『マジシャン百面相』

所要時間:約10分(多分)
演者人数:1名(男1:女0)
台本使用規定:非商用利用時は連絡不要(連絡してくれたら飛んで見に行きます)

登場人物:
○マジシャン百面相(まじしゃん ひゃくめんそう)
表情がコロコロ変わる不思議なマジシャン。マジックの腕はピカイチ。

備考:
猫目さんHBD記念書き下ろしです。
猫目さん誕生日おめでとう。

言葉遊びを楽しんでください。

以下本編↓
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ようこそ！マジシャン百面相の『豪華絢爛マジカルドリームショー』へ！

おっとそこの坊や、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているのですか？私までメソメソ泣いてしまいます〜…………と、見せかけて。ジャジャーン！何処からともなく私の右ポケットに咲いた一輪の花。これをキミにあげましょう！

おおっとそこのご婦人、何やらお疲れのようですが？エエ、エエ、日頃の家事に随分草臥れてしまったと。えエ、ゑA、分かりますとも。解りますとも。ご婦人を見ているとなんだか私まで肩が重たく…嗚呼、だるいだるい。そんなご婦人には花ではなく華を。私の右手をどうぞそっとお取りください。続いてホォラ、手を開いてみて…アァラなんと！アブラカタブラ！綺麗な宝石が………って、アチャア、バレてしまいましたか。正しく、純正に、どこからどう見ても目を丸くしても四角くしても、右から見ても左から見ても逆さに見ても投げてみても！変哲のない、ただのオモチャの宝石です。おっと、まあまあそんなに怒らずに。ね？…綺麗なお姉さん。とどのつまり華とは宝石ではなく私の笑顔……と、地球上の可憐なご婦人がまた1人担架で運ばれていきましたが…ああ、お労しい…私があまりにも美しいばっかりに…しくしく…えんえん…くすんくすん…………。

まあ良いでしょう。

さてさてお立ち会い！喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、怨み、慈しみ、愛しみ、憎しみ、恐れ、哀れ、憐れ、あはれ………………千変万化に移りゆく万華鏡のような”私”についての至極単純明朗快活クイズのお時間です！どうぞ5秒以内にお答えください！それでは、第1問目の最終問題！

”本当の私はどれでしょうか？”

ブッブー！ブッブーたらホラ！ブッブー！時間切れ！残念無念、また来世〜♪答えられませんでしたねぇ、いや、答えられる訳がないのです！

……人間とは、一枚の仮面では到底表わし切れない。何十もの化けの皮を被った、化け狐よりもおぞましい存在なのです。この仮面の厚みこそ、人間の価値の象徴なのです。その厚みで己の心を守っているのです。仮面は心の盾なのです。…全てを曝け出す事を、人間は本能で拒否する。だから我々は服を纏い、嘘を覚える。「お前ってそういうヤツだよな」「アナタの事なら何でも知ってるの」…果たしてそれは本当に正しいのでしょうか？相手を知った気になって驕り高ぶるその姿は真の人間と言えるのでしょうか？……おや？おや、おやおやおやおや！？皆様のなんとまあ仮面の薄いこと薄いこと！怒りの下には何も無い！虚無の繁栄真っ盛り！

……いけません、いけませんねえ。剥き出しの感情というのは時に惨劇を生みかねない。例えば……嗚呼、まさに今！真正を受け入れ切れない猿たちが目の前で起こす暴動！無秩序！カオス！

……そんな人間以下の皆様に、私の全てなど尚更知られてなりますか。

おや先ほどの坊や、もとい赤ちゃん猿ではないですか！フムフム…ウキ、ウキキ…

…え？「質問が悪い」？「”どれ”という質問に”どれでもない”という答えは相応しくない」？

…………………………バツが悪くなって参りましたのでこれにて退散させていただきましょう！
それでは今度こそ、また来世♪

…あ〜ヒヤッとした、ヒヤッとした。