詩集「名古きよえ詩集」 

自然が鮮やかにステップを踏んで、私に迫ってくる。
最初に受け取った名古さんの詩の印象だ。


 名古さんは一貫として生まれ育った故郷の「知井」に根をたおやかに伸ばし続け、そこから養分を吸い、社会、家庭、起きている事実を捉えて、緻密に的確に捉えて、詩にしている。都会育ちで、生きた時代を知らない私でも、追体験が出来き、自然の源流に触れることが出来る。

 「地下鉄の水音」(『消しゴムのような夕日』)
「降りて 降りて/神殿 地下鉄ホームに立つ」最初の一連に戦慄を覚えた。神殿よりももっと奥の神聖な場所へ土足で降りしまっている感覚。
四連目「コンクリートで張り巡らされても/水は地中の動脈 旅をつづける」水の轟きとうねりはいつでも私の腕を掴もうと伸びてきこれるんだという切迫感。

二連目の「慣れてしまったが怖くないが」であるが、自然の中に生きている、人も自然の一部であることを刻印させられた。
「砂漠の石油コンビナート」(『目的地』)

 Ⅱ三連目「石油はいくらでも出るのですか/無限です」無限という言葉に、自然の尊さ、言葉の尊さに圧倒された。
 名古さんの詩は、希薄になりつつある自然への感覚、自然の中で生きていることを喚起させられる。

「詩と思想」2014年12月号掲載

※こちらの作品は姫織アリヤの筆名で書いていたものです。

※初めて書いた詩評で、思い出深い詩集です。
名古さんよりお手紙と粗品を頂き、二重にも思い出になりました。


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