スターリットシーズンで浮かび上がったプロデューサーとプレイヤーの断絶について

 まさか初note作成がこんな話になるとは思わなかった。どうも、底辺ニコマスPのOrgaPです。

まえがき~なにがあったの?~


 本題に入る前に、事情を説明しよう。先日の2020/10/06の生放送にてスターリットシーズンの新情報が公開された。

 詳細はタイムシフトにおまかせするとして、ここで1点炎上?がおきた。きっかけはシャイニーカラーズ(以下シャニ)からの参加アイドル"杜野凛世"とのコミュシーンで、彼女が"プロデューサー様"と呼びかけた事だ。


 「それなにがあかんのん?」と思った人に簡単に説明すると、彼女はシャニの舞台である283(ツバサ)プロに所属するアイドルなのだが、アイドルデビューのきっかけはプロデューサーのスカウトに運命を感じたからだ。一目惚れした、と理解していい。その彼女が(283プロの)プロデューサーを呼ぶ呼び方が"プロデューサー様"なのだ。
 つまり凛世の担当Pにとって"プロデューサー様"とは"283プロの"というのが今まで暗黙の了解だったわけだ。ところが今回のスターリットシーズンは公式で"765プロの"プロデューサーがプレイヤーだと明言されている。
つまり
 「凛世が(765プロの)プロデューサーに
  (想い人たる283プロのプロデューサーと同じ)"プロデューサー様"
  という呼び方をしている」
とも解釈ができる。それはおかしいだろう!と色めき立ったP達が居たわけである。

 一方で(SPからの私を含む)比較的古参のP達は、どうどうと宥めたり諭したりしているなかで、1つ大きな感覚の断絶にぶちあたった。話をしている中でわかってきたのだが、彼らは「プレイヤー=プロデューサー」ではなく「283プロのプロデューサー」というキャラクターとしてみているようなのだ。
 つまり他タイトルで言うとFF14やDark Soulsのような"自分のアバター"としての主人公(プロデューサー)ではなく、FF13の"ライトニング" SEKIROの"隻狼"のような"操作キャラとして与えられた1人のキャラクター"としての主人公(プロデューサー)として見ている、ということだ。
 この差は感覚的に非常に大きなズレなのは言うまでもない。どうしてこの断絶が起きたのか、これに気づいた時に思い当たる節があったのでつらつらと書いてみようと思う。(まえおきがながい!)

 まず最初に断っておくと、これから書くのは個人的な観測と推測を言語化したもので、断定的な書き方をするが確定事実ではない。
 また、どちらがいい悪いを論じるつもりもない。この2つは行き来して楽しむことも可能だし、実際自分もシャニのときは時々でどっちの楽しみ方もしてる。
 以上2点は了承してもらいたい。

ターニングポイントは"アニマス~シンデレラガールズサービス開始頃"
キーワードは「ニコニコ(=ニコマス)の衰退」と「公式Pの登場」

アニマス以前のアイドルマスター

まずアニマス以前の公式供給を見てみよう。

2007/01/25 XBOX版アイドルマスター発売
2008/02/28 アイドルマスターLive for you発売
2009/02/29 アイドルマスターSP発売
2009/09/17 アイドルマスターDS発売
2010/12/21 アイドルマスターモバイルサービス開始
2011/02/24 箱版アイドルマスター2発売
2011/10/27 PS3版アイドルマスター2発売

 供給少なっ!早くて半年に1回、DLCですら月1で曲1本。それも半年程度で供給が終わる。そうすると残り半年は何も供給がない。各ブランドを行き来し、イベントを疾走し、ガチャに狂喜乱舞し、終わらない持久走をしている現状からすると嘘のようなスローペース。
 そう、まず大きな違いは供給量の差。それが何を生み出したか…古参Pはよく知ってると思う。そう、ニコマスだ。

ニコマスの存在と多様性

 当時ニコニコは全盛期。公式の供給に飢え、妄想を膨らましたP達がこぞって動画を作っていった。そんな動画は、大きく分けて3つに分けられる。
 「MAD」「NovelsM@ster」「その他」だ。
 「MAD」はその名の通り、アイドルたちのステージを元に多種多様な曲や衣装・エフェクトを合わせて新たなステージを作り上げた動画だ。担当に理想のステージを用意するために数多のPが惜しみない技術を注ぎ込んでいった。
 「NovelsMa@ster」は彼女たちを主役に据えた物語だ。im@s架空戦記や卓ゲm@sterもこの範疇に入る。765プロを舞台に、時にはそこも飛び越えて多種多様な物語が多くのPによって紡がれていった。
 「その他」とくくっているのは、旅m@sやお料理動画といった上記2種以外のものを指すので、ここでの説明は省略する。

 さて、このなかで思い出してほしいのは「NovelsM@ster」だ。彼女たちアイドルが物語を紡ぐとなると、自然と周りの人も登場人物として登場する。高木社長、小鳥さん、黒井社長…そしてプロデューサー。
 思い出してみよう、どんなプロデューサーが登場していたか。
 解釈違いなんて可愛いもの…人格者から狂気じみた変態まで、犬やら猫やら武将やらドワーフやら、ありとあらゆるタイプのプロデューサーが登場していた。ちんこうPとか解釈違い以前に生理的に受け付けない人もいるんじゃなかろうか。

 なんでそんな事になっていたかというと、プロデューサー像がほぼ一切示されていなかったからだ。久々にSPを動かしてみると、台詞の少なさに驚く。デレステのセリフ量でシャニマスをしている気分になる。コミュによっては選択肢以外にセリフがなくて、アイドルの独り相撲状態にすらみえる。
 そんな状態なので、プロデューサーに「個」がなかったのだ。

アニマス登場による転機

 それがアニマスの放送開始で転機が訪れる。赤羽根Pの登場だ。
 彼は明確なキャラクターを持って登場したプロデューサーだ。当時公式からは「彼はアニメ世界でのプロデューサーで、あなた達の同僚です。アニメは彼のプロダクションでのお話であり、皆さんのプロダクションとは別世界です」といった旨のアナウンスがあったように記憶している。
 だがそれは既存プレイヤーに対するアナウンスで、アニマスから入ったPに届いただろうか?届いたとして意図は伝わっただろうか?
 それはおそらくNOだ。
 そしてこう思った人も多かっただろう。「プロデューサーって赤羽根さんの演じるこのキャラクターのことなんだ」と。
 もちろんアニマスからゲームやニコマスに入ったり、周りのPの様子を見て結果的に理解した人も居ただろう。けどそうじゃない人も多かったのではないだろうか。

 そしてCGのサービス開始あたりから徐々にニコニコは衰退を始め、それに合わせてニコマスも低迷を始める。
 一方でシンデレラガールズ(以下CG)やミリオンライブ!(以下ミリ)は大きな人気を博し、一方でOne For All(以下OFA)~ステラステージ(以下SS)の765ASコンシュマーは堅実に売れながらも下火になっていく。
 つまり、AC~DSまでの"プロデュースゲーム"の文化が、ここで一度断絶してしまったのだ。

CG/ミリの隆盛とプロデューサーの存在感

 さて今に続くCGとミリは大きく分けて2つのゲーム形式に分かれる。
 "モバマス" "グリマス"のカードゲーと、"デレステ" "ミリシタ"の音ゲーだ。そしてそのいずれにおいてもコミュに置いてプロデューサーの存在感は極めて薄い。これはアニマス以前と同様だ。
 だが以前と比べて大きな違いがある。アイドル同士の交流が大きく増えたのだ。結果、アイドル同士で物語が完結することがとても多くなった。
 そうなると、プロデューサーは物語の端役になり、そもそも意識することが少ない。プレイヤーの投影対象自体が消えてしまったのだ。

 そうした中で、イベントでは赤羽根Pがプロデューサー役として登場し、デレアニでは武内Pが、ぷちますでは間島Pが、キャラクターとしてのプロデューサーが次々と登場する。
 そうしたなかでアイマスに初めて触れた人は、"キャラクター"としてのプロデューサー像を固めていくのは自然なことだろう。

シャニマスの登場~プロデュースゲームの再登場~

 そうした中で登場したシャニマスは、かつての古参Pを大喜びさせるほどのクオリティでプロデュースゲームとして登場した。プロデューサーとしてアイドルに接してプロデュース活動ができるのは、存外の喜びだったと思う。
 だがかつてと大きく違う点があった。プロデューサーが、よく喋るのだ。
 以前もプロデューサーが選択肢によってプレイヤーの意図しない行動をとったりすることはあった。けどシャニのPはそれ以上に"明確な意志をもった"描写が多い。個人的にはノクチルのメンバーとのコミュが、それが全面に出ているきがする。
 "明確な意思を持つ"ということは"プレイヤーの投影体"とは捉えにくいということでもある。ここでも、新規のプレイヤーが"事故の投影体としてのプロデューサー"と捉えるきっかけが減ってしまった。
 その結果、"283プロのプロデューサー"というキャラクターが彼らの中に生まれてしまったのではないだろうか。

スターリットシーズンを迎えて

 言うまでもなく、公式は「プレイヤーはプロデューサー」の立ち位置を崩していない。赤羽根氏や武内氏もプレイヤーを呼ぶときは「同僚の皆さん」と呼ぶし、中村さんをはじめ声優陣も我々を「プロデューサーさん」と呼ぶ。15周年でも「これからもプロデュース、お願いします」と言っていた。
 常にプレイヤーはプロデューサーなのだ。だけど、それがどれだけ正しく伝わっていただろうか?そんなささやかなすれ違いの積み重ねが、今回凛世の1件で表面化してしまったように、私には思える。

 だが同時に昔からのPは皆こうも言ってきた。
 「公式は最大手」
 SPでの美希の移籍や、918事件、アニマス、デレアニと数々の公式作品との間で古参P達も解釈違いで大騒ぎしてきた。
 けれど一方で、公式は常に二次創作に対して暖かな姿勢で向き合ってくれた。「我々が軸を示さなきゃ」とは言っても「我々が正解だ」とは一度も言わなかった。明言はしなかったが「あなた達のプロダクションも、アイマスなんだ」という意志を示してきた。
 だから古参Pの多くは、"自分の"プロデュースの軸を持っている。公式が自分と違うすがたを見せても、「うちのプロダクションはこうやしね」と言える。プロダクションの姿は1つでないのだから。
(だってOFAの765プロにはぷちもオウガテイルもいないでしょ?)

まとめとあとがき

 長々と書いてきたけど、まとめると

以前のようにニコマスが活発じゃない
→公式が正解、二次創作は正解じゃないみたいな理解をされちゃった?
公式Pがいっぱい出てきた
→"プロデューサー"は"キャラクター"だと認識されちゃった?

という話の組み合わせじゃないかなとおもってる。
 もちろん同人誌やニコマスは続いてるけど、他と違って二次創作もアイマスワールドなんだよ、っていう認識がなかったのかな?
 そう考えると、アイマスってシェアワールドだよね。
 なにはともあれ、解釈違いなら無理してタッチしなくてもいいし、あなたの思うアイマスも正しいアイマスワールドだ。

「解釈違いなら、解釈違いのままいていいんだよ」
「公式は最大手じゃないけど正解じゃないんだよ」

ということを改めて若手?Pの人たちにも伝わってくれたらいいなぁ…と思いつつ、スターリットシーズンが素敵なゲームになることを祈っています。
 しかし「スターリットシーズンはシリーズ合同防災訓練」とは言い得て妙だな…

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