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汁まで飲む

食は生きる原点で、
大袈裟だけど、人間で良かったと思う日だった。

何かを食べた時の感動で、食べ物によるけど、
最高の部位の焼き肉、
艶々活き活きした魚の刺身、
真っ白で潤いピンと立った炊き立ての白米、
バターと小麦粉が香るホットケーキ、
細くささがきにパリッと仕上げたきんぴら、
こんな風に色んな記憶があって、
どれも素材が手を加えられて変身したもので、
その瞬間を記憶して味と思い出が心に刻まれる。

今日、会社の人と行ったお蕎麦屋の、
すだちかけそばが心に刻まれた。
見た目が涼しげな美しい品で、綺麗な輪切りのすだちが敷き詰められた冷たいかけそば。
汁は、よくあるかけそばの、いわゆるかえしのベースではなくて、透き通ったダシと、すだちの果汁と香りがするもので、飲むと、とても上品で、清々しくて、でも味はしっかり芯があって、深みもあって、蕎麦の香りと調和して、蕎麦を引き締める冷たさが丁度いい。蕎麦は歯を入れるとむちっと、きゅっと引き締まったコシがある。
汁は全部飲んだ。飲むべきだと思った。
木陰の岩場に腰かけ清流に足をつけ、小鳥の声に耳を澄ます様な気分だった。
貪欲に肉食べた、米食べたなどとは違う、
精神的な食欲が満たされた。
今日食べて、出会ったばかりなのに、
またここに帰ってきて、食べたいと思う蕎麦だった。

ここに帰ってきたいと思い、度々聴く曲

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