「推し」のことを間違ってツイートして良かった
突然だが、私はTwitterのアカウントを2つ持っている。一つはこのnoteに紐づけしている「たいやき」というアカウント。このインタビュー調査のために開設した。アカウント名こそ「たいやき」だが、リサーチマップなども紐づけしているため調べようと思えば本名もすぐ分かる。今では多少雑多なことを呟いてしまってるが、このアカウントを偶然にも見てくださった患者さんにとって有益な情報をリツイートなどで発信しようと思って始めた。
そして、もう一つのアカウントが、いわゆる「趣味アカ」である。完全匿名、推しへの愛をただただ垂れ流すためのアカウント。SNS上で推し仲間とキャッキャ言いながら話をするのがとても楽しい。現実世界で関係性を構築しなくてよいことが気楽でよい。私は音楽が好きなので、基本的には何組かの好きなアーティストのことなどを呟いている。
これは良くあることなのかもしれないが、2つ以上のアカウントを扱っている場合、「アカ間違い」をしてしまうことがある。先日わたしもそれをしてしまった。私の推しの一人であるとあるアーティストのことを、趣味アカではなく本名の方で呟いてしまった。
ファンは推しの名前でエゴサする生き物なので、もちろんすぐにそのアーティストのファンに見つかった。瞬く間に「いいね」と「リツイート」の嵐。もう止められない。このままでは趣味アカで繋がっている人にこちらのアカウントが見つかってしまう。私は「本名アカ」で「趣味アカ」の人と繋がりたくないのだ。現実世界とは混ぜたくないタイプの人間なのだ。
沢山いいねがついて嬉しいが、残念だけど見つかる前にツイート削除しよう…と思っていた時だった。ポンッ!と1通のDMが私のもとに届いた。
『突然失礼します。〇〇君(推しのアーティスト)の呟きのおかげで、浅井様のnoteに巡り会えました。ありがとうございます。昨年〇〇という病気を発症して「生かさず殺さず」な病態、先月退職し社会的な死に向かう不安と向き合っているところです。研究がんばってください。ご自身どうぞお体ご自愛ください。』
そう。Twitterはこういうことが起きるのだ。
私はこの方のメッセージが本当に嬉しかった。そして、その後何通かDMでメッセージのやり取りをした。その方の病の孤独は計りしれないものだった。その方は、〇〇という疾患に罹患したことがきっかけで40年間以上携わっていたお仕事が出来なくなり、生計の糧と生きがい双方を失ったとおっしゃっていた。そして、私と坂元希美さんとの対談記事なども読んで下さり、今の思いなどを語ってくださった。最後に『浅井様の現在の研究が結実されますよう影ながら応援しております。』と言ってくださった。とても有り難いことだと思った。
その方には正式なインタビューの依頼はしていないのだが、せっかく繋がったご縁でもあり、少しでも何かのお力になりたいと思い、病いの語りを残す活動をされているディペックスジャパン(https://www.dipex-j.org/)のサイトを紹介した。
何日か後に、再度その方からメッセージをもらった。
『ディペックスジャパン存じませんでした。支えになりそうと感じました。ご紹介ありがとうございます。 同病や難病のブロ友と励まし合って助けられていますが、私以上に辛い環境、逆に恵まれた境遇のどなたかを傷つけることを危惧してしまい、辛い本音の心情吐露が憚られております。本当にご丁寧にありがとうございました。心より感謝申し上げます。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。』
というメッセージだった。優しい方だなぁ、誰かを傷付けてしまうかもと思って、本音が言えないという事もあるのだなぁ。そうか、確かにそういう事もあるかもしれない。
ひとつの誤ツイートからこんな繋がりが生まれるなんて。「推し」のことを間違ってツイートして良かったなあと心から思った。
この経験がきっかけで、今ではこちらのアカウントの方でも「推し」のことをときどき呟くようになった。特に、私自身が入院していた時に心の支えになっていた星野源さんのことは、意図的に呟くようにしている。私が経験したあの時の「病の絶望」を支えてくれたものの一つが、紛れもなく星野源さんが執筆された『よみがえる変態』という本なのだ。ぜひ読んでいただきたい。
(※星野源さんのことについては、『病と共に生きるために気づいたこと』という記事でも少し書いているのでよければそちらを読んでください。リンクを貼っておきます。)
しかし、難しいことに、今では国民的アーティストとなった星野源さんには、莫大なファンの数に比例していわゆる「アンチファン」という人たちも沢山いる。有名人である以上それは避けられない事かもしれない。特に、源さんがドラマで共演された国民的女優の方とご結婚を発表された時のアンチはえげつなかった。(これは完全に偏見が混ざっていることは自覚しているが、私がSNS上で見る限り、源さんのファンでお相手のことを攻撃している人はほぼいなかった。しかしおそらくお相手の特に男性だと思われる方から源さんに向けられる心無い言葉の数々は本当に酷くファンは心を痛めていた)。誰を推そうが推すまいが個人の自由なので否定はしない。しかし、私がこの「本名アカ」の方であまりにも「星野源のことが好きだ」と言い過ぎてしまうと、星野源のことをあまり良く思っていない方へインタビューさせていただける機会を逃すのではないかという不安もある。その為、星野源さんに限らず推しについて呟くことはこちらではほどほどにしていきたいとは思っている。しかし、時々愛が溢れだしてしまうこともあると思うので、その時はご容赦いただきたい。
今、このnoteの記事を読んでくださっているアナタは、何のきっかけでこの記事を見つけてくださったのだろうか?読んでくれて、本当にありがとう。
2022.9.29