンは光に照らされる善照を見ている。
   秋風が吹きチリトリの落ち葉が吹き飛ぶ。

善照「あぁ!せっかく集めたのに!
 シン! 俺いま、困ってるぞ!」
シン「ははは! 良いこと言ってんのにしまらないな!」

   夕陽に包まれて二人で落ち葉をかき集める。

×   ×   × 

シン「俺が止めないと! 」

   シンは宇宙人の方へと向かっていくが宇宙人と目を合わせようとはしない。

シン「お…おい! お前さ!」

   宇宙人はシンの方を見る。

シン「お前を呼んだのは俺だ! 一旦落ち着けよ!
 お前は宇宙から来たんだろ? 」

レッド「おお、反応してるようだぞ…」

シン「こんなところに呼んでしまってごめんな。
 俺が助けるから安心してくれよ!」

   シンは宇宙人に対して手を差し出す。

   宇宙人はレッドの方を見る。

レッド「お? おう、仲良くなっとけ!」

   宇宙人は再びシンの方を見る。

   にっこりと笑うシン。

   そのまま宇宙人は街がある方向へと走り去っていく。

シン「うわあ!なんで逃げる!」

レッド「いや、今の仲良くなる流れだったんじゃないの?」

   宇宙人の後ろ姿がどんどん遠くなっていく。

   シンは膝をついて倒れる。

シン「なんか、フラれたみたいでショックだ…」

レッド「おいおい、そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ!
 あいつ街の方へと向かっていったぞ!
 お前、ゴジラを解き放ったんじゃねぇのか?」

シン「だけど、あんなのどうやって止めるんだよ…
 力じゃ勝てねぇし、言葉も通じないし…」

レッド「お前が呼んだんだろ!
 俺も手伝うから、とにかく追いかけないと、誰か死ぬかもしれねぇぞ!!」

シン「ううう…」
   頭を抱え込んでしまうシン。

   シンのうしろから人が近づいてきてシンの後ろで止まる。

善照「おいおい、留守中に一体どうすればこうなるんだ…」

   えぐられた家の2階、境内にできたクレーター、潰れた門、大金の詰まった賽銭箱が善照の目に留まる。
   さらに寺の塀から畳に乗って瀕死状態で浮かんでくるユータも登場する。

ユータ「… レッドさん… 戻りました…」

レッド「おお、ユータ! 無事だったか!」

善照「いやいやいや、理解が追いつかない!
なんか、とりあえず無事なのは良かった! 知らない人!あとシンも!」
   シンは落ち込んだ様子の表情を善照に向ける。

◯ 寺のある高台が見える街並み

   夕暮れ時に寺からはほんのりと煙が上がっていた。
   遠くで飛行機が飛び立っている。

   つづく。


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