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Weather suga ミン・ユンギ


ミン・ユンギは空だ。

ずっとそこにあるのに普段はあまり気付かない。でもふと見上げるとその時の気持ちをすべて包んでくれる。うれしいことがあった時はどこまでも青く、憂鬱な時は灰色だったりする。見るたびに違っていて、夜になれば星が広がり、奇跡のような虹がかかる。夏の夕暮れが胸を締めつけたり、冬の雨に白い息が溶けていったりする。

初めてユンギを見た時、なんか難しそうな人だな、と思った。他のメンバーが大騒ぎしている時もひとり画面の奥で黙って座っているし、かと思えば誰も騒いでいないのに突然踊り出したり、クールなのかなと思ったら誰より売れることに貪欲だったり、よくわからなかった。

今もわからないのが正直なところだ。

でも少しだけわかったことがある。

ユンギはとても愛にあふれている。

インタビューで好きなタイプを聞かれて、まぁ普通にあれこれ答えた後に「それは女性とは限りません」と言うのも、「体が悪い人を弱い人とは言わないように、心が弱っている人を弱い人と言うのはおかしいんじゃないか」みたいなことを言うのも。

ポリティカルコレクトネスを心がけている発言だ、というのとはちょっと違うと思う。

ユンギの愛は空のように大きいから、自然と出てくるんじゃないだろうか。


ユンギが、テテとグクに長文のメールを「愛してる」の文末とともに送った、という話が出た時のことだ。同じマンネラインのジミンちゃんには何もなくて、なんでだろう、と思った。でも他の映像を見て、納得した。

ユンギは自己肯定感がどん底だったであろう頃のジミンちゃんに、ごく平坦な声で「お前の声が好きだ」と言っていたのだ。
1回だけではない。時と場所が変わっても、何回も。
ユンギはその時ぶっきらぼうだった。ジミンちゃんの目をしっかり見るわけでもなく、そっぽを向いている。慰めるような声ではないし、励ますような口調でもない。
だからジミンも、それを聞いて特に感動した様子もない。「ぼくほめられた」と言っただけで、グクみたいに歌がうまくなりたいと笑った。ジミンの声は唯一無二だよ、というユンギのメッセージが全然通じていなくて、ユンギはにこりともせずにどこかを見ていた。

本当につらい時には、他人の言葉は心まで届かないことが多い。
大切なことを言われても、気がつかなくて忘れてしまう。

ジミンがあの時のユンギの言葉を覚えているかどうかはわからない。

でも、ユンギは神のようなタイミングで「お前の声が好きだ」と言った。無意識の奥底で、それはジミンに染み込んだと思う。

いろんな映像をよく見てみると、ユンギの振りかける空のような優しさはジミンに対してだけではない。
メンバーにも、アーミーにも、アーミーじゃない人に対しても、等しく存在している。
そこが都会の真ん中であろうと戦場であろうと、上を見ると空があるように。


空に触れることはできない。
見るたび姿が違うから、覚えておくことも難しい。
でもいつもそこにある。
通奏低音のように、気づかないくらいの気配で。

ふと見上げた時、必ず寄り添ってくれる。


私はユンギのソロの尖った感じも大好きだ。ディスを吐き散らし嵐のように荒れ狂い、皮肉と暗喩と放送禁止用語にまみれて転がりまくる。空だと思っていた人が生々しく迫ってくる。


去年の11月からほぼ半年ユンギがいなくなったのは、彼が私に出した重たい訓練だ。いつか必ず、誰かが2年もいなくなってしまう。それに向き合って、慣れなければならない。
ほら、こんな感じなんだよ、意外に大丈夫だろ?
まあこれは予行演習だから、すぐ帰ってくるけどな。

もしかしたらメンバーに対しての訓練も兼ねているのかもしれない。寂しがるメンバーを画面越しに見て、にやにやしているのかも。

ユンギは空だから、姿が見えない時は上を向こう。

晴れていても曇っていても、明るくても暗くても、必ずそこにあるから。


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