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匂い、夢、粘土

匂いには記憶を呼び起こす力があるらしい。2021年夏に匂いの思い出はあまりない。マスクをしていたし、ときどき香りを感じる瞬間はあったけれど、覚えていないからきっと思い出せない。SHIROのサボンをつけたりして、でもすぐに香りは消えてしまった。

おもちゃのマジックメモの粘土板のように、思い出せないことも心の奥の方に書き込まれているのだと言われることがある。実際そうやって覚えているものなのかもしれない。そう思えてきた。または、そうであってほしいと思う。刻みつけられているのであってほしい。経験したものによってせめて心の形が変えられているのでなかったらあまりに寂しい。

でもまったく何も痕跡を残さないもの、ことの美しさに思いを馳せもする。そういうものごとを想像することは難しい。ただ創作の世界の中ではそういうものを垣間見ることができる。想像できないものを想像することを想像する。忘れること、思い出すこと、あと懐かしいということばかり考えていて、思い出すことはいつも難しい。

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